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嘆きの邂逅~聖戦の足音~

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嘆きの邂逅~聖戦の足音~

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「我の村は今年も作物が収穫出来ず、来年の春に撒く種モミも無い有様……」
 バイクを降りて、入り口に向かう途中、アルダトは少女が真剣にパラ実生に縋っている姿を目にする。
「飢えた赤子が我を待っておるのだ、是非種モミを一袋分けてくれ」
 涙ながらに言いジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)は、パラ実生達の腕を掴んでいく。
「あ? 関係ねぇだろ、俺等には」
「てゆーか、機晶姫だろ? バラしゃ結構な金になるだろ。種くらい数年分手に入るんじゃねぇの?」
「そうそう、村の為に売られちまえよ〜。なんなら俺達が買ってやろうか、柿の種くらいプレゼントするぜ〜」
「夏にはスイカの種をプレゼントだ」
「この体を売ったら働き手が居なくなってしまう。頼む、その改造バイクのパーツだけでも分けてくれ」
「マテマテ、冗談じゃねぇぜ!」
 改造バイクの方に歩き出すジュレールを、パラ実生達が追っていく。
 そうして意味不明な言動でパラ実生の気を引いているジュレールに軽く目配せを送った後、アルダトは店内に入っていく。
 そのアルダトを押しのけるかのように、後からスパイクバイクで乗りつけた男が店内に入っていき、カウンター席、中央にに鎮座する。
 ダンと指でテーブルを叩き、振り向いた店主を指で招く。
「ただ今」
 珈琲を淹れていた店主は、暴れているパラ実生に出して嗜めると、その男――織田 信長(おだ・のぶなが)の方へと注文をとりにやってくる。
「フン、セコいのう。所詮は野盗、国を盗らず茶店や農園に居座るを選ぶか」
「はあ……」
 信長の言葉になんとも答えられず、店主は困ったようそわそわとしている。
 占拠しているパラ実生は、一般の客にはさほど手を出してはこないようだが、尊大な座り方で貫録を感じる信長へは鋭い視線を向けてくる。
 完全に無視し、信長は店主との会話を続ける。
「して、この野菜パフェなる物はなんぞ」
「これは季節の野菜をふんだんに使った地球で有名な冷菓です。旅の方に教えていただき、今年からメニューに加えました。今の時期ですとさつまいもパフェになります。来月からは苺パフェが……つくれればいいんですけれどね」
 店主が深い溜息をつく。
 春には苺、夏にはメロンやスイカなどの野菜に分類される果実等が沢山使われるパフェのようだ。
「上手いぜ、このジュース。さあ、飲め飲めヒャッハー!」
 パラ実生が集まる席からは、パートナーの鮪の声が響いてくるが信長は目を向けはしない。
「こちらにいたします?」
「いや、このおからのケーキというのは?」
「こちらはですね……」
 なんだかんだと質問を続け、信長は自分の元に店主を引き止めておく。
「あなたがリーダーの四天王でしょうか?」
 うふふふっと妖艶な笑みを浮かべて、アルダトは席で女性の肩に腕を回して下品な笑い声を上げている男の元に近付いた。
「お待ちしていますわ」
 すっと紙を差し出すと、そのまま背を向ける。
「待てよ、遊んでいかねぇのかよ」
 ぐっと、肩に手をかけられるが、ゆっくりとその手を振り払う。
「手紙ご覧になって? 後ほどゆっくり、ね」
 艶やかな笑みを残してアルダトは店を後にする。
「なんだこりゃ……」
「果たし状?」
 手紙を開いたリーダーの四天王、舎弟達が乱暴で挑発的に書かれた文章に眉間に皺を寄せた。
 手紙には、話があるので、ここから数分はなれた場所にある橋の傍の河原に来い。立会いに子分をどれだけ連れてきても構わない。リーダー本人が来なかった場合は、臆病者だと言い触らす。
 などといった内容が、オツムが弱い人にも非常に分かりやすい文面で書かれていた。
「優子団十傑集 E級四天王 白昼の魅世瑠……? ああ、来るって話だった軍団か?」
 C級四天王神楽崎優子の名は、先ほどヴィトから聞いている。
「しかし、本人は来ず、E級四天王が相手ってか?」
「行くまでもねぇだろ」
「いや、女ばかりの十傑集なら、うちのグループに引き込んじまえば丁度よくね?」
「そりゃ、楽しそうだ」
「で、アンタらはこんな場所に収まって、それで満足しちゃってるワケ?」
 突如響いた声に、笑い声を上げていたパラ実生が一斉に振り向いた。
 来店したイルミンスールのウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)が近付いてくる。
「喫茶店占領するのはいいんだけどさぁ、つか、いろんな人に迷惑だしお前らも大して儲かってねーだろ?」
「占拠じゃねぇの、縄張りにして他の勢力から守ってやってんだよ」
「かえって店長達に迷惑をかけています」
 カウンターから顔を出したレキはそろそろ限界だった。彼等はあまりにも身勝手だ。
「別のナワバリとか探すのはどーよ? ……俺に心当たりあんだけど〜」
 ウィルネストが言うも、リーダーは不機嫌そうにテーブルに足を乗せる。
「あー、気にいってんだよ。料理も美味いし。ったく今日はなんだか煩ぇハエが飛びまわってやがる、おい! ちゃんと掃除しろ!」
 リーダーは店主を激しく睨みつけた。
「いやいやソト、見てみなよ。百合園のお嬢様達がいらっしゃってるぜ? 美味しい料理作ってくれてるぜ。彼女達からなら、こんなちんけな喫茶店よりよっぽど色々絞り取れそうじゃね?」
 ウィルネストの言葉通り、見れば喫茶店の外で百合園の神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)が、購入した野菜を使ってポトフを作り、ミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)と共に、訪れるパラ実生達に配っている。
「ったく、あいつ等……。まあ、食いたいは行けばいいんじゃねぇ? ついでに、河原にも行ってやんな。女何人か連れて返って来いよ」
 リーダーの男がいった途端、「おー!」と歓声があがり、男性の殆どが外に向かっていった……。

