リアクション
終章 戦後 コンロンにおいて長きに渡り続いてきた戦乱は、最終的にシャンバラ教導団(第四師団)とエリュシオン帝国(龍騎士団)との代理戦争に発展し、教導団が帝国軍をコンロンから退けるという形で幕を閉じた。 このコンロン動乱を少し概観してみると、元々はコンロン八軍閥(実際には八軍閥に数えられない中小勢力が混在した)の小競り合いから国土が疲弊。夜盗や死霊や種々の魔物たちといった新興勢力が力を付けて暴れ始めたことで国内の混乱は極まってきていた。そこへ目を付けたエリュシオン帝国はコンロンを属国化せんと動き始めた。同時に、シャンバラ側もまた、国外に目を向け始めた時期であり、当然政治的な意図もあって教導団を派遣したのであった。 帝国は密林の東にあった軍港・軍事基地を始点に、コンロン最東のシクニカを配下に引き入れる。中部に闊歩し情勢を窺っていた夜盗勢力に肩入れし旧首都に残存していたコンロン帝とそれを守る軍閥を排除。帝国に与さない軍閥の武力制圧を視野に入れ、各地に駐屯地を作り始めた。 一方、シャンバラ側から派遣された教導団第四師団は、貿易のあった時代に旧交のあるコンロン入口の都市クィクモに拠点を置くと共に、クィクモと交通のあったミカヅキジマに協力を得てクレセントベースを設営。これを対帝国の前線基地とした。 以下は、これまでの物語で見た通りである。 帝国にとっては、独立勢力【桐生組】によるシクニカ占拠や、クレセントベースの早急な設立やそこを前線基地とした第二の本営の発足は、終始厄介な事となりこれらを早々に潰せなかったことは敗戦の大きな原因であったと言える。 教導団においては、各勢力との交渉が上手く運び各地域で将兵が協力し合い事にあたれたこと。コンロン出兵当初は未だ、シャンバラ国内の情勢も不安定であったが、その中当初の段階で補給線を確立させ、また拠点クィクモから各所への派兵や補給も途絶えさせなかったこと等が勝利に結び付いた要因だったと言えるだろう。 「コンロン八軍閥」については、既になくなった軍閥や、軍閥として機能していないものもあり、解体される。クィクモとヒクーロは和解。クィクモやミカヅキジマは早速、シャンバラとの交易を復活させ、その中心となって動く。ヒクーロ軍閥長のヲガナは、再びコンロン帝に忠誠を誓い、クィクモの若き指導者レブサと共に、帝の近辺を警護する近衛団を率いることとなった。 しかし、コンロンの復興には未だ長い時間がかかり、兵力も設備も足りていない。疲弊し文化や政治の水準も発展していると言い難い現在のコンロンに、教導団は今後、これらの面で全面的に協力していくこととなる。こうして第四師団は、コンロンの地に残されることとなった。多くの生徒たちは、本校に戻り新たな任務に就いてゆくこととなる。 行方不明だった師団長の騎凛セイカはコンロン帝と共に見つかり、師団長の座に戻り、以降はコンロンに留まる。騎凛不在の間、ほぼ師団長の代理を務めきったと言えるクレア大尉は、騎凛が戻ると本校に帰還しその功績を称えられた。無論、同様に他の士官や部隊長ら、士官候補生らも各々の任務によって多少前後し本校に戻り功績に見合う賞与を受けている。一部には、その後も第四師団の所属としてコンロンに残った将兵もあったという。 コンロンにおける教導団の在り方については、今回の参謀長を務めた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)中尉(後に大尉)がその理念を築き実際の統治の基盤を作り上げることとなった。戦部は、暫くこの地に残り、実際にその手腕を振るったのであった。 リース・バーロット(りーす・ばーろっと)は、戦部を色々と癒してあげたい気持ちも山々ではあったが、戦が一段落した後のコンロン国樹立のための各地方の長に帝を交えた会議を開催するため、その主旨と会議開催の書簡を各有力者へ向けて送り、根回しを用い下準備を行った。主旨とは、コンロンはコンロンの人間が統治する、というものである。 