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なし

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蒼空学園へ

薄闇の温泉合宿(第1回/全3回)

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薄闇の温泉合宿(第1回/全3回)

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第3章 魔道書

「ユリアナ・シャバノフさん?」
 風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は、ロイヤルガードや志願者としてというわけではなく、蒼空学園の一生徒として、ユリアナを探していた。
 彼女の安否を気遣っている人達を安心させてあげたくて……。
 蒼空学園だけではなく、彼女の出身の天御柱学院パイロット科にも問い合わせて、写真や学院生活で見受けられた特徴、蒼空学園に入学をした経緯などを確認してから、捜索に来ていた。
 また、親しい友人についても問い合わせたのだが、こちらに関してはクラスメイトとの付き合いは普通にしていたが、パートナー以外に特別に親しくしていた友人はいなかったという返事が返ってきた。
 優斗は、李 梅琳(り・めいりん)を始めとする西シャンバラのロイヤルガード達に囲まれている銀髪の女性に話しかけていく。
「蒼空学園の大学部のユリアナさんですよね? 学園の皆も心配していますよ」
「……ありがとう。すぐには戻れないけれど、用事が済んだら蒼空学園に通いたいと思ってる」
「用事? どうして賊グループにいたのですか? 事情があったのでしたら、戻れるよう手伝いますよ」
 優斗は優しく声をかけていく。
「うん、ちょっとね。ここでは言えない」
 感情があまり感じられない、そっけない声だった。
「そうですか。それではこの問題が解決したら、話していただければ幸いです。力になりますから」
 優斗の優しい言葉に、ユリアナはただ首を縦に振った。
「シャンバラ教導団のゾリアです」
 続いて、ゾリアがユリアナに近付く。
 パワードマスクを外し、素顔を見せて話しかける。
「金団長の命でお迎えにあがった……といいたいとこですが、とりあえず今回は事情を伺いに来たにょろ」
 ユリアナはちらりと捕まった賊達の方を見た後、口を開く。
「彼らには言わないで欲しいのだけど」
 小さな声で、ゾリアと、ロイヤルガード達に話していく。
「この賊グループに、大切な物を盗られてしまったの。その行方を探るために、内部に入り込んでたのよ」
「蒼空学園に進学する予定だったのですよね? ミス・御神楽に話して協力を得ればよかったのでは?」
「……御神楽校長には話してあるわ。取り戻したら、蒼空学園に戻る予定だった」
「その為に賊に協力をして、略奪行為に加担していたんですよね? それをミス・御神楽は黙認していたにょろと?」
 彼女の話が本当なら、自分の大切な物を取り返すために、他の人々の大切な物を奪うことに協力してきたということになる。
 それは身勝手で、自己中心的な行いであり、れっきとした犯罪行為だ。
「少し、2人きりでお話させていただきたいのですが」
 百合園女学院の教師であるオルレアーヌ・ジゼル・オンズロー(おるれあーぬじぜる・おんずろー)が、ユリアナに歩み寄る。
「残念だが、逃亡の可能性もある。離れることはできない」
 そう答えたのは、西ロイヤルガードのクレアだ。
「わたくし達は、なんとしても彼女を連れて帰らなければなりませんから」
 ハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)}は、柔らかな口調でそう言う。
「わかりました」
 吐息をついた後、オルレアーヌはユリアナに真っ直ぐ目を向ける。
「ユリアナ・シャバノフ? ――いえ、ロシア風に姓を読み替えるならユリアナ・シャバノヴァー、でしょうか? 一先ずは、無事なようで安心しました」
 オルレアーヌがそう優しく声をかけると、無表情ながらユリアナは軽く頭を下げた。
「とりあえずは、合宿所の方へ向かいましょう。そこでお茶でも戴きながら、ゆっくりお話をしましょうね」
 微笑むオルレアーヌに、ユリアナはもう一度首を縦に振った。

