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燃えよマナミン!(第3回/全3回)

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燃えよマナミン!(第3回/全3回)

リアクション


【3】燃えよマナミン!……3


「……なるほど、ローター攻めは初体験だったと見える」
 毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)は言った。
 大佐はぱきぽきと拳を鳴らし決闘に加わる。少しでもダメージの残っている今が好機なのには間違いない。
「秘孔は確か、胸に2つと尻に1つだったか。B地区とはまったく卑猥だな……」
「違ぇ!!」
 ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)は声を荒げた。
「胸に1つ、尻に2つだろうが。胸に2つもあったら、俺様どれほど幸せだったか……!」
 純粋なおっぱい野郎のゲブーは唇を噛み締めてふるふる震えた。
「ああ、尻は1つか、危うく浣腸しにいってしまう所だった」
「おいおい、あんまり卑猥な事すんじゃねぇよ! 節度ってもんが大事だぜぇー! がははははー!!」
 人は自分のことほどよく見えぬものである。
「ともあれ、どうせお前の狙いは胸だけだろう? 私は尻と太もも派だから胸の方は譲るよ」
「おお、よくわかってんじゃねぇか!!」
 コンと互いの拳を合わせ交渉成立、無事持ち場が決まった……かに見えた。
 だがしかし、覇王のAカップをガン見する隣りで、もうひとりガン見する人物がいることに気が付いた。
 そう、布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)である。
「そ、そのおっぱいへの羨望の眼差し……。てめぇまさか、俺様のおっぱいを狙ってるんじゃねぇだろうな……?」
「え、まさかあなたも?」
「当たり前だろーが! おっぱいが揉めるなら、親が危篤でも駆けつけちまう俺様だぜぇー!」
「ちょ、ちょっと待って、そんなことしたらあなたの社会的立場が……」
社会的地位なんぞ、元からねぇーぜぇ! がはははー!」
……う、うん、その感じは見た目から漂ってた
「大体、てめぇ。お前自身、おっぱいの癖して、なんでAカップ覇王おっぱいを狙ってやがる?」
「!?」
「自分の揉んで我慢しとけ。もしくは俺様に揉ませろ。なに、悪いようにはしねぇ」
揉ませません!
 しかしそうなのだ。このおっぱいを狙う佳奈子の態度はどうにも不自然なのだ。
 なにせ彼女はドノーマルな性癖の持ち主。女子のぱいぱいを狙う理由はない。
 だが今の彼女は、社会的に抹殺されてもマリエルの胸の秘孔を突きたい気持ちでいっぱいだった。
……だって、サンプルアクションのまま投稿しちゃったんだもん
 どのアクションかは言うまでもないが、完全に彼女の人格と齟齬を引き起こすアクションである。
「けど投稿しちゃったからにはやるしかないんだから。あなたはマリエルの注意を引いて適当に屠られといて!」
「はぁ! ふざけんな! てめぇが屠られとけ!」
「前回、指折られたんでしょ。大人しくしときなさいよ」
「馬鹿か、人差し指が折れようと、俺様にはまだたくさん指があるんだぜぇ!」
「あ、待ちなさいっ!」
 ガスガス肘でド突き合いながら、2人はマリエルに迫った。
「そぉれ! がははは、突き突き突き突き突き突きーーーーっ!!!」
「マリエルさん、ごめん。全然こんなことしたくないんだけど、サンプルが! サンプルがあれだったから!」
「……ふん、そんなまとまりのない連携で覇王の前に立つか。見くびるな、雑草ども」
 覇王の鉄拳が一閃、ゲブーの左手の人差し指をバキッと折った。
「あがーーっ!!」
 だがこれしきでみすみす目の前のおっぱいを逃す彼ではない。
