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世界を再起する方法(最終回/全3回)

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世界を再起する方法(最終回/全3回)

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Scene.14 言葉無き暴走
 
「男って、一度は巨大ロボットを操ってみたい。という夢を見るものだと思うよ」
 そう言って、黒崎 天音(くろさき・あまね)が、『真竜の牙』の処置を施したゴーレムの操縦者に立候補した。
 ヨシュアが設定を施し、そして、暴走するゴーレム達の後を追うこととなる。
「皆が足止めしてくれている……。早く追い付こう」
 ヨシュアが何かを言おうとして、思いとどまる。
「気をつけてください」
と、見送ろうとして、葉月 ショウ(はづき・しょう)に手を差し延べられた。
「ヨシュア、お前はどうすんだ?」
「えっ?」
「少なくとも俺は、お前を足でまといとは思わないぜ。
 来たいなら、来いよ。
 一緒に、ゴーレムを叩き潰しに行こうぜ!」
「それに、ちっとくらいの迷惑を気にすることなんて無いと思うねえ。
 人はお互い助け合って生きているものさ」
 ショウのパートナーのラグナ・ウインドリィ(らぐな・ういんどりぃ)が、ヒョイと肩を竦めて言葉を継ぐ。
 ヨシュアは一瞬戸惑って、クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)の方を見た。
「……これがひと段落つけば、保護する必要性もなくなるであろう。
 行けば危険には違いないが、残して行くのも不安が残る。
 何かあっても、あなたのことは我々が護ろう」
 答えるようにそう言って、クレアは、ヨシュアに『禁猟区』を施す。
「決して無理はするな」
「ありがとうございます」
 礼を言って、ヨシュアは改めてショウを見返した。
「一緒に連れて行ってください」

◇ ◇ ◇


 聖地カルセンティンへの警護も必要だろうが、巨大ゴーレムの群れがツァンダに来る可能性がある以上、自分はその最悪の事態に備えなくてはならない。
 そう判断したイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)は、ゴーレムの、ツァンダへの進行ルートに最終防衛ラインを引き、そこでゴーレムを待ち構えることにした。
 カルセンティンの防衛は、他の者達に託す。
 自分が際優先すべきは、ツァンダだからだ。
「頑丈な木偶人形どもを一掃するのは、流石に難題であろうな。
 殲滅されているか、間引きされていればありがたいが」
「つまり、この作業が全く無駄に終わることも有り得るわけだな」
 パートナーのフィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)が苦笑した。

 彼等は、ゴーレムを足止めさせる為の罠を作っている最中だった。
 ぬかるみで進行を遅らせ、張った水を利用して氷結させられれば、倒すのに有余ができる。
「無駄に終わることが、最善なのだがな」
 イーオンは答える。
 自分達は、他の対ゴーレム部隊が殲滅に失敗した時の為の保険なのだ。


 硬化ゴーレムは、落とし穴に落とされていた時間差分、他のゴーレムの群れよりも遅れを取っている。
 更にそれを、天音がもう1つの硬化ゴーレムを追い付かせるまで留まらせるか、又は歩みを遅くしなくてはならず、一方で、じわじわとツァンダに向かって進むゴーレム達を殲滅させなくてはならなかった。

 そのルート中に、聖地カルセンティンがある。
 確かにそれは問題だろう。
 けれど、それよりも重要な問題があった。
「ゴーレムの群れが、既に村や町を踏み潰してるですって?
 冗談じゃないわよ……」
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は苦々しく呟いた。
 聖地は、他に護ろうとしている仲間が何とかしてくれるはず。
 自分は、ゴーレムの侵攻ルート上にある村や町を護らなくてはならない。
 少しでもゴーレムの数を減らさなくてはならなかった。
 アリアはサンタのトナカイに乗って、空からゴーレムの群れを探す。
「神子探索のつもりが、ゴーレム退治か……それこそ肩透かしね」

 同様の心配を、葉月 アクア(はづき・あくあ)や、佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)達も抱いていた。
「これ以上、村や町が襲われる前に、ゴーレムに追い付いて足止めをしないとねえ」
 また襲われる町があるかもしれないと思うと、いてもたってもいられない。
 急いでいながらも、途中を調べたことからは、ゴーレムが村や町を「襲撃」したのではなく、「通り過ぎた」らしいということは解った。
 ただ、大きな障害物は避けるが、避けずに踏み潰せるものは踏み潰して行く。
 そんな巨大なゴーレムを「襲撃者」と思わない者は居なかった。
 時に勇気を以って「迎え撃つ」者達に、ゴーレムは「応戦」した。
 それによって更に被害が生じたのだ。

「ゴーレムを発見した時、まだ町から遠いようでしたら、前方に回り込んで障害物を作ったらどうでしょう」
 パートナーの仁科 響(にしな・ひびき)が提案する。
「他の人達が、効率よく戦えるように」
「それよりは、地の利があるところで待ち伏せした方が早いかもしれませんね」
 先回りすることには賛成で、と、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が言った。