コンロンにおける各地の戦乱の終息には実際には一ヶ月程度の前後があったが、それが全て終息し落ち着くと、会議開催への準備は整っていった。帝はその間、クィクモにて保護された。 戦部参謀長が議会の中で示した青写真は、帝を頂点(象徴)として、各地方の長の合議で物事を決定する立憲君主制に近い形である。 「恐らく地方有力者としては、いきなりコンロン帝を持ってこられてコイツに従えと言っても許せる物ではありませんし、かと言って帝を放置すれば、彼を担いでもう一騒乱起こす輩がでてきかねない……。 そうなると元も子もありませんので、三方一両損ではないが、地方領主の権益を認めつつ、帝の地位も保障する形が現状ではベストかなぁと。そう私は思います」 我々――教導団は、コンロンでの権利を放棄する代わりに友好国(ある意味コンロン全域)を得る、と。 戦部の願いは一貫して、教導団(シャンバラ)としては、帝を用いてコンロンを影から支配するものではないということ、貴方達の責任できちんと民が幸せになるようにやって下さいというものであり、その願いは彼の描いた青写真に現れ、コンロンもシャンバラと今後交流を再開し長く手を取り合ってゆきたいと思うものとなった。 そして、力をもって支配しようとする帝国に対しては、共に戦うという姿勢を内外にアピール出来たらなぁという願いもまた、シャンバラとコンロンとが共に掲げることとなった。 コンロンのその後については、実際、帝を頂点としてコンロンが国家として纏まるという形が実現していった。コンロンがひと通りの安定を見せ、復興も軌道に乗り各地方に新しい風が吹く頃までは、事は無事進むこととなる。しかしそこには勿論、新たな波乱の種が運ばれることともなり、芽を吹く土壌もまた……コンロンは、新たな賑わいと発展をどのような形で見せていくことになるのか。 この他に、今回の戦いで教導団にイコンやそのパイロットを派遣した天御柱学院や物資を中心に提供した葦原明倫館は、教導団に準じコンロン各地の警備や防備に引き続き協力をする。生徒の交流や契約から、西王母のあるユーレミカには、イルミンスールの分校、それに空京大学の研究施設が作られることとなった。未だ謎の多い世界樹「西王母」の研究やそれを狙う者等からの警備、また、新たな冒険もここから始まるかも知れない。また、こちらも生徒の私的な交流からであるが、長の心を打った為かヒクーロには薔薇の学舎の姉妹校(兄弟校?)が設立され、タシガンとの行き来が自由になった。ここにも独自の文化が生まれることとなる。 シクニカについては、章中においても簡潔に触れたが、その仔細についてはコンロン内外の種々議論を呼んだ。戦部小次郎はこの問題についてもシャンバラ側の代表として知恵を絞りコンロンに提言を与えている。パートナーのアンジェラ・クリューガー(あんじぇら・くりゅーがー)はこの為に、使者としてコンロンとシャンバラ間を幾度となく行き来した。 実際には【桐生組】はコンロン戦後も、一部民衆の根強い支持を受けるオリヴィアを担いでシクニカを統治したのであるが……それが例え善政と支持されるものであれ、 「理由をどうこう言っても、」戦部は発言する。「我々、シャンバラの人間が支配階級についてしまっては、実質コンロンへの侵略と言われても反論できなくなってしまう。そういうふうに見る者たちも、実際にいるわけです。だから、それだけは絶対に避けなければいけない。そのため、帝国との戦が終わった今、支配権を一切放棄して去らなければ、身内の恥として討伐せざるを得ない旨をシクニカ、本校、白百合、シャンバラ政府に通告し、受け入れられない場合は討伐を実行に移すべきです。この件については一切妥協はなりません」――コンロンはコンロンの人間の物なので。戦部はそう、言い終える。 「はい。戦部さん……」戦部はそうして政治に関し見通しの甘い騎凛を補佐し実際には彼が皆裏で内外の事を動かした。 最終的には、戦部の提言通りの通達が、本校、百合園、政府らの協議によって下されることになった次第である。 シクニカの領地自体は、コンロン帝の領地すなわちコンロンの国土となり領主は、シクニカの豪族から選ばれた。