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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)

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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)
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「はい、こちらは天御柱学院のブースです。こちらでは、本家イコンとも言えるイーグリットとコームラントが展示されています」
 会場のあちこちに設置された大型モニタに、今度はマイクを持ったフィリッパ・アヴェーヌの姿が映し出された。
 天御柱学院の所有するイコンは、イーグリットとコームラントである。
 初めて人々の目に触れたイコンがイーグリットであり、各学校のイコンが現れるまでは、イコンの代名詞でもあった機体だ。
 二足歩行ではあるが、基本活動範囲は空中であり、ビームライフルによる射撃からビームサーベルによる白兵戦までこなせる、ある意味オールマイティな汎用型イコンである。最高速度はマッハを超えるが、そのためか全体のシルエットは意外とスマートであった。特徴的なのは両肩にある二基の可変型フライトユニットで、機晶姫の浮遊能力と同じ原理の発展型で、イコンの巨体をスムーズに空中機動させている。逆に、脚部には膝にカウンターウエイトがあるなど、歩行に関する能力は先の雷火などの方が優れているだろう。
 両腕にはアタッチメントがつけられ、ビームライフルなどが装備できるようになっていた。
 コームラントの方は、基本デザインは統一されているが、後方支援を主眼においた砲撃タイプであるため、安定性や出力の関係からがっしりとしたシルエットとなっている。
 ただし、こちらも飛行移動が基本であり、歩行はあくまでも補助である。だが、安定した砲撃を行えるように脚部は強化されており、カウンターウエイトも大型化している。
 武装は両腕のアタッチメントに大型ビームキャノンをマウントするのが標準であるが、両肩に各種ランチャーも装備できる。だが、そのためフライトユニットはコンパクト化され、イーグリットのような機動力はなくなってしまっていた。
「おー、イーグリットとコームラントがならんでいるのか。壮観だな」
 食事を終えたラルク・クローディスが、各ブースの見回りにやってきて言った。
「うーん、アルマインとはずいぶん違うなあ。なんだかいかにも地球製の部品を使いましたっていう感じでちょっと胡散臭いよね」
 イーグリットを見つめながらズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が言った。
 実際、イーグリットの素体は5000年前――いや、イコンその物はそのさらに前からあったロストテクノロジーではないかとの噂もあるのだが――からあったものだ。おそらくは、クェイルの上位機種として存在していたのだろう。だが、今のイーグリットは、ベースとなったその機体を元にして、地球の技術によって改修したものである。
「よし、今度こそキャンギャルのお姉さんにちゃんと質問するぞ」
『おう、見せてもらおうじゃないか、相棒』
 復活したロイ・グラードと常闇の外套が気合いを入れたが、ちょっと入れすぎた。
「すいません、警備の人ー。あっ、私、兼任してるんだった」
 威圧的に近づいてくるロイ・グラードに、キャンギャルをしていたテティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)が反射的に星槍コーラルリーフを取り出しそうになった。
 ゴン!!
「すいませんであります。御迷惑をおかけしたであります」
 バットを持ったアイアンさち子が、あわてて謝った。
「ほら、布。引きずってくでありますよ」
「だから、中身が……」
 常闇の外套の襟首をむんずとつかんで引きずっていくアイアンさち子に、ロイ・グラードが呻きながら言った。
「やれやれ、騒がしいな。それにしても、イーグリットは、すべてのイコンの基本形とみるべきなのか、あるいは一つの完成形なのかな」
 何をやっているんだとロイ・グラードたちを目で見送ってから、トマス・ファーニナルが真面目につぶやいた。
「聞いてきましょう」
 さっそく、ミカエラ・ウォーレンシュタットがテティス・レジャに聞きに行った。
「本当に、ここの人たちは楽しい人たちですね」
 青みがかった髪をした青年が、面白そうに言った。
「でも、それにも増して面白いのはイコンだ。時の輪は巡り、かくて巨人は甦る。いったい、その手で何をつかむつもりなのでしょう……ねえ?」
 青年が、そばに居た女性、アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)に訊ねた。
「さあ、私は……」
 アルディミアク・ミトゥナがうそぶく。
「これは失礼。詳しそうに見えたものですから」
 ルビーが、わざとらしくアルディミアク・ミトゥナに謝った。
 戦闘用の飛空艇のパイロットもしていたアルディミアク・ミトゥナとしては、イコンのことをまったく知らなかったわけではない。とはいえ、やはり専門外のことであって、とても詳しいとは言えなかった。それではいけないのではないかと思い、飛行型のイーグリットを見学に来たわけではあるが、どうも何か雰囲気が変だ。
「あの、あなたは……」
 誰かと訊ねようとしたが、すでに青年は立ち去った後であった。