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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)

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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)
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模擬戦エリア

 
 
「さあ、いよいよ本日のメインイベント、模擬戦の開始です」
 空京から外れた西の荒野からシャレード・ムーンが中継を開始した。
「おっ、いよいよ始まるのですね」
 フォーチュンのそばで機体の隠蔽作業を終えたばかりのシルフィーナ・ルクサーヌ(しぃるふぃーな・るくさーぬ)が、携帯ラジオから聞こえてきたシャレード・ムーンの声に反応してつぶやいた。
 フォーチュンは、本来は白銀に塗られたイーグリットである。要所に金の縁取りがされた美しいデザインだが、今は機体を隠すために迷彩のマントにすっぽりと被われて隠されている。何かあったときのために、イコンはそばにおいておこうよという祠堂 朱音(しどう・あかね)の提案からだった。
「さあ、朱音の所に急ぎましょう」
 シルフィーナ・ルクサーヌは、急いで模擬戦の観客席の方へとむかった。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、今回はシングルマッチとトリプルチームマッチの二試合が予定されています。では、第一試合から始めましょう。赤コーナー、緋桜 ケイ(ひおう・けい)さん&悠久ノ カナタ(とわの・かなた)さんのセンチネル!」
 会場に響き渡るシャレード・ムーンの声と共に、真紅のイコンが現れた。
 センチネルを改造したその機体は、もうほとんど原形を残してはいない。燃えあがる炎を連想させる装甲は、複数の装甲をカスケード式に合わせた物である。威圧的な重量感を示す一方、機体の自由度は損なわれてはいなかった。武装は、魔法学校の生徒らしく、アルマインのマジックソードとマジックキャノンを流用していた。それに、センチネル本来のスピアを背部のジョイントにななめにセットしている。
「はははは……。魔法少女に巨大ロボット……まさに今風! 燃える展開ではないか! この征野、妾が制する! さあ、かかって参れ!」
 センチネルの頭部に仁王立ちになっていた悠久ノカナタが、そう叫ぶとともに、パイロットスーツへと変身した。とうっとジャンプして宙返りをすると、開かれていた胸のコックピットの中へと飛び込んでいく。
「さあ、対するは青コーナー、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)さん&ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)さんのメカ雪国ベア!」
 シャレード・ムーンの声に呼ばれるようにして。白い小型のイコンがズンズンと大地を踏みならしながら進んできた。
 離偉漸屠を改造した物だということだが、その外観も性能も、離偉漸屠を遥かに凌ぐ物となっていた。
 基本デザインは白熊であるが、異様なほどに脚部が強化されている。同時に、本来は手につけるイコン用ナックルを大幅に改造して、マフラー型の補助腕に仕立てていた。もちろん形だけで物をつかんだりはできないが、打撃用武器としては充分である。本来の腕には、こちらも魔法学校生徒らしく、マジックカノンを装備し、補助武装として腕にショットガンを内蔵していた。本来ならマジックカノンも頭部に内蔵して『光魔力ビーム』とかやりたかったらしいが、さすがにそこまでの小型化は不可能だ。
「勝っても負けても、恨みっこなしだぜ! ソア!」
 専用の通信回線を開いて、緋桜ケイがソア・ウェンボリスたちにむかってメッセージを送った。
「ふふ……。やるからには必ず勝たせてもらうぞ!」
 悠久ノカナタもやる気満々だ。
「ふっ。このメカ雪国ベアと比べたら、他のイコンなんか子供の玩具さ」
 メインパイロット席にどっしりと座った雪国ベアが、不敵に言い放った。
「ベアったら、またそういう言葉を……」
 雪国ベアの挑発に、ソア・ウェンボリスがちょっとはらはらする。
「おのれ、わらわをさしおいて魔法大会で上位入賞したせいで慢心しておるな。情けを仇で返しおって……。ここで灸をすえてやらねばなるまい!」
 自信満々の雪国ベアに、悠久ノカナタが闘志をむきだしにした。
「それではそろそろ始めましょう。イコンバトル……レディー……ゴー!!」
 シャレード・ムーンが叫ぶ。
 試合開始を告げるサイレント共に、両者が動きだした。
「敵は格闘型だ。一気に接近して、まずあのでっかい手を切り落とす! いくぞっ!
「マジックソードは魔力充填120%だぞ。ゆけ、ケイ!」
 魔法が使えなくなっている緋桜ケイに代わって、サブパイロットの悠久ノカナタがマジックソードに己の魔力をそそぎ込む。それを受けて、ソードが目映い輝きを放った。
「先手必勝! やれ御主人!」
いきますよっ! 光魔力ビーム発射!!」
 ソア・ウェンボリスが、あらかじめ充填しておいたマジックカノンを発射した。格闘戦になると思い込んでいる敵を初撃で沈めようという作戦だ。
「なんだって!?」
 ふいをつかれつつも、緋桜ケイが、シールド代わりに左腕にマウントしていたマジックカノンを前面に構えて防御する。
 直撃を受けたマジックカノンが跡形もなく吹き飛び、センチネルの左腕がだらんと垂れ下がった。関節部が完全にイカれたらしい。
「たかが腕一本だ。俺たちは……負けない!
 まだ発射体勢を解けずにいるメカ雪国ベアに、一気に肉薄したセンチネルがその主武装であるマフラー型アームの片方を下から上へと斬り落とす。返す刀で、Λ斬りにしようとするセンチネルの動きをメカ雪国ベアがショットガンで瞬間止め、上回る機動力でなんとか横へと回り込んだ。
「しまった!」
「くるぞ、左正面!」
 悠久ノカナタがナビゲートして叫ぶが、だからといって巨大なイコンが即座に動くわけでもない。残ったマフラーパンチが、センチネルを殴り飛ばした。