他国の個人による支配が認められないのは政治的見地から致し方ないにしても、シクニカの領主と民としては、可能であれば百合園女学院と蒼空学園との親交を今後是非結んでいきたいとの意向を示した。 外部との交流を断っていたボーローキョー、コンロン山、ユーレミカ等も各地域やシャンバラの交流を開き、観光や、新たな冒険の舞台となるであろう。 ミカヅキジマは教導団の基地クレセントベースの更なる発展を目指す。更に、ここと海路を軸に線で結ばれることになった旧エリュシオン軍港と軍事基地一帯。ここが新たに、対エリュシオンの最前線となると共に、ここを中心として海軍の版図が拡げられていくこととなる。その主導者には、海軍を担ってきた若き将校であるローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が選ばれている。 「ふふ。これからが海軍の時代よ!」 国軍昇格の暁には、陸軍とは分離独立し海軍として自立した組織を。それは現実となりつつあった。 「玖朔? また、宜しくね」 霧島玖朔(きりしま・くざく)は、意味深な笑みを浮かべた「フヒヒヒ!」。 一方で、外部の勢力として教導団に協力してきた、とくにヒラニプラ南部の勢力たちは、もとの場所へと帰っていく。鴉賊や、とびねこ・みずねこなどのねこ賊、湖賊らだ。「夢見。あんたも士官なんだ。これからは、教導団の為、しっかりね。刀真、いつでも遊びにおいでよ」「お頭ぁ。帰っちゃうんだ。グスン……でも、楽しかったよ。またね!」「シェルダメルダ。勿論、いつでも……」 「ミューレリア。楽しかったにゃあ。また助けろにゃ(?)」「レジーヌ、また飛ぼうにゃ」 教導団の部隊では、これまでも肩を並べてきた【ノイエ・シュテルン】と【鋼鉄の獅子】が安定した戦いぶりで一層の躍進を見せた。これからは国軍となり、装備や戦い方も変わってくるだろうが…… それから【鋼鉄の獅子】はある隊員と帝との密かなやり取りの結果、思わぬ立場を得ることになった。【鋼鉄の獅子】はコンロン帝の直々の願いを受け、ヒクーロやクィクモらコンロンの重鎮と並び、帝の近衛団の一角をなすこととなったのである。 【龍雷連隊】は上記二部隊不在の本営を守りきる善戦ぶりを見せ、それとは別に本営との諍いは多少あったものの、部隊としては安定してきたことを示した。【黒豹】の部隊も小隊から大隊規模になり、各部隊いよいよ実際に部隊と呼べる規模の兵を有した。【騎狼部隊】もこれまでを支えてきた一条少尉や林田少尉に、イレブンも戻り、更に騎兵科の助教となった源 鉄心も協力している。第四師団独自の部隊だった【騎狼部隊】は、師団の残るコンロンにおいても名を馳せコンロンの地においても発展していくこととなる。火力や重兵器が重視されてきたことで、新たな部隊編成も出来てくることだろう…… * コンロンのボーローキョーの一角。 コンロンの闇の中に、様々な亡霊の光がゆらめいている。花々のように。 そこに、白い花が現れる。それは、本物の花だ。 「コンロンにもやがて、このような明るい花が咲き誇るようになればいいですね」 廃墟の教会から白い花の束を抱え、並んで歩いてくるのは、ウェディングドレス姿の、騎凛 セイカ(きりん・せいか)と、それにやはりウェディングドレス姿の、朝霧 垂(あさぎり・しづり)の二人である。 「セイカ。夢じゃない、んだよな?」 「ははは……結婚式、あげちゃいました。よかったのかな?」 セイカは転んで廃墟の階段からおっこちそうになった。垂が抱きとめる。 「いっ痛。夢じゃありません。私は夢も好きだけど……」 「じゃあ」 「よーし!」 ぶーけとす、だ。 教会の前には、多くはないけど、任務の合い間に訪れた、騎凛の同僚、沙鈴(しゃ・りん)や、秘書としてまだコンロンに残っている千代や、それに軍師マリー等が集まっている。「わたくしも、そろそろ……」「そうですね!(千代、とても強調。)」「ふふり。ふふり」。ウェディングブーケを必ずゲットしようと恋人のパートナーを引きずってきた城紅月が走り回っている。 