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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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市外の一戦/クィクモ
 
 クィクモ本営の方でも、龍騎士団との戦闘は避けられないものとなっていたのであるが……
「来た!」
 クィクモの町からも、見えた。龍騎士団。まがまがしいものに映る。斥候を放ったところ、数は、龍騎士二体の率いる400程だと確認ができている。
 これまでの主力部隊であった獅子・ノイエの二部隊を欠いた状態で、守らねばならない。
「龍雷連隊、全兵力をもって敵を迎撃する!」
 地上部隊の指揮を任されたレイヴ・リンクス(れいう゛・りんくす)はクィクモから一.二キロの地点に防衛線を張った。龍雷連隊が前面に展開、犬神 狛(いぬがみ・こま)の統括する陣地が後方からの支援を行う形で、龍騎士団を迎撃する。レイヴは、念の為、防衛線が突破されたときに備えて市内にも兵50を残している。
「今のわしにできるのは、ここで部下や仲間たちを信じて待つことだ……」犬神は本部の机に手を付き、後方からしっかりと戦線を見守る。
「仲間たちを守るために死力を尽くして戦闘に臨む!」
 レイヴは前線で、自らも武器を手に取る。おぉぉ! 兵たちの士気は高い。
「来るぞ……」
 段々と、龍騎兵の姿までが目視できるまでになってくる。
「レイヴ! いいか。慌てるな。必ず、できる……」初めて指揮を執るレイヴの補佐に付けられたファルコン・ナイト(ふぁるこん・ないと)。「岩造も、見守っている……!」
「はい」レイヴは、冷静だ。
「来る。来るぞ! すでにこちらに気付いている!」ファルコンは叫んだ。
 まだ、まだだもう少し……引き付けて。レイヴに汗が伝う。
「レイヴ!」
「……まだ。今だ。撃て!」
 機関銃を配備された兵100が、一斉に弾幕を張る。地上部隊めがけて龍騎兵どもが飛来してきていたところだ。高度を下げさせ、搭乗している敵兵を狙撃した。
「そうだ! 飛龍は、兵士が上に乗っているから、その騎乗している兵を、撃つんだ!」ファルコンも指示を出す。「また、飛龍は尻尾や翼を集中攻撃し動きを崩すのだ!」
 レイヴの指揮は功を奏し初撃でかなりの敵兵を落とした。
「や、やったぞ! レイヴ!」
「はい!」
 しかし、これだけでは龍騎士団を倒すことはできない。突破してきた龍騎兵に次は、犬神の陣地の対空砲が火を吹く。見えないよう隠されていたそれに敵勢は気付かずに被害を招いた結果だ。犬神の準備していた閃光弾も同時に撃ち込まれ、更に敵の戦力を殺いだ。
 ここからは、激戦となった。
 対空砲や銃撃を何とかするため、敵は部隊を散らせ空中を旋回させ、後方の部隊を地上に下ろし攻めてきた。無論、地上に下りてくる敵相手にも抜かりはない。
 レイヴは、善戦する。レイブはまた、各兵員には常に集団で行動するよう組ませており、最低でもツーマンセルでの行動をと徹底させた。孤立しそうな場合にはその味方を援護することを優先させる。これにより、乱戦の中で兵に被害が広がることが防がれた。
 龍騎士の内、一体は地上戦の指揮を執った。さる者である。ファルコンが付いていると言え、まだまだ指揮官としては経験も浅いレイヴは、これに押されてしまう。
「ええい。将は何処? 出あえい。それとも、フフ。龍騎士は怖いか?」
「くっ。ファルコンさん……!」
「レイヴ、落ち着け!」
「ほう。そこの若い貴様が。ここまでの指揮は誉めてやろう。だがその細腕で、指揮棒は振れても剣は振れるのかな? フハハ。おら、抜いてみろ小僧!」
 龍騎士が一直線に向かってくる。
「ぬうう。龍雷の隊員を侮辱することは許さん! このファルコンが相手だ!」
「ファルコンさん!」
「雑魚はどいていろ」龍騎士の剣が勢いよく振り下ろされる。
「許さん! ファルコン参る!」
「ああっファルコンさん!」
 防衛線が後退すると、空中の部隊が押し寄せてくる。敵指揮官である龍騎士もう一体も勿論健在で、空中から指揮を振るっていた。
「クハハァ。地上の方は逆転したかな?
 クハハ、しかし私の相手はおらんのか? つまらぬ!」
 龍騎士は、単身で市街地の上空にまで飛来し、挑発してみせた。恐れ、おののく市民たち。
「クハハァ。おい、教導団の指揮官よ、出てまいらぬかっ! 私と勝負せよ。恐いか? クハハハ……」
 龍騎士は目をギロギロとさせ、標的を探すように港の尖塔付近をウロチョロと旋回する。
「クレア様、やつ、このようなところまで……! あんなことを言っておりますぞ」
「馬鹿な。そんなもの受けるか。ただの増援の龍騎士ふぜいに一騎打ちを挑まれて、司令官のこの私が乗る必要があるまい!
