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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第1回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第1回

リアクション


(・アルファ)


 【アルファ小隊】
 アルファ1:ライネックス村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)アール・エンディミオン(あーる・えんでぃみおん)
 アルファ2:スプリング和泉 直哉(いずみ・なおや)和泉 結奈(いずみ・ゆいな)
 アルファ3:メテオライトアルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)六連 すばる(むづら・すばる)
 アルファ4:イロドリC天貴 彩羽(あまむち・あやは)天貴 彩華(あまむち・あやか)

* * *



「ヴェロニカはこっち側に来たか」
 和泉 直哉は彼女が転入したばかりのときに、顔を合わせている。
 普通の女の子。そんな印象だった。それがまさか、白金の【ナイチンゲール】を起動し、初陣から学院の切り札と言われてしまっている。
 初陣で自分の力を過信し、痛い目を見たときのことが頭を過ぎる。
(出撃前の様子を見た限り、俺のような失敗はしなさそうだけど……やっぱり心配だな)
 まだ、戦場に出ることに迷いがあるように見受けられた。
「翔さん達もついてるから、大丈夫だよ」
 と、和泉 結奈が言う。
 地球とシャンバラに分かれたが、意外とシャンバラに出撃した学院の生徒は多い。これまでの実戦経験を生かして連携していけば問題なさそうだ。
 そして、寺院基地の姿が見えてきた。

(基地……鏖殺寺院……懐かしい響き。懐かしい記憶……)
 アール・エンディミオンは静かに呟いた。
 山岳地帯に隠されたその場所から、寺院製のイコンがこちらに向かってくる。
「で、出るわよ。最も目指すべき、警戒すべきは敵の大将……! こっちに引き付けてやるわ」
 村主 蛇々が【ライネックス】を駆る。機体制御をサブパイロットである彼女が行い、攻撃をアールが行う。
 敵機は次から次へと発進してきた。
「数が多いわね……!」
 だが、怖気づいてはいられない状況である。
(敵機はまだ安定飛行に入ってないわ。先手を打てば、十分乱せるわよ)
 【イロドリC】の天貴 彩羽からテレパシーが入る。小隊メンバーは出撃前に顔を合わせているため、可能なのだ。
 後衛の砲撃支援に合わせ、前衛が斬り込む。
(エネルギー充填、100%。いくわよ!)
 【イロドリC】の大型ビームキャノンの砲口から光が発せられ、一直線に伸びていく。それに合わせて、【スプリング】と【ライネックス】の二機がブースターを噴かせ、加速する。
 その砲撃だけで、シュメッターリンク二機が撃墜される。
 敵は怯んだ。今のうちに倒せるだけ倒してしまえれば――
「今のうちに!」
 【ライネックス】はビームサーベルを構え、斬りかかる。狙うのは、敵機の四肢。特に、機関銃を手にしている右腕だ。
 サーベルの青白い光条が弧を描き、相手の腕を断つ。
 直後、別の機体から銃撃が行われるも、イーグリットの機動力を生かしてかわしていく。敵機の武器は機関銃と頭部バルカンのみ。油断は出来ないとはいえ、機関銃さえ破壊すれば無力化するのは容易だ。
 撃墜するに越したことはない。が、敵の数は多い。基地の早期制圧のためにも、【ライネックス】は無力化を優先する。
 
(随分と隙だらけだな)
 【スプリング】の機体を駆りながら、直哉は敵がこれまでに比べかなり弱いことに気付いた。
 機体がまるで連携出来ていない。海京決戦まで戦いを繰り広げた一派とは違う。直感的にそう思った。この分なら『覚醒』を使わなくて済みそうだ。
(兄さん、十時の方角からくるよ!)
 機関銃を放ってくる機体はシュバルツ・フリーゲだ。いくら今回の相手が弱いといっても、油断ならない。仮にも指揮官機だからだ。
 機関銃で弾幕を張ってくる。それに対し、【スプリング】は旋回。ビームライフルでの牽制を行いながら撹乱する。
(今だ!)
 背後に回り込み、そこから指揮官機へと急接近する。加速しながらビームサーベルを引き抜き、一気に振り下ろした。
 すぐに敵機から距離をとる。直後、致命傷を負った敵機が爆散した。
 そこから、【ライネックス】との距離を確かめながら連携し、さらに飛び込んでいく。
(兄さん、別方向からも敵機が来てるよ!)
 どうやら、敵がイコンを打ち出しているのは一ヶ所だけではないらしい。結奈がレーダーの反応を確かめる。
「あっちは別の小隊に任せるぜ。俺達は基地の制圧を優先しよう」

 後衛の二機は、それぞれ敵機を遠距離から攻撃して援護している。
(彩羽、二時の方角から増援ですぅ!)
 どうやら、敵のデッキは三ヶ所のようだ。
(施設ごと壊すには、まだ距離が足りないわね)
 大型ビームキャノンのエネルギーチャージもまだ完了していない。そのため、スナイパーライフルで射程距離内のシュメッターリンクの関節駆動部を狙う。
 機関銃を失った機体が武器を調達しようと降りていこうとしているのを見かければ、そちらに照準を合わせてトリガーを引く。
 前衛がうまく撹乱しているおかげで、敵は後衛にあまり目がいかないようだ。
(あれは、指揮官機!)
 シュバルツ・フリーゲの姿を捉える。あちらも気付いたらしく、狙撃をかわしながら接近してくる。
 相手は弾幕を張りながら【イロドリC】へと迫る。だが、
「弾幕ならこっちの方が上よ」
 換装。ガトリングガンで応戦する。敵にとっては想定外だったらしく、そのまま距離をとろうとするが、【イロドリC】の武装は長距離射撃に優れている。
 スナイパーライフルに戻し、ジェネレーターのある位置を狙ってトリガーを引く。それは直撃し、シュバルツ・フリーゲはガトリングガンでのダメージもあって墜ちていった。 
「この分なら、確実に敵を潰せますね」
 【メテオライト】もまた、実弾式のスナイパーライフルで射撃支援を行っている。出来る限り敵機の死角となる場所に位置取り、慎重に狙いを定める。
「逃がしませんよ」
 戦場から脱しようとする敵機へ狙いを定め、確実に墜とす。まずは一機。
 それによって、敵にも位置を感づかれそうになるものの、敵機がこちらに注意を向けた瞬間にミサイルポッドを放つ。
 その間にまた移動し、狙撃をしていく。
 敵は大分乱れてきていた。