「いきます。えいっ 私からのお願い。シナリオ参加者の皆さん、シナリオの外ではけんかしないで仲良くしてください!」 コンロンの常夜の空に、白い花束が舞う。 * ああ。皆さん。あんなに、花を……花が、ばらばらになってしまいました。 やはり、これからも戦乱は続くのでしょうか。何も見えない闇夜になってしまいました……ああ、闇夜といえばどうするのですか? ……初夜は。女同士だし? えっ。そういう展開を期待するのなら、ですって。あっああ 緊張するな…… …… えっ。まだあるのか……ああ、まあ最後だからか。 「ふっ。つらいものだね、男は」 結婚式に一応参列し、二人を祝ったけど、ちょっとトボトボ帰った久多隆光(くた・たかみつ)。 「だけど俺は……」 セイカをより大事に想っている誰かに、セイカの傍にいてあげられるその人に、託すべきだ。俺は諦めるようにする。そう久多は…… 「ううっ……二年以上に及ぶ片想いだったなあ。だけどこれも、俺にとっての試練さ。ふっ えっセイカ……?」 騎凛セイカの姿が暗闇に浮かぶ。裸だ。妄想か。これは。 「久多さん。久多さんのこと、なんだか忘れられないな。私…… 久多さん、だってあんなに、それにずっと私のことを……最初はただのナンパかと思ったけど。教導団にまで転校なさって……もしかして、と……」 「違う。俺は……」 「あ、ああ、ごめんなさ……私、思いあがったこと……」 「いや。……それも少しは、あったが……?」 コンロンの真っ暗闇。だけどここは夢の中ではない筈だ。セイカは今頃、垂と初夜……の筈じゃないのか。どういうことだ。ここは夢の中では…… 「久多さん。私は、本当は……」 「えっ。まさか」 「ふしだらな女なんです。だから……」 「えっ。ええ〜、ああ、あの、セイカ……」…… * 翌日。 昼過ぎまで、ぐっすり寝過ごしてしまった騎凛セイカ。 垂は、朝からメイドの仕事に忙しく出ていっているし、結婚式に来た皆も、任務に忙しいので皆もう帰ったりそれぞれの部署に行っている。 「ああ。寝過ごしてしまいました。昨夜あんなに…………あっ」 ――カ、カナリーさん。 目の前に、カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)だ。 「きりんちゃん。カナリーちゃんのこと忘れていたみたいだね。 カナリーちゃんだって、久多同様、騎凛セイカの最初の恋人候補だったんだけど? でもべたべたしないでちゃんと真面目に任務をこなしていて忙しかったんだけど?」 「ごっ、ごめんなさい……」 おしおきだよっ 「ハァァァァ!!」 魔リー・ランカスターも現れた。カナリーと前後から騎凛セイカをがっちり捕捉。 「さて、朝霧さんも久多さんもいない間に」 「昼下がりの【夜の憲兵総監】行きでありますぞ! ハァァァァァ!!」 「きゃぁぁぁー」 ふう。どうしよう。 また、旅にでも出ようかしら。 しずりと? 辺境に旅に出た日を思い出しますね。今度は、二人っきりかな。ナギナタ、もたずに。新婚旅行……ですね。ふふ。 でも。 「騎凛師団長にもそろそろ師団長らしく……か。 そうですね。しばらくは。 このコンロンの情勢が安定するまでは(って私にできることあるのかしら。それよりも何かとんでもない陰謀にでも巻き込まれたりして。ああ、どきどきしちゃう)。 皆、今まで、第四師団の任務、本当にお疲れ様でした。 コンロンは、国家としてしっかりまとまるまでシャンバラと協力体制を取り、私たち第四師団が復興や警備に従事していきます。私が師団長としてしっかり、見守ります。 ありがとう。皆。これからは、国軍としての自覚を持ち、軍人として(私がいうのもだけど)、しっかりシャンバラのために戦ってくださいね。 おわり。」 担当マスターより▼担当マスター 今唯ケンタロウ ▼マスターコメント
皆様お待たせ致しました。(結局最終回までこの台詞付きに……、) |
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