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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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 崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)の言葉に目を瞬かせた。
「たまには妹らしい事をしたい……?」
 こくっと頷く小夜子を見て、亜璃珠は少し考えて頷いた。
「いいわ。それじゃ14日に出かけましょうか」
「はい」
 亜璃珠の言葉に、小夜子は明るい笑顔で頷き、2人は一緒にヴァイシャリーの街にお出かけすることになった。

 ヴァイシャリーの街に出た2人は、一緒に服を見て回った。
「いつも思ってるんだけど……小夜子はちょっと露出の低い服ばっかりでもったいないんじゃないかしら」
「もったないですか?」
「ええ。結構スタイルがいいんだから、たまにはシスター服とかロングコートじゃなくて、他のも着てみたほうがいいと思うのよね。いい機会だわ、選んであげる」
 亜璃珠は小夜子のために、服を選び出した。
 すると、同じく小夜子も服を見始めた。
「それじゃ私も亜璃珠さんに似合う服を探してみますわ」
 なんとなくうきうきした様子の小夜子に気づき、亜璃珠がその顔を覗き込む。
「なんだかテンション高めね、小夜子」
「そ、そうですか?」
「ええ。今日はお化粧とかもしちゃって……可愛いじゃない」
 つん、と淡いリップの付いた小夜子の唇のそばを亜璃珠がつつく。
「た、楽しみだったんですもの」
 恥ずかしそうに照れる小夜子を見て、亜璃珠は言葉通り可愛いと思うと同時に、ちょっと申し訳ない気分になった。
 今日のお出かけをOKしたのは、神楽崎優子副団長が都合が取れないからと言うのが理由にあるので、少し後ろめたい気持ちになったのだ。
(ま……せっかく一緒に出かけたんだし、小夜子には楽しんでもらいましょう)
 亜璃珠は気持ちを切り替えて、小夜子のために1つの服を取り出した。

 試着が終わった小夜子がもじもじとしながらカーテンを開けると、亜璃珠は満足そうに微笑んだ。
「うん、いいじゃない、似合うわよ」
 小夜子が着せられたのは、黒地のワンピースに白いレースがふんだんにつけられたふりふりのワンピースドレスだった。
 レースを挟んだ三段フリルのスカートがふわふわとして可愛らしいが、普段は肩も足を肌を出さない小夜子は落ちつかなげだった。
「こ、この服はちょっと恥ずかしいです……」
 頬を染める小夜子を見て、亜璃珠はその肩に白いショールをかけてあげた。
「寒い時期ですから、こういうのを着るなら、ショールなりをかけた方がいいわね。ふふふ、でも、この姿でどこかにお出かけしてみたくなるわね」
「これで外に出かけるのは本当に恥ずかしいです……」
 小夜子は照れながら着替えなおし、亜璃珠にチャイナドレスを渡した。
「亜璃珠さんはスタイルがいいから何でも似合いそうですが、大胆なものが良さそうと思って」
「そう、それじゃ着てくるわ」
 亜璃珠は躊躇なくそれを受け取り、試着室のシャッターを閉めた。
 着替えを待ちながら、小夜子はそんな亜璃珠を羨ましいと思った。
 亜璃珠はスタイルが良く、何でも似合う。だからどの服を着るのも迷いがない。
 自分もあれくらい欲しいなあ……と小夜子が思っている間に、亜璃珠の着替えが終わった。
「わあ、さすが……」
 スリットから見える生足がまぶしい亜璃珠のチャイナドレス姿に、小夜子は感嘆の溜息を漏らす。
 2人はそうやって互いに似合う服とかを見たりして過ごし、ショッピングに満足すると、ヴァイシャリー湖畔に散歩に行った。

 湖のそばを亜璃珠と小夜子は手を繋いで歩いた。
 最初は自分なんかとバレンタインに付き合ってもらって良かったのかなと思っていた小夜子だったが、手を繋いで歩いているうちにその気持ちは薄らいでいった。
「小夜子」
「はい?」
「寒いからあなたも巻きなさい」
 亜璃珠は自分が巻いていたマフラーを小夜子に巻いてあげ、長さが足りないので、体を寄せて歩いた。
「姉妹というより、恋人気分ね」
 その言葉に小夜子は頬を染める。
「それにしても、小夜子からデートのお誘いなんて驚いたわ。もしかして、まだ自分の大切なもの……決めかねてるのかしら?」
 照れる小夜子を見つめながら、亜璃珠が尋ねる。
「いえ、あの……」
「大丈夫、焦らなくても時が来れば、そういうものは自ずと見つかるものですわ。……まあ、それまでお姉さまがその代わりを務めてもいいけどね」
 こつんと亜璃珠が小夜子に額を寄せる。
「あ、そ、その……」
 小夜子は恥ずかしくなりながら、鞄を開けて、亜璃珠にあるものを差し出した。
「今日は亜璃珠さんに日頃の御礼も込めて、チョコを渡したかったんです」
「チョコ?」
「これ……どうぞです」
 差し出された手作りチョコに、亜璃珠は笑みを見せた。
「うれしいわ、小夜子」
 亜璃珠はその場で手作りチョコを開け、早速、もらったチョコを口に入れた。
「それじゃ、私からもお返しに」
 口の中で軽く溶かしたチョコを、亜璃珠が小夜子に口移しする。
 重ねられた唇から甘い甘いチョコが移り、小夜子はうっとりとして目をトロンとさせ、そのキスを受け入れた。
「ふふ……お味はどうかしら?」
 甘く耳元で囁くと、小夜子は赤い顔で「素敵でした……」とだけ何とか答えたのだった。