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まほろば大奥譚 第三回/全四回

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まほろば大奥譚 第三回/全四回

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第三章 鬼城暗殺部隊1

「マホロバ城地下に侵入した無法者を捕らえよ! 生死は問わぬ!!」
 大老楠山(くすやま)は、マホロバ改革を推し進め、情報・思想の制限を行っていた。
 手始めに、鬼城家の私兵(忍者と鬼)がティファニーたちを暗殺するために放たれる。

卍卍卍


 将軍の御従人武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は貞継将軍から預かった忍者部隊を取り入れ、『八咫烏(やたがらす)』と命名した隠密部隊を組織していた。
 戦国の時代より鬼城家には、影で動く忍(しのび)がいる。
 彼らの仕事は、破壊活動や暗殺だけにとどまらず、老中・諸大名の監察や一揆の鎮圧、異教徒の弾圧などのあらゆる隠密行動である。
 牙竜は最初の仕事に、大老楠山を選んだ。
「将軍がいないマホロバ城を守るのも御従人の役目だからな。楠山大老は、改革も結構だが私欲で動いてるなら…容赦はしないぜ」
 深夜、牙竜は楠山藩邸の塀を乗り越え、忍者達を指揮していた。
 流石に隠密のプロだけあって、彼らは動きは良い。
 牙竜の姉がわりの強化人間武神 雅(たけがみ・みやび)は、忍び込む牙竜に一応の警告をしておいた。
「私がここで見張っていてやる。必ず成果を上げてこい。そして早々に、最高階梯となり惚れた女に見せつけてやるのだ。さあ行ってこい、愚弟よ」
「愚弟て……惚れた女って……」
 ここで言い返せば何十倍にもなって返ってくるため、彼は黙ったまま屋根伝いを渡った。
 すでに女難の相が伺える。
 流石に諸大名の頂点に立つ屋敷は立派で警備も厚かったが、苦労しながらも牙竜たちはようやく楠山の書斎に行き着いた。
 早速、めぼしいものを探す。
「……とくに怪しいものはなさそうだが……ん、客か?」
 牙竜は隣の客間で、大老と家臣達が談議しているのを盗み聴いた。

「……それは確かなのか」
「は……大奥を調べさせたところ、明らかに異教の者が居りまする。直ちに取り締まりませんと……しかし……」
「どうした?」
「その異教者が……瑞穂の姫ではないかと」
「馬鹿な。瑞穂 睦姫(みずほの・ちかひめ)様は托卵賜れたのではなかったのか!」
「まだ、確証はござらぬ」
「事実なら、捨て置けませんな。それに大奥の権力を押さえるには、大奥取締役殿もご退陣いただかねば」
「その手筈は整えております。また、楠山様のご命令通り、城の地下に侵入した者へ追っ手を差し向けました。後は鬼を放つだけでございます」
「うむ、それは儂に任せよ……目星は付けてある……ん。何奴じゃ!?」

 大老が振り返り、牙竜は驚いて壁から飛び退いた。
 直ぐさま翻して身を隠したところで、部下に外で待機している機晶姫重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)に今の情報を伝えるよう命じる。
「なるほど、こちらはお任せください。この情報、活かしてみせます」
 リュウライザーは忍者から情報を受け取ると銃型HCに打ち込んで暗号化していた。
 直ぐさま連絡役の魔鎧龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)に知らせ、彼女は葦原明倫館総奉行{SNM9998935#ハイナ・ウィルソン}のもとへ走っている。
「大変だわ。これが事実なら……大奥はまた大荒れることなる! ハイナ御奉行様にも、貞継将軍様にもお伝えしなきゃ!」」
 牙竜も胸騒ぎを抑えられなかった。
「このままでは貞継……あんたが守ろうとしたものが無くなっちまうぜ。俺は、アンタが正しいマホロバの政ができると信じて、帰るべき場所を守って見せる。信じてるからな、御従人としても、友としても………!」

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 彼らが調べた結果、楠山は貞継を廃し、新政権に向けて新しい将軍の擁立に奔走しているのが分かった。
 大老は、まず托卵されている御花実の確保と、楠山の息のかかった乳母の選出を行っている。
 また、大奥の権力を弱めるべく、質素・倹約をもとに大奥の財源を縮小させ、大奥取締役御糸(おいと)を取締役から引きずり下ろすべく、賄賂などの汚職を暴こうとしていた。


 大奥では、ハイナは灯の話に仰天していた。
「それは……まずいでやんす。今、大奥は大老派家臣から目の敵にされているでやす」
「何とか、伝えられないかしら」と、灯。
 ハイナは焦ったが、現在大奥は世継ぎの誕生をいう最大の行事が控えており、どこもぴりぴりと緊張感漂う忙しさであった。
「わっちらの話を聞いてくれればいいんでやんすが……」
 ハイナは葦原からの申し入れを行ったが、瑞穂からは悉く拒絶されていた。
 総奉行は今更ながらに、瑞穂と対話路線を築いてこなかったことを気付かされたのであった。