「順番に並んで下さい。沢山ありますから」
 有栖は、急いで器に料理を入れていく。
「召し上がったら、お帰りになってくださいませ」
 ミルフィは有栖がよそったポトフをパラ実生達に配って回る。
「おう、ヤボ用済ませに行ってくるぜ〜。用が済んだらここでまた宴会だ。ヒャッハー!」
「それでは困ります……。農家の皆さんもお困りですし、集会は別の場所でお願いします」
「よし、農家奴等も今晩は混ぜてやるぜ。皆で宴会だ。それならいいだろ〜!」
 有栖の説得はパラ実生達に受け入れられない……。
「お任せ下さいませお嬢様、わたくしの美味しい料理で見事、パラ実生の方を説得してみせますわ……!」
 ハッと気付けば、ミルフィが次の鍋の味付けをしている。
「あ、ちょっ、ミルフィ……!?」
「よし、次はこっちのお嬢ちゃんの方を食ってやる」
 意気揚々と差し出したパラ実生の椀に、ミルフィの体がとっても温まるポトフが入れられた。
「美味しい料理を召し上がったら、きっと心も温まりますわ!」
 ミルフィは純粋ににっこり微笑んだ。

 男達が外に気をとられている隙に、隠れ身で潜んでいたカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)がカウンターに姿を現す。
「これはなんだと思う?」
 さっと謎料理を出して信長の気を引くと、店主の腕をぐいっと厨房の方へと引っ張る。
「……果物スープかのう」
 カレンに悪意がないことを察した信長は引きとめはせず、軽く笑みを浮かべながら悠然と見送ることにする。
「私の友人いや、仲間……でもなく、知ってる人がね、仲間引き連れてここを狙ってるんだよ。えっと、悪い意味じゃないんだけど、パラ実生達を強引な方法で追い出すかもしれないから、その前に逃げよ。家族の人も!」
「わ、わかった……しかし、店が」
「もし、もしも店がなくなっても、人が生きていれば、また店を作ることが出来るからっ! 早く……!」
 カレンは厨房で料理をしていた男性の腕もとって、勝手口から外に連れ出していく。
「行こうか」
 店の前でパラ実生の気を引いていたジュレールも有栖達に任せて合流をし、避難していく。