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精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~

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精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~
精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~ 精霊と人間の歩む道~イナテミスの精霊祭~

リアクション

 
 私と貴方と 手を取り合い

 心を彩る鮮やかな雷電
 舞い散る風と一緒に踊ろう

 静かに氷結
 命を繋ぐ水の欠片と踊ろう

 身体温める炎熱
 情熱の焔と共に踊ろう

 行く道を照らす光輝
 その指し示す方へ踊ろう

 心を穏やかに包む闇黒
 身を委ね心重ね躍ろう

 絆はここにある
 私に応えてくれた貴方へ

 今は大好きと叫ぶんだ

 絆はここにあるって知ってる

 
 日も沈み、月光が照らす街の中を、歌菜の紡ぎ出す歌声が包み込んでいく。
 人間と精霊との『絆』、その素晴らしさをいつまでも忘れないように。
 
「……あっ。姉さま、ネラちゃん、花火です」

 アルツールと別れ、公会堂から出てきたミーミルが、空に咲く大輪の花を見上げて、華やいだ声をあげる。
「ねーさん、ちびねーさん、これが上がったときはな、「たーまやー! かーぎやー!」って言うんやで」
「はい、知ってますよ。豊美さんから教えてもらいました」
「ほう、私は初耳だな。では次の時には一緒に」
 直後、先程よりも大きな空の花が咲く。
 
 『たーまやー!
  かーぎやー!』

「精霊が互いの関係をどう認識するかは、生まれに関係なく、その方とどのような関係を築いたかによりますわ。
 ……わたくしがお兄様をお兄様と呼ぶのは、こう呼ぶのが、わたくしの想いを表現するのに最も相応しいと思っているからですわ。
 ……このような回答でよろしいでしょうか?」
「うーん、もっと色めき立つような答えが聞けると思ったけど……セイラン様、もしかしてかなりの酒豪でいらっしゃいますか?」
「酒豪かどうかは分かりませんが、精霊長としてのたしなみと捉えていただければと思います」
「さ、流石ですセイラン様……わたくしも見習わなければなりませんね」
 結局お酒を飲み交わしながら、セイランと祥子、イオテスが祭の最後の夜を満喫する。
「ハァ……何よ、いきなり「特大かき氷作って」なんて……あっついし疲れるのよねー」
 そんなことを呟きつつも、カヤノはレキの頼みを受けてスタンプラリーを完了した者たちへ振る舞う特大のかき氷を作り、それは街の者たちに好評を以て受け入れられた。
「はい、セリシアさん。これ、俺たちが作ったんだ」
「ありがとうございます。……街の方には、一層感謝しなくてはいけませんね」
 町長や校長、五精霊にレイを配っていた樹から花を受け取り、セリシアが満面の笑みを浮かべる。

「そうだなぁ……人間の生活には必要なのかもしれないけど、この壁と門ってどうしても、息苦しさみたいなのを感じちゃうんだよね。
 確かに、この門からはたくさんの人間の想いを感じるよ。それを壊したくない気持ちも理解できるけど……これだけの門を作れたんだから、必要になったらまたすぐに作れるよね?
 大切なのは、少しくらい壊れてもすぐに直せると思えるだけの信頼関係なんじゃないかなって思うんだ」

「えっと……どこそこはこちら、みたいに案内してくれる何かがあったら嬉しいかな、って思います。
 ……はい、恥ずかしながらよく迷ってしまうもので……ああでも、ただ闇雲に設置するだけじゃ景観を崩すと思うんですよ。
 なにかいいの、ありますかね?」

「つうかさ、俺炎熱の精霊なんだけどさ、他の都市に行ってみてもいいんだよな?
 全部の精霊が集まってんだからさ、あっちこっちに行ってみたいじゃん?
 ……あーでも、氷結ん所は寒そうだなぁ……俺が来た時だけあったかくしてくれりゃいいんだけど」

 これらは、今回の精霊祭を訪れた精霊たちがヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)神拳 ゼミナー(しんけん・ぜみなー)に寄せた声の一部であった。
「ありがとう! 貴方の名前、そして意見は俺の心に刻ませてもらった。ぜひ今後に生かさせてもらおう。 ……俺の名前? ははっ、俺はヴァル・ゴライオン、貴方の街の帝王だ!」
 声を寄せてくれた精霊にそう答え、ヴァルがゼミナーと共に、集まった意見の内で伝えておいた方がよいと判断したものを、五精霊や町長に伝えていく。その意見のいくつかは検討されたり、既に実行段階にあるものもあったりで、有用に活用されそうであった。