 風森 巽(かぜもり・たつみ)には、気になることがひとつあった。
 前回ゴーレムと戦っていた時、ゴーレムの動きが、急に鈍ったのだ。
 あれはどういうことだろう?
 パートナーのティアは、
「オリヴィエ博士が、足元に人がいたら、踏まないようについて行くように作ってたんじゃないの?」
と言うが、それにも納得がつかなかった。
 もしかして、命令の上書きができるのではないだろうか、と。
 それは、グロスが息絶えた瞬間のことであり、操縦者を失ったゴーレムが、静かに暴走を始めた瞬間だったのだが、グロスがいつゴーレム達のところから消え、死んだのかを知らない巽には、判断の材料が足りなかった。
 ゴーレムは今、グロスの最後の命令を実行する為に、じわじわとツァンダに向かっているのだった。


 そして、彼等はゴーレムに追い付く。
「良かった、まだ次の町まで行ってません!」
 葉月アクアが安堵の声を漏らす。
 小型飛空艇に乗ったアニムス・ポルタ(あにむす・ぽるた)が、スピードを上げてゴーレム達を追い越し、先の地形を確かめに行った。
 この先に、待ち伏せに相応しい場所はあるか。
 そしてその場所が見つかったとして、そこは町から離れているか。

 ここならとウィングが選んだ場所は、他の者達も充分に納得できる地形だった。
 程よく障害物もある。
「この人数でかかれば、ゴーレム達など殲滅できますよ」
「ヨシュアは下がってろ。俺は戦ってくる!」
 葉月ショウの言葉に、ヨシュアはショウの小型飛空艇から下りる。
「ヨシュア、こちらへ」
 代わりに、ヨシュアの護衛をクレアが引き受けた。
 2人は戦場になると思われるところから距離を置く。
 そして、やがてゴーレムの群れが近づいて来るのを視認した。
「……来た……」
 クレアが呟き、ヨシュアが息を飲む。
 そして、ふと、上を見上げたクレアは、ここを見付けたアリアが、空からこちらに近づいて来るのを確認した。
 アリアは地上に降りず、そのまま上空からの援護に入る。

 うぞうぞと進むゴーレム達は、一塊に集まってはいない。
 広範囲魔法で一気に片付ける、という訳には行かなそうだった。
「俺は端の方をやる!」
 ショウが、アクアやラグナを伴って真っ先に走り出す。
 広範囲魔法を使う者達の巻き添えにならないようにする為だ。

「足を止めます」
 アクアはゴーレムの足元に向けて、封印解除や紅の魔眼で強化した氷術を放った。
 がくんとゴーレムの動きが止まる。
 その隙に、ショウは死角に回り込む。
「うわっ!?」
 死角からの攻撃をしようとしたショウは、ゴーレムが後ろを振り返りもせずに腕を確実に自分の方に振ってきたのを慌てて避けた。
「一応、人間みたいな形をしてるけど、目の位置で見てるわけじゃ、なさそうだねえ?」
 それを見て、ラグナが苦笑した。
 人間と同じ角度が死角というわけではないのだろう。
「どこかにセンサーみたいのがついてるのか?」
 構うものか、とショウは剣を構える。
アクアも刀を構え、
「爆炎波!」
「アルティマ・トゥーレ!」
 同時に攻撃を仕掛けた。
「おいおい、相殺しちまうんじゃないかぁ?」
 炎の攻撃と、氷の攻撃。
 追撃の雷術を放とうとしながら、ラグナが言う。
 2人の攻撃は相殺はされなかったが、ゴーレムの足元の氷を溶かし、ゴーレムは貼り付いていた足を引き剥がした。
 そこへ、ラグナが雷術を撃つ。
 ゴーレムはがくがくと動きを鈍らせ、ダメージを受けているようだが、それでも、倒れるに至らなかった。
「……頑丈ですね……」
 アクアの表情が険しくなる。
「ちっ! もう一度だ!」
 ズシン、と手足を振り回す攻撃を避けながら、ショウがアクアやラグナと目配せを交わす。
「じゃあ、次はもう少し大きいのをいってみようかぁ」
 ラグナは不敵に笑いつつ、次の魔法を準備する。
 ゴーレムの動きを封じつつ、攻撃を仕掛け、最後にラグナの轟雷閃を受け、ついにそのゴーレムは、砕けながら地面に倒れて動かなくなった。

 一方、ウィングはアニムスや神封剣と共に、3人がかりで、紅の魔眼や禁じられた言葉で強化したアシッドミストやサンダーブラストを連発する、という力技で、ゴーレム達に攻撃を仕掛けていた。
 それに巽とティア、そして空からアリアも援護する。
 だが、程なくしてアリアは、はっと前方を見やった。