リアクション
* * * 『こちらエコー1。エコー小隊、状況を開始します』 海京の東海上、エコー小隊はこちらの敵イコン部隊に当たる。 「シフ、行くよ!」 敵部隊に向かって、エコー1、【コキュートス】は飛び込んでいく。 ビームライフル二挺を血と鉄の構えで敵に向ける。敵の指揮官を狙うために、まずは周辺の一般兵を突破しなければならない。 加速していく中で、シフは正確に狙いを定める。 敵機を見据え、引鉄を引く。一方はロックオンした上で、そしてもう片方は回避予測をした上で。 『エコー5、援護します』 イーグリットが敵部隊へ切り込めるように、エコー5、【アーラ】は大型ビームキャノンでの砲撃を行う。 前方へ出るのは、他の機体の仕事だ。前へ出過ぎないようにしつつ、機関銃に切り換えて中距離での銃撃を行う。 エネルギーをチャージしている間は特に気をつけなければならない。 この間、コームラントに攻撃が行かないように、後衛のイーグリットはカバーに入る。 エコー3、【ライトニングシューター】が実弾式機関銃で弾幕を張る。コームラントと同じでも、機動力がある分広範囲に弾丸をばら撒くことが可能だ。 『後ろは任せて!』 真理が通信を行う。彼女が照準を合わせ、明日葉が機体を駆る。 コームラント一機、イーグリット一機で前衛を援護していく。そして他の四機で、敵指揮官機を目指す。 「雑魚はどいてろ!」 エコー6の中で、鬼羅が叫ぶ。 シュメッターリングに対してはビームサーベルで切りかかる。一度はかわされるも、それならばと腕で敵の機体に掴みかかり、ゼロ距離で頭部バルカンを放って怯ませる。 その瞬間、敵を弾き飛ばし、一閃する。 「出て来いよ、カミロ!」 おそらく、この戦場のどこかにいるはずだ。 一機のシュバルツ・フリーゲが迫る。他の量産型とは違う、オリジナルの機体が。 「やはり出てきたか!」 翔はその機体を見据えた。 『これが最後だ。あと十数分もすれば、海京も天沼矛も消滅する』 『ふざけやがって!』 翔のイーグリットがカミロへと迫る。 『翔、援護するぜ!』 エコー2、【ホワイト・ライトニング】がビームライフルで翔達の後ろから援護する。 だが、 「シールドか!」 カミロのシュバルツ・フリーゲがシールドを展開した。イーグリットのビームライフル程度の出力ならば、それで完全に防がれてしまう。 「間合いを詰めるぞ、翔」 ビームサーベルを抜き、接近戦に持ち込む。 『無駄だ』 機関銃とシールドによって、距離を縮めるのが難しい。 だが、一機で駄目でも、 (ミネシア、零距離戦闘に持ち込みます。前へ) 【コキュートス】がシュバルツ・フリーゲへと肉薄する。機関銃の攻撃をかわすため、高度を落とし、敵の下から背後へと回り込もうとする。 「――――ッ!」 上昇。 そこから居合いの要領で、斬りつける。 機体を逸らし、敵はそれをかわすがそれも予想の範疇だ。 ライフルを即座に突きつけ、零距離射撃を行う。バルカンを至近距離から放つが、 「遅い!」 カミロの機体が、実体剣を引き抜いた。 いや、手に持ったその武器は形状を変化させ、ランスのようなものとなる。機体と同じく漆黒であり、 「く……」 突きを放ってきた。 そのまま前面にシールドを展開、もう一方の手にある機関銃を掃射してくる。 「本気の装備ってことか面白ぇ!」 次いで鬼羅達のイーグリットが飛び込んでいく。 『よぉカミロ! また稽古してもらいにきたぜ!!』 ビームサーベルを構えるが、近づくことが出来ない。 機関銃の軌道を予測し、機動力をもってかわすのが精一杯だ。 『いいのは威勢だけか?』 接近戦に持ち込んでいる機体は三機だ。にも関わらず、まるで歯が立たない。 (クソっ! クソが!! 機体を思うように動かせねぇ! どんだけ訓練して練度が上がったと思っても、まるで体中に重りをつけてるみてぇだ……) カミロが前よりも重武装なのは分かっている。だが、機動性、回避性能はイーグリットの方が上だ。 しかし、当たらない。 「き、鬼羅ちゃん……頑張るんや、頑張るんやで! 鬼羅ちゃんはやれば出来る子、だから負けたらあかんで!」 リョーシカが励ましてくる。 ここで負けてはいられない。 「くっくっく! 強さは自ら感じ取るものだ! って言ってたな。あぁ……あぁ! 掴みとってやろうじゃねーか! この野郎が!」 何度も向かっていく。 だが、カミロ以外にも敵はいる。そちらにも気を配りながら、同時に指揮官を相手にするのは困難だ。 「クソ、被弾した。アリサ、ダメージは?」 「まだ5%だ。だが、一度離脱しよう」 翔はカミロのシュバルツ・フリーゲから距離をとる。 『この街を守るためにも、ここでお前を倒す!』 再びサーベルを構え直す。 『倒す? だが、それは果たして君自身の力と言えるのか?』 カミロの不敵な声が返ってくる。 『君は幼い』 『何!?』 『君が操っているのは何だ? 戦うも守るも今やそれを手放せまい』 イーグリットがシュバルツ・フリーゲへの距離を再び詰める。 『君自身が証明している! 新しい力、強大な兵器! 「代理の聖像」の必然性を……!』 サーベルとランスが激突する。 『そう、これは君の純粋な力ではない。己の弱さを覆い隠すための器に過ぎない!』 『違う!』 だが、もはやシャンバラを守る戦いにイコンは不可欠の存在となりつつあった。 * * * 「『代理の聖像』の必然性? 面白いことを仰いますね。道案内、ありがとうございました」 一機のイコンの上から、アリコリアは飛ぶ。 「ならばその幻想、打ち砕いて差し上げましょう。赤き翼の加持を……」 地獄の天使。 翼を広げ、彼女は人の身のまま、空を舞う。 『きゃははははっ、イコンイコン……サロゲート・エイコーン!』 ラズンが強敵を前に歓喜の声を上げている。 だが、カミロのシュバルツ・フリーゲの前には、まだ二機のシュメッターリングがいる。 「そこ、どいてくれませんか?」 二挺の魔道銃を構える。 「アル、援護する」 シーマがメモリープロジェクターで、空中にいくつもの彼女達の映像を投影する。 「マイロード、ここはわたくしが」 空飛ぶ魔法でナコトが飛んでいる。 だがシュメッターリングとはいえ、彼女達は一発でも食らえばひとたまりもない。 機関銃の砲撃に対し、炎の聖霊が自動的に反応する。 直後、ナコトは凍てつく炎を放つ。 「マイロード程の高速術式展開は出来ませんが……このぐらいの芸当は出来ますのよ!」 しかし、イコンの装甲にはあまり効果がない。 ならば、とアルコリア同様に魔道銃を構える。 「ナコちゃん、一発で」 シュメッターリングは手前まで接近している。 そのおかげで、敵の銃口が良く見えた。 「イエス・マイロード」 二人の両手、計四つの魔道銃が火を吹いた。二人の桁外れの魔力は武器ごとシュメッターリングの腕を消し飛ばした。 「さあ、参りますよ。蠅の王」 |
||