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ストーリー

『蒼空のフロンティア』オープニング ~絆のはじまり~ 1

原案:沖又 陸  ストーリー:砂原 かける Illustrator : FBC

『蒼空のフロンティア』オープニング ~絆のはじまり~ 1

「あたしを呼ぶのは誰?」
高根沢 理子(たかねざわ・りこ)は空を仰ぎ見た。健康的な引き締まった体に、かすかに漂う気品。
頭上の梢からは、輝く陽光が振り落ちる。耳を澄ませば、遠くの摩天楼の喧騒がこの森の中まで届いてくる。
「まわりには誰もいない……。でも、絶対に誰かが呼んでる」
かすかな声がリコの頭に響く。自分と同じくらいの少女の声だ。
「……お願い……力を貸して。必要なの……あなたの力が」
リコの顔に驚きが浮かび、次いで満面の笑みに変わる。
「そうか、あなたが! ずっと待ってたのよ、あなたのこと!」
「え……?」
当惑した様子の見えない少女に、何も存在しないように見える空間に向けて、リコは笑顔で手を差し出す。
「あたしは高根沢 理子、15歳! リコって呼んで。あなたの名前は?」
リコの手を取るように、空間から白い手が、腕が見えてくる。
「私はジークリンデ。ジークリンデ・ウェルザング。17歳。シャンバラ王国の偉大なる女王アムリアナ・シュヴァーラ陛下につかえるヴァルキリーよ」
言葉が終わる頃には、ジークリンデの整えられた黒髪の後ろに、輝くオーラの翼が見えてくる。彼女は遠慮がちにリコに聞いた。
「本当にいいの? 滅ぼされてしまったシャンバラをふたたび建国するため、私と『契約』をして、空に浮かぶパラミタ大陸に一緒に行ってほしいのだけれど……。きっと危ない事もいっぱいあるわ」
しかしリコは、明るく笑い飛ばした。
「冒険だったら望むところよ! あたし、ずうっと空に現れたパラミタに、蒼空のフロンティアに行きたいと思ってたの! よろしくねっ、ジークリンデ」
屈託無いリコの笑顔に、ジークリンデもようやく安心して笑みを返した。
二人、手に手を取ると、自然に契約の言葉が頭に浮かんでくる。
「私、ジークリンデ・ウェルザングは高根沢 理子と契約をし、生涯をパートナーとして、いついかなる時も仲むつまじく助けあい、協力しあうことを誓います」
「あたし、高根沢 理子はジークリンデ・ウェルザングと契約して、いつまでもパートナーとして、ずーっと仲良く協力していくことを、ここに誓いますっ!」
かくして、ここに新たな契約が結ばれた。

それより10年前、2009年6月。日本領海の太平洋上に浮遊大陸パラミタが突然、姿を現した。豊富な資源のあるこの地は、新たなるフロンティアとして環境破壊や資源不足にあえぐ各国の注目を集めた。
しかしパラミタは、未知のモンスターや病、魔法により地球人とその文明の侵入を拒んでいた。

だがパラミタ出現に前後し、目に見えない「存在」を見る子供たちが現れる。その「存在」は五千年前、かつてもパラミタが地球に現れた時に、大陸で栄えていた国家シャンバラの住人だった。
彼らは邪教、鏖殺寺院(おうさつじいん)が起こした内乱でシャンバラが滅んだ時、魂だけとなって地球上に残されていたのだ。
『契約』する事で、子供たちはパラミタに入れるようになり、魂は実体を取り戻すことができた。

そして2019年6月現在━━
「ひゃっほー! ゴブリンごときがあたしに勝とうなんて、百万年早いっての!」
リコがブロードソードを振り払うと、向かってきたゴブリンが吹っ飛び、後ろのゴブリンを巻きこんで背後の木に激突する。
「どう? まだ、やる気? うりうり。……あっ、逃げた」
リコに剣を構えて迫られ、ゴブリンの群は我先にと森の奥に逃げていく。
「自分たちから襲ってきといて、張りあい無いなー」
つまらなそうなリコに、彼女の背を守って槍を振るっていたジークリンデが言う。
「リコ、油断しちゃ駄目よ。今回の依頼で問題なのは、森に巣食うモンスターよりも他校の生徒なんだから」
「はいはい。この依頼、あたしたち蒼空学園の威信がかかってるとかでしょ。あのオンライントレード校長も、面倒な事を頼んでくれるわ」

ジークリンデと契約したリコは、パラミタにある蒼空学園に入学していた。その校長、株取引などで若くして巨万の富と権力を手に入れた御神楽 環菜(みかぐら・かんな)が先程、リコたちを呼び出したのだ。
「あなたたちには空京の北東にある森に向かってもらいます。
先程入った情報によると、その森に呪いの魔剣と恐れ伝えられる斬姫刀(ざんきとう)スレイヴ・オブ・フォーチュンがあるとか。

私たちパラミタの学生にとり、いずこかに眠るシャンバラ女王はシャンバラの建国に欠かせない重要人物。この魔剣を抜いた者は、女王を斬る宿命を負います。それを防ぐため、魔剣は台座から抜かないまま確保すべきでしょう。
我が蒼空学園のライバル各校も、この情報をつかんで、すでに魔剣確保に生徒を出動させています」
「だったら、他の学校の皆さんに任せておいてもいいんじゃ……」
なにげなく言ったリコに、環菜校長は鋭い視線を向ける。
「甘いわね。世界各国が、シャンバラの権益を取りあっているのよ。学生は所属学校を支援する国家や組織のために働く事を期待されている。大きく日本の支援を受ける蒼空学園が、他国を代表するライバル校に遅れを取る訳にはいかないわ」
「はあ……そんなモンですか」
げんなりしたリコに、校長は冷たい口調で言う。
「女王にアダなす魔剣を安全に確保すれば、この地の住人、今後シャンバラ王国の民となる人々から信頼も得られるでしょう。
特別な存在である貴女が魔剣確保に関わる事は、我が校と日本にとり意義深いものとなるわ」
校長の言葉に、リコは胸の中で思う。
(ここでもか。パラミタに来ても、あたしはまだ……)

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