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【特別シナリオ】あの人と過ごす日

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【特別シナリオ】あの人と過ごす日
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結婚式のお約束?

「キ、キロスさん……!
わ、私と結婚してくださいっ!」
アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は、
先日、恋人同士になったばかりのキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)
プロポーズしていた。

会うたびに決闘を申し込んだりと、紆余曲折あった末に、
ようやく恋人同士になれた2人だったが、
アルテミスは「お付き合い=結婚」という純情すぎる考えで、
またも突拍子もない行動に出ていたのだった。

「お、おう!
いきなりでびっくりしたが……オレが必ず幸せにしてやる!」
しかし、キロスもプロポーズを受け入れてくれた。

「ありがとうございます!
では、さっそく、オリュンポス・パレスで結婚式をしましょう!」
「は、早いな、おい!?」

アルテミスの準備のよさに驚いているキロスだったが、
かくして、オリュンポス・パレスでの結婚式が始まった。

しかし、
ウェディングドレスを着たアルテミスと、
タキシードを着たキロスの前に、
ドクター・ハデス(どくたー・はです)
高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)が立ちはだかる。

「フハハハ!
我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス!
その結婚式、待ってもらおうか!」
「ハデス様、咲耶お姉ちゃん!?」
アルテミスが驚く。

「キロスよ!
アルテミスの上司であり、
保護者でもあるこの俺の目が黒いうちは、
うちの娘をどこの馬の骨ともしれん貴様にやるわけにはいかん!」
「なんだと!
オレが馬の骨だと!?
おまえに言われたくねえな!」
「何を言う!
俺は悪の秘密結社オリュンポスの幹部という、安定した役職の持ち主!
貴様は帝国を追放された龍騎士だろう!
もっと安定した職に就いてから言うんだな!」
「悪の秘密結社のどこが安定した仕事なんだよ!」
「そうです、ハデス様、キロスさんのこと悪く言わないでください!」
キロスとアルテミスが反論するが。

「アルテミス、お前はやはり精神的に未熟なようだ!
17歳で、一応、法的には結婚可能な年齢とはいえ、
貴様のような浮ついた男に、
アルテミスを任せるわけにはいかん!」

「そうですよ、アルテミスちゃん!
キロスさんみたいな、ナンパな人と結婚したら、
きっと浮気されたりして苦労しますよ!
ねえ、香菜さんもそう思いませんかっ!?」

同意を求められる夏來 香菜(なつき・かな)だったが。

「……確かに、付き合い始めて
即、結婚、というのは早い気がするわね……」
香菜は常識人らしい発言をする。

「何言ってんだよ!
香菜までオレたちの邪魔する気か!?
好きになったら結婚くらいするのは当たり前だろ!」

「いいですか、アルテミスちゃん!
結婚するなら、きちんと誠実で計画的な素敵な人にするべきです!
例えば兄さんみたいな!」
ブラコンの咲耶は、どさくさに紛れ、兄・ハデスへの愛を語る。

「さっき、兄さんも言っていましたが、
兄さんはオリュンポスの幹部で、安定して堅実な仕事をしています!
それに比べて、キロスさんは無職じゃないですか!
これじゃ、アルテミスちゃんのヒモになってしまいますよ!」
「キロスさんが、ヒ、ヒモ!?」
「……なんか、微妙にフォローできないわね」
「香菜!? おまえ、どっちの味方だよ!?」

ショックを受けるアルテミスに、咲耶は続ける。
「兄さんはすごく頭もいいですし、
リーダーシップもあって、
とても素晴らしい人です!」

一方、ハデスの方は。
「アルテミスは我らオリュンポスにとって、貴重な戦力!
それが、結婚を機に引退でもされたら困るではないか!」
本音を語るハデスだが、
アルテミスは、意を決して言う。

「ハデス様、咲耶お姉ちゃん、今までお世話になったのに申し訳ありません。
キロスさんと結婚する以上、私は悪の組織には所属できません。
本日をもって、オリュンポスを辞めさせていただきます」

「寿退社だと!?
今時、そんなものは流行らんぞ!
だいたい、オリュンポスを辞めて、その無職の男とどうするつもりだ!」
「無職って言うんじゃねえ!」
「私は、これからは正義の騎士として、
キロスさんと共に戦っていきます!」
アルテミスはハデスに宣言する。

「な、なんだと……!?
ますます、この結婚式は止めなければな!」
ハデスがぱちんと指を鳴らすと、後ろから特戦隊が現れる。

「こちらは、今まで、キロスに煮え湯を飲まされてきたリア充の面々!
そして、今までキロスと共にリア充狩りをしてきた非リア充の諸君よ!
諸君を裏切り、一人だけリア充になろうとするキロスが許せるか!?」

獣のような目をした面々が、キロスを睨みつける。

「キロス、あなた、今まで何して来たの……」
「か、過去のことは知らねえよ!」
香菜に突っ込まれるキロスだったが、目を逸らしごまかす。

「さあ、諸君、狩りの時間だ!
キロスにアルテミスを渡すでないぞっ!」
「というわけで、香菜さん!
一緒に、この結婚式を妨害しましょうっ!」
特戦隊をけしかけるハデスと、
魔法少女コスチュームでオリュンポスの悪の幹部の格好になった咲耶は、
香菜を巻き込もうとする。

「ここは力づくでも結婚式を挙げて見せます!」
「てめえら、オレにケンカ売ったこと後悔しやがれ!」
アルテミスとキロスが戦いを受けて立つ。

かくして大乱闘が始まった。

「そこの花嫁と花婿! 入刀するのはウェディングケーキにしなさい!
っていうか、皆、武器を振り回すのやめなさーい!」

香菜は常識人なので止めようとするが……。

咲耶の魔法が、オリュンポス・パレスの動力炉に命中し、
オリュンポス・パレスは墜落を始める。

「きゃああああああああああああ!?」
「く、逃げるぞ、アルテミス!」

キロスはアルテミスをお姫様抱っこして、
墜落するオリュンポス・パレスから飛び降りる。

アルテミスは役所に出すために用意していた婚姻届を差し出す。

「香菜さん、結婚の証人としてサインをしてください!
なんだか私たち、声も似ている気がしますし、親近感があるんです!」
「……しかたないわね。あなたたちの熱意に負けたわ。……あ」
婚姻届は戦闘でボロボロになっており、ちぎれて、風に飛ばされてしまったのだった。

「わ、私たちの結婚が……」
「しっかりしろ、アルテミス! また、チャンスはあるぜ!」

ショックで倒れるアルテミスを支えるキロスだが、
落下してきたオリュンポス・パレスに一同は潰され、
爆発してしまうのであった。

「きゃあああああああああああ!?」
「うわあああああああああああ!?」
「なんで私までー!?」
とんだ災難の香菜であった。