リアクション
終章
海京北地区。
深夜の沿岸部を、海京警察が巡回していた。船舶に乗った密航者が、深夜のうちに海京入りすることを防ぐためだ。
メガフロートである海京へ来るには、船か飛行機しかない。
普通に考えれば。
「おい、何かいるぞ」
海水が揺れたのが見えたため、懐中電灯の光を向けた。
「……気のせいか」
そう漏らした瞬間。水の中から人が飛び出してきた。スポーツバックを持った、全裸の女性――いや、十七、八くらいの少女だろうか。
「とうちゃーく」
この冬の海を、日本から泳いできたとでもいうのか。
あり得ないことではない、特に契約者であれば。
正規のルートで来たわけではないため、二人の警官がすぐに取り押さえようとした。二人は、パートナー契約を交わした契約者である。
「遅いヨ」
取り押さえるどころか、一発で沈められた。
「おやすみ、警官さん」
周囲に、他に人はいない。
防水加工が施されたバッグの中から、着替えを取り出す。チャイナドレスだ。それを纏い、バッグを海へと放り投げた。
ただ妖しい微笑みを浮かべ、少女は夜の闇へと消えていった。