〇     〇     〇


 捕らえた賊達の大半は、船でヴァイシャリーへ護送することになった。
 船の中にあった盗品も一緒にヴァイシャリーに送られ、判明した場合は、持ち主の下に返されるとのことだ。
 アジトの調査が残っていることもあり、リーダー格の男数名と、ユリアナは合宿所の方へ連れてこられる。
 賊達は拘束された状態で、テントに入れられ、ロイヤルガード、及び志願者が交代で見張りにつく。
 ユリアナは西シャンバラのロイヤルガードと志願者が建てたテントで保護されることとなった。
 彼女のパートナーの人型の魔道書は、他の賊と一緒に今は拘束されている。危険な魔道書な為、猿轡と拘束を解かない方がいいという、ファビオの意見があったためだ。
 西シャンバラのテントで、共に茶を飲んで、合宿のことや、現在の情勢、地球のことなど、雑談をした後、オルレアーヌはユリアナにこう語りかけた。
「私は確かに、ただの青臭いだけの新任講師なのかも知れません。ですが、それなら青臭いなりに、貴方の力になりたいのです」
 雑談の最中もだが、ユリアナはあまり言葉を話そうとしなかった。
「今現在、東西シャンバラの関係は表向き平静を保っていますが、危うい所で均衡を保っている事もまた事実です」
 ユリアナは無言で首を縦に振る。
「このような国境地帯で、西側の学生が賊行為をしている事が両国関係にとってプラスになるとも思えません。大切なものとは、何ですか? 本音を聞かせてください」
「魔道書です。この魔道書の対になる魔道書を、あの賊グループに盗られてしまって」
 ユリアナは懐から、濃緑の表紙の魔道書を取り出した。
「凄く大事なものなんです。悪用されたら、犠牲者が沢山出てしまうかもしれないので。確かに、賊に加担していましたけれど、私自身は皆の世話をしていただけで、強盗などはしていません。……パートナーは少し、してしまったようですけれど」
 悲しげな目を見せて、ユリアナはそう言った。……饒舌に。
「その魔道書のありかは判っているのですか?」
「多分、アジトにあると思います。でも、下っ端の私は中に入れてもらうこともまだ出来ていませんでした」
 オルレアーヌの問いに、ユリアナはそう答えた。
「……わかりました。まずは、その魔道書を取り戻しましょう。取り戻すことができたのなら、蒼空学園に帰るのですね?」
「ええ」
 ユリアナは穏やかに返事をする。
 オルレアーヌは頷いて、合宿の責任者ゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)に伝えるために、その場を後にした。

 それから。
 ユリアナは、テントに残った西シャンバラのロイヤルガード隊員だけを前に、言った。
「私は御神楽校長からの極秘任務で、あの賊クループに潜入していたのよ。あの賊グループが盗んだ、私のパートナーの対の魔道書を手に入れるために。あと、東側のロイヤルガードだけど、邪魔になることは明白だし、この合宿で懐柔――出来ないようなら殺いでおく必要があるかもね」
 初めて、彼女は笑みを見せた。
 冷たさを感じる、笑みだった。

 同時刻。
 ゼスタは引率者と東シャンバラのロイヤルガード隊員を集めて、神楽崎優子を通じて届いた政府からの連絡を伝えていた。
「アジトの探索を終えた後、残りの賊とユリアナ・シャバノフ、及びパートナーをヴァイシャリーに連行する。ヴァイシャリーで全員裁判にかけられる。ユリアナもそれまで留置場に留まってもらう」
 そして、ゼスタはファビオに目を向ける。
 頷いて、ファビオが説明を引き継ぐ。
「彼女のパートナーの魔道書はエリュシオンで書かれた魔道書です。彼女が言っている対の魔道書もおそらくそうでしょう。2冊とも、イルミンスールの大図書館で管理されていた魔道書ですが、数年前に盗まれてしまったのです。厳重な管理が必要な為、魔道書の本体はイルミンスールに持ち帰るよう、アーデルハイト様から指示を受けています」
 かつて、その魔道書と戦ったことがあるとファビオは皆に話していく。
 女王の騎士として、自分は決して弱い方ではなかったが、その魔道書にはまるで歯が立たず、倒されたという過去を。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

ご参加ありがとうございます、マスターの川岸満里亜です。
温泉……やはり(?)女の子が積極的に進めてくださいましたっ。ありがとうございます。

今回は、クライス・クリンプト(SFM0005057)さんに、ロイヤルガードの称号を発行させていただきます。
シナリオ最後のシーンには、ロイヤルガード隊員として、加わっていたとしていただいて構いません。

なんだか裏が色々ありそうなこのシナリオですが、基本的には(表向きには)ほのぼのと進むと思われます。
……ホントデスヨ! ホントですってば!!

引き続きご参加をご検討いただければ幸いです。

貴重なアクション欄を割いての私信等、本当にありがとうございます。
余力がなく、お返事を書く事ができず申し訳ありません。励みに頑張らせていただきます。

追記:ユリアナが船から降ろされた後のシーンが抜けておりました。誤字の修正と共に、リアクションの修正を行いました。大変申し訳ありません。