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インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)
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【5】 G【2】


「……鍵が開きました」
 エルノ・リンドホルム(えるの・りんどほるむ)が解錠すると、『謎の武器開発室』の自動扉がゆっくりと開いた。
 部屋の中は真っ暗闇。風紀委員の高峯 秋(たかみね・しゅう)が光精の指輪を掲げると、飛び出した光精が空間の輪郭を浮き彫りにした。
 天井はとても高く。様々なイコン用重火器の類いがクレーンでぶら下がっている。この天井の高さを見るに、このフロアは大分地下にあるのだろう。
「なんで普通科なんだろう……」
 秋はポツリと漏らした。
「大文字先生は元々整備科の人だし……。んーもしかして、これから普通科でなにか起こるってことなのかな