 エイミー、空戦戦力の投入はどうなっている!?」
 クレアは部下のエイミーと共に塔の下部を見る。
 教導団艦隊、それにレブサのクィクモ艦隊が港から空へと上がるところだ。
「む。クィクモの艦隊が、ようやくおでましか。あのような旧式の艦で我ら龍騎士団を打ち破ろうとは笑える。
 仕方ない。あれを最初の獲物にしてやろうか。クハハァッ」
 龍騎士はそれに向かっていくが、
「ムウッ、あれは何だ」
 クィクモの艦隊に混じって、一機。
「ムオオ。教導団め、イコンを出したかァ! おのれッ!」
 松平岩造の、『龍皇一式』だ。
「ま、松平っ。市街地から引き離して戦うのだっ」
 クレアら本営陣が、塔の上部から危なっかしそうに見守る。
 松平は、イコンを一気に市外へと飛ばし、龍騎兵らの中へ突出すると早速蹴散らしにかかった。
「ム、ウヌウウ、私を無視するか!!」
 龍騎士もそれを追って市外へ出る。難を逃れた本営はひとまずはほっとし、そのままイコンの戦闘を見守るのであった。
「いざ決戦だ。イコンの力と龍雷連隊の力を今こそ帝国軍に見せてやるぞ、最後まで戦い抜くぞ!!」
 さて我らが『龍皇一式』。メインパイロットは【龍雷連隊】隊長・松平 岩造(まつだいら・がんぞう)少尉。嫁であるサブパイロットのフェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)の補助を得て、攻撃・防御から回避までの操作を行う。
「岩造!」「むう」
 フェイトが次々、周囲を飛ぶ飛龍の翼や尻尾に素早く照準を合わす。松平はすかさずハンドガンを撃ち込む。イコン用ナックルをお見舞いする。
「岩造! 次の段階よ」「むむ」
 周囲の龍騎兵らはイコンの動きを警戒し距離を取った。松平はコロージョン・グレネードを龍騎兵の一群に投げつける。「ギャッ!」それが、一体の飛龍の頭に命中した。すると松平は斬龍刀をもって一気に斬り込み、地上の方へ追いやった。
「よし。レイヴ今だ……む、むう?!」
 松平は地上部隊に連携の指示を出すが、地上は予想外の混戦模様である。
「レイヴ! どこだ。ファルコン……まさか?」
「岩造! あっちよ」「む、おお!」
 松平は地上で龍騎士と打ち合っているレイヴを見つけ、すぐに駆け寄った。龍騎士は松平の接近に気付き、高度を上げて交わしきる。
「貴様が大将か?! 俺は、第四師団【龍雷連隊】が隊長・松平 岩造だ!!」
「フムゥ。我こそが、龍騎士団第一増援部隊隊長のワンドナである」
 ワンドナは黒い槍を掲げ突進してくる。松平は緊急回避行動を取り、両腕を二重に重ね防御態勢を取った。龍騎士の槍は松平の機体に打撃を与えていない。
 そのとき、
「ああっ岩造!」「フェイト?! うわあ」
 真後ろからの強烈な衝撃。
「クハハァ。追いついたぜェ? 龍騎士団第二増援部隊隊長、ニルバルナ。クハハハハ」
「む、むうう……もう一体、いたのか……!」松平は、二体の龍騎士に前後を囲まれた。龍騎士団は残った半数程を地上と空中に分け牽制させている。二体は連携し何としてもまずイコンを落とさねばと読んだらしい。おそらく、相手にも余裕はない筈だ。フェイトはそう松平に告げ冷静さを保たせた。
「勝てる……龍皇一式なら……龍皇一式なら……」「岩造。フェイトを信じてください」「むうう……フェイト!」「はい! 岩造」
 予想外の二体相手に焦りながらも、松平はフェイトの指示を信じ、攻撃と防御に集中した。
「仲良く、死ねゃ!」
 二体が来る。松平は斬龍刀を構え前方のワンドナに突進した。全力でワンドナの飛龍にぶつかった後、高速機動をもって上昇。振り返ってコロージョン・グレネードをニルバルナに向かい投げつけた。「岩造! 今です!」「むう!」――「グハァァ」手榴弾はニルバルナに命中した。「岩造!」松平は、バランスを崩しているワンドナにイコン用ナックルを数発お見舞いし、斬龍刀を持つと逃げ去るニルバルナを追いとどめを刺した。
 松平とフェイトはほぼ一緒に叫んだ。
「「これが龍雷連隊と龍皇一式の力だ!」力ですわ!」
 指揮官二人をなくし色を失う敵勢をレイヴの地上部隊が追い、空中に逃げるそれを犬神の迫撃砲が襲う。教導団とクィクモの飛空艇が追撃し敵の大部を撃ち落とした。クィクモ本営は防衛に成功したのである。