「……どうじゃ、エリザベート。少しは皆々の思い、心に刻み込んだかの?」
「そう言う大ババ様はどうですかぁ? 私はちゃぁんと刻みつけましたよぉ」
 ……そして、街中を散策してきたエリザベートとアーデルハイトの下にも、ヴァルとゼミナーの集めた意見が届けられる。
「一部の精霊から、『何を考えているのか分からないのが不安だ』という声が寄せられています」
 ゼミナーの言葉に、エリザベートとアーデルハイトが同時にうぐ、と声を漏らして沈黙する。そして、町長の手伝いをすると言って去っていった彼らの背中が小さくなる頃、アーデルハイトがぽつり、と言葉を漏らす。
「……私もおまえも、考えを改めねばならんようじゃのう。少なくとも今までの私とおまえは、不十分であったと認識するべきじゃな」
「……はいですぅ」
 しょんぼり、と目線を下げるエリザベートの頭を、アーデルハイトがそっと撫でる。
「何、声が寄せられているという時点で、これから努力すればまだ間に合う。
 ……そのこれから、が大変じゃがな」
 呟いたアーデルハイトが見上げた空に、大輪の花が咲く。
「花火ですぅ!」
「ほぉ、綺麗じゃのう。どれ、たまには私とおまえ、二人きりで見物といこうではないか」
「しょうがないですねぇ〜、付き合ってあげますよぅ」
「ったくおまえは、いつもの調子を取り戻しおって」
 そんなやり取りを交わしながら、エリザベートとアーデルハイトがその場を去っていく。

「なぁサラ、本当にいいのか? これ燃やしちまったら、イナテミスは――」
「ああ、構わない。これは、カラム町長の意向なのだ」
「へぇ、人間も思い切ったことすんだな。なら話は早ぇ! 兄弟、俺たちの手できっちり成功させてやろうぜ!」
「簡単に言うけどなぁ……」
「……カラム町長は、イナテミスに住まう民の代表として民をまとめ、私たちと共に在ることを決断なされた。であるならば、私たちも応えねばならない。……代わりは、私たちが務めるのだ」

 イナテミスの正門前に立ち、テッド・ヴォルテール(てっど・う゛ぉるてーる)が事前にサラとサラマンディア・ヴォルテール(さらまんでぃあ・う゛ぉるてーる)と交わした言葉を思い出していた。
「これの代わりに、俺たちが、かぁ……」
「よォヒバリ、お前、元ヤンキーなんだってェ?
 その割にゃ随分と可愛らしいお顔してんじゃねェか。
 まるで中学生みてェだぜェ? だっはっはっはっは!」
「ぁあ!? 五条てめー、誰が中学生だって? あたしはこれでも18だーッ!!
 ……どーやらパラ実じゃ口の聞き方は教えてくれねーらしいな……
 せっかくの機会だからあたしが叩き込んでやらぁっ!!」
「あン? なんだよ土御門、単なる冗談だっつー……
 オイばかやめろ、木材振り回すな、それ頭あたったら死ぬ死ぬ!」
「てめーが簡単に死ぬようなタマかよっ!!」
「いや確かにそうかもしれねェけど、少なくとも相当痛いからやめろ馬鹿――」
「馬鹿言うなこのバカー!!」
「ギャーーーーーー!!」


 テッドの背後で繰り広げられていた五条 武(ごじょう・たける)土御門 雲雀(つちみかど・ひばり)の、些細なことから始まった喧嘩に、テッドがふるふる、と拳を震わせる。

「この期に及んで、人間同士でケンカしやがって……!
 俺達が何のためにキャンプファイアーやろうとしてるのか、
 あんた達全ッ然わかってねーのかよォォォォ!
 