 別の指を代わりに突き出し、尚も「突き突き突きーっ!!」と激しく攻め立てた。
 がしかし、またもマリエルは指をただの一撃で根元からへし折る。
「ごわーーっ!!」
 中指を出せば折られ、薬指を出せば折られ、小指を出しても勿論折られ、ついには全ての指がイッてしまった。
 それから今度は佳奈子の指も容赦なく叩き折る。
「きゃああっ!!」
 男だろうが女だろうが、覇王の前では全てが平等。共に厳しく屠られる存在なのだ。
 指を折られると言う地味な激痛に悶絶する2人は、次の瞬間、全力で放たれた拳に天高く飛ばされた。
「は、早すぎるぞ!」
 背後からお尻を狙っていた大佐は、あまりにも早い2人の退場に狼狽した。
「貴様にも覇王の拳をくれてやる!」
 マリエルは拳を振り上げた。
 とその時だった。天高く打ち上げられた2人が大佐の前に落ちて来たのだ。
「お前たちの尊い犠牲は無駄にはしない」
 大佐は迷う事無く2人を空蝉で盾に。
 くちゃくちゃになって、彼女の横を吹っ飛んでいく彼らを尻目に、大佐は剛拳の直撃を避けた。
「……だが、このままでは同時攻撃が出来ない。どうする……」
「臆するな、同志よ!」
 セーラー服は紳士の証、服を置き去りにする男、天空寺 鬼羅(てんくうじ・きら)が戦いに加わった。
「てめぇが覇王なら、オレは裸王! てめぇが倒れるのが先か、オレが倒れるのが先か、勝負だーっ!!」
 無論、繰り出す技はただひとつ、万勇拳奥義『瞬極脱』
 マフラーを脱ぎ去りながら、まずは牽制の一撃をマリエルに放つ。
「この技は……!」
「くくく、マリエルよ。本当に自分が覇王だと言うならこのオレの技……この瞬極脱を使えるかな!」
「なにぃ?」
「出来ねぇとは言わせねぇ、なんたって覇王なんだろう!」
 鬼羅はマリエルを挑発していた。
 秘孔を突くためには、正確な位置を掴む必要がある。そのためにはどうにかマリエルの服を脱がさねば。
 しかし、覇王と言えど、この阿呆な挑発には乗ってこなかった。
「雑魚の技など真似る必要なし。覇道を往くのは我ひとり。砕けよ」
 渾身の覇道轟衝波が、真正面から鬼羅に叩き込まれた。
「うおおおおおおっ!!」
 刹那、鬼羅は脱いだ服を拳に絡め、直撃から軌道を逸らした。
 神業的な反応速度だったが、すれすれをかすめる轟衝波の拳圧は、彼の衣服をバリバリに引き裂いてしまった。
「!?」
「ふははははっ、服が無ければ何も出来まい! 勝負あったな、裸王とやら!」
「……それはどうかな?」
 逆境に立たされ、鬼羅の闘志はより激しく燃え上がった。
「オレの身体には染み付いてる! 修行で何度となく脱ぎ捨てたセーラーの、タイツの、パンツの、その感覚が!」
「……なんだ、この気迫は。気迫で大気が震えているだと……!」
「燃え上がれ、オレのイマジネーション! 見せてくれ、オレのセーラー服!」
 鬼羅の気が爆発する。
真空(エア)……瞬極脱!!
 あたかもそこに服が存在するようにセーラーを、タイツを、そしてパンツを脱ぎ去り、激しい連撃を繰り出した。
「我は負けぬ!!」
 対する彼女も高速の百烈突きで反撃、激しい突きの応酬が互いの技を相殺し合う。
「大佐ァ! 手が足りねぇ! 力を貸してくれ……って、オイ!」
 ふと見れば、大佐は覇王の尻をペタペタと撫で回し、自身の趣味を満たしていた。
「何してやがる!」
「何って、こっちはもう尻に到達したのでな。お前が胸の秘孔に迫るまで待機中だ」
「阿呆か! 手ぇ貸せ!!」
 刹那、動揺が技に陰りを生んだ。
「がはっ!!」
 腹に突き刺さった一撃に、鬼羅の意識が遠のいた。
「我が拳は天とひとつ! 天に昇れ、我が闘気! 覇道拳最大奥義『百勝激烈』!!」
 マリエルの人智を超えた闘気が、光の柱となって、大地から天に噴き上がった。
「うわああああああ!!」
「のわあああああああっ!!」
 気功波は道場の屋根を突き破り、傍にいた2人を飲み込んだまま、曇天の空へと消えていった。