なし

リアクション

（・第一部隊）


　海京の外周。
　五月田を始めとした教官達による第一部隊は、最終防衛ラインとしてここを守っている。
「これより迎撃を行う」
　敵部隊の目標は、海京の制圧だ。
　第三部隊、第二部隊の生徒達との戦いを繰り広げているが、突破できる機体は直接ここまで来ている。
「行くぞ、サクラ！」
「はい、聡さん！」
　コームラントに搭乗する山葉　聡（やまは・さとし）とサクラ・アーヴィング（さくら・あーう゛ぃんぐ）が照準を敵に合わせる。
『コームラント全機。大型ビームキャノンをセット。合図と共に放て。イーグリットは全機、加速態勢に入れ。ここで敵の戦力を一気に削ぐ。ここで止めなければ、敵は天沼矛に達する。一機たりとも通すな』
　部隊全体が定位置につく。
『撃て！』
　ビームキャノンから放たれた光条が水平線上を突き抜けてゆく。
　その光を追うように、イーグリットによる編隊が続いていき、敵部隊へと接近する。
『この街をお前達の好きにはさせん』
　女教官の駆るイーグリットが真っ先に敵機へライフルを放つ。
　眼前には二機のシュバルツ・フリーゲ。敵の小隊長クラスと相対する。
　ビームサーベルを引き抜き、最高速度を維持したまま機関銃の弾幕へと飛び込んでいった。
　機体が消える。
　海面まで高度を落とし、そこから真上にビームサーベルを投げた。
　直後、機体は二挺のビームライフルを構えたまま急上昇。海面が波打つ。
『おおおおお！！』
　ライフルによる牽制を行いながら敵機を怯ませ、すぐにライフルをスライドし、サーベルを掴み一気に薙いだ。
　直後、敵の機体に加速を生かした蹴りを食らわす。そしてもう一機の指揮官機ごと誘爆させようとした。
　いや、それさえもフェイクだ。
『五月田ァ！！』
　直後、ビームキャノンによる砲撃が二機のシュバルツ・フリーゲを貫いた。
『十一時、二時の方角に新たな敵影。山葉、弾幕を張って援護』
　すぐに五月田が指示を出し、それを受けて聡のコームラントが機関銃を放つ。
『桐生、弾幕に合わせて射撃。ジェネレータ、及び関節駆動部を狙え』
　コームラントに合わせ、イーグリットが銃撃を行う。
「聡さん、エネルギーチャージ完了です」
「よし、撃つぞ」
　コームラントが機関銃からビームキャノンに切り換え、射線上に敵の機体を捉える。
『山葉。こちらのタイミングに合わせろ。ロックオン、３、２、１――撃て！』
　

「五月田教官、こんなに強かったのかよ……」
　桐生　景勝は驚きを隠せなかった。
　元々、五月田はコームラントの教官であったし、あの女教官もイーグリットの教官だ。訓練でも相当な実力者であるとは感じていた。
　――しかし、これほどとは。
　ベトナムで青いイコンには手も足も出なかったが、五月田の指揮能力と状況把握能力の高さには脱帽だ。
　学院側は機体が足りていない。第一部隊は東西南北に一小隊分ずつしか展開出来ていないにも関わらず、今は優位と言っていい状況にある。
「でもよぉ、教官……無理はするなよ」
　景勝の目には、教官達がどこか生き急いでいるように映っていた。