 巻き上がる爆炎に巻き込まれる武と雲雀。
「おーおー、兄弟、熱くなってんなぁ!
 ……っと、俺の準備は出来たぜ!」
 荒い息を吐くテッドに賞賛の言葉をかけて、サラマンディアがガッツポーズを見せる。
「ふん、俺だってもうとっくに準備完了してるぜ。
 後はバカしてるこいつら待ちだよ!」
 腕を組むテッドへ、爆発の影響から立ち直った武と雲雀の言葉が飛ぶ。
「ナメんなよ、覚悟なんてとっくに出来てるに決まってんだろ?
 俺にゃ難しい事ぁよく分からねェ、だけどよ、これで全員が一緒になるッてんなら、それで丸く収まンじゃねぇの?」
「自分も準備を完了しているであります!」
 直後、空にひときわ大きな大輪の花が咲いた。事前に示し合わせていた、それが『発火』の合図。

『精霊指定都市・イナテミスの発展と、
 精霊祭の成功を祝い、
 ここに我ら精霊の手による炎を灯さん!』


 武とテッド、雲雀とサラマンディアの炎が正門の左右からぶつけられ、炎は壁を伝い燃え広がっていく。

「……キマクとイルミンスールは、ヒラニプラとは違う国になっちまった。
 最悪、ここにいる皆とこうやって喋ったり喧嘩する事も出来なくなっちまう」
「……そうだな。イナテミスは、シャンバラの精霊に通ずる人、国と争わず、積極的に受け入れる方向を取るだろう。……だが他の国、そしてエリュシオン……今はまだ、どうなるか分からんな」
「……だが、契約した以上、俺は何があってもあいつを置いていくことはしねえ。
 それが、雲雀に対するヴォルテールの精霊としての俺の覚悟だ」
「ああ。あなたは何を為すべきか、何のために戦うべきか、既に心得ている。
 同胞として、誇りに思うよ」

「……ま、戦わねえで済むんなら、それに越したこたねえんだけどな!」
 事前にサラと交わした言葉を思い出しながら、サラマンディアが生み出す炎に力を込める――。

 燃えていく門、そして壁を目の当たりにして、ざわついているのは事前にそのことを知らずにいた生徒と、伝達が遅れた精霊たちのみ。イナテミスの住人、そしてカラムは微動だにせず、紅々と燃えていく門や壁を眺め、これまで街を守ってくれたことに感謝するように礼を言ったりしていた。
 
「これを以て、精霊指定都市イナテミスの正式なる成立を示す。
 以後イナテミスは、シャンバラに住まう精霊、および精霊と共に在る意思を示す人間の所属如何を問わず、協力姿勢を取る者へ最大限の考慮を行うものとする」
 
 カラムが『精霊祭』の閉会を告げる言葉を朗々と響かせる。
 
 果たしてイナテミスは、東西分裂の危機に揺れるシャンバラの接着材に成り得るだろうか。
 あるいは、干渉を強めるエリュシオンからシャンバラを守る防壁に成り得るだろうか。
 それはおそらく、パラミタを統べる神にも予想し得ないだろう――。

 精霊と人間の歩む道〜イナテミスの精霊祭〜 終

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

 猫宮・烈です。
 
 ……ええ、とにかく詰め込み過ぎた感がひしひしと(汗
 ここで補足をするにしたって、どこからどう言ったものやら(汗汗
 
 まず、参加してくださった皆様、ありがとうございます。
 今回のリアクションで、人間と精霊との交流は一つの決着を迎えることとなります。
 
 イナテミスの住人と精霊との関係は示しました。
 イナテミスの今後の立ち位置も示しました。
 精霊の現状、イルミンスールの現状についてもある程度示しました。
 おそらく、リアクションを読んでいただければ、半分はつかめる内容になっているはずです。
 『三行でまとめて』と言われたら……任せます!(逃げた
 
 リアクションで詳しい答えの出ていない要素、ミスティルティン騎士団やロイヤルガード絡みのことは、そういう話があるのは確かですが、シナリオに練り込むにはまだ不十分と言わざるを得ないので、自分からは保留、と言わせてください。
 勉強不足で申し訳ないのですが、ご了承願います。
 
 リアクション中で完成した建物や今後整備されるかもしれない土地などの設定は、このリアクション公開後順次マスターページに更新していきたいと思います。
 ……文章や図という形に残しておけば、他のシナリオとの兼ね合いの時に主張出来ますからね。
 (むしろそこでまとめることで、今回のリアクションの整理を兼ねることになるのかもしれませんが(汗)
 
 冒頭で生徒に詰め寄られて謝っちゃってる二人は、もしかしたら違和感あるかも知れない所ですが、まあ、こそこそするのが嫌いな自分が書くとこうなるということでご理解いただければ、と思います。
 ……しかし、今の世界情勢の中、さらなる火種を撒いてしまったような気がしますが(汗 内紛とか起きてもおかしくないですな、これでは。
 
 それでは、次の機会がありましたら、よろしくお願いいたします。