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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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開かれる世界 〜終わりのはじまり〜
 
「汝、ジークフリート。西王母が選んだのはお前だ」
「ふ……ふ、ふははははははははは」
 世界樹の試練の結果は――軍閥長らしい威厳ある男の声で告げられた。
 
 世界樹から、試練を終えた者たちが出てくる。
「次会ったときはお前ら、全員皆殺しにしてやるからな!」
 メニエスらは牙を剥き出しにして、ユーレミカを去っていく。
 マリーは教導団の兵に命じ、ブルタを捕らえようとするが瞬く間、ブルタは樹海の彼方に姿を消していた。
 
「――だが、契約者ではない。西王母は永き眠りより目覚めたばかり。
 永久のパートナーではなく、今を、世界を知るために――ユーレミカをコンロンを守るための友としてお前を選んだ」
 驚く者たちに軍閥長は続けて説明する。
「……我々もお前達を認めねばなるまい」
 
 軍閥長はその後に続けて、わしもそなたらの思いをしかと聞いたと言い、是非、必要な力である。協力し、共に世界樹のことを見てほしいと、祥子の手を取り述べた。同じく、ナインにも「そなたは世界樹の気に行ったようである」と同様に是非と述べるが、ナインはまだ試練のイマージュが後を引いているのか、
「ちょ、まっぴらごめんだって言ったじゃない!」
「ギャッ!」
 長の手を引っぱたく。
「こ、これナイン! な、何を無礼なことをするであります」するとすぐにマリーが出張ってきて、ナインのいけない手! と言って引っぱたき長に詫びた。
「さ、さあさ、ズキーン殿。非礼すみませぬ、わてはこのナインの保護者。教導団皆の保護者マリーでありますぞ。何と。ウム。ウム。無論でありますぞ。教導団も共に、世界樹のことを見ていこうぞでありますぞ。末永く、宜しくでありますぞ」
 マリーは長ズキーンにちゅーとした。
 世界樹の庇護者にはジークフリートが選ばれた。そして、祥子との関係から世界樹研究のための空京大学第二キャンパスがこの地に作られる。教導団は、他の地域同様、ユーレミカにも兵を回し復興に協力していく。
 
 
 そして――
 マリーは、この地の指揮官の権限としてグロリアとそのパートナー二人に処分を申し渡していた。
「グロリア・クレイン。任務中に捕虜ブルタを逃がした理由。わては知っているであります」
 軍師の言葉にレイラとアンジェリカは顔を見合わせる。
 まさか、グロリアの内に潜む奈落人の存在を見抜かれていたのか、と。
 が、しかし。
 そうではなかった。 
「それは恋。捕虜に心奪われ、道らならぬ恋に走るとは――」
 マリーの明々後日を向いた言葉に二人は雪の上へと倒れ伏した。
「撲殺の先生――今日は撲殺ではなく投げでお願いするであります」
 はぁいと元気の良い返事がして、倒れた三人をひょいと抱えあげる。
「?!」
「ちょ、ちょっと、マ、マリーさん?! グロリアは反省しているんですよ?!」
 レイラも喋る代わりにフリップボードに走り書く。
「――ええ。援護は助かりました。ですが、それはそれ。これはこれ。しばらく頭を冷やすであります」
 どっせい――という掛け声とに合わせてグロリアたち三人――いや四人はユーレミカの空へと消えていった。
「「「いやぁぁぁぁぁー!!」」」
 
 ユーレミカには風が吹く。それは新しい風だ。
 
 新たな施設が作られ、シャンバラから世界樹の調査団が送り込まれてくるだろう。
 それとは別に旅の疲れを癒すために温泉を探す少女がいるかしれない。
 また、教導団はコンロンのいくつかの地域に友好的に迎えられる。
 ユーレミカには親愛の証として服を交換することと氷に甘い蜜をかけた冷菓が流行るかもしれない。
 復興が始められた交易路には見事に土地の歌を歌い上げる歌姫。
 ながねこととびねこを従えて、土地の作物を調査するはにかみやの娘の姿があるはすだ。
 
 帰りの道を進みながら、若い兵士は報告書に何を書こうか思案する。
 
 何かが終わって、何かがはじまる。
 今、はじめて、コンロンの地にシャンバラの足跡が刻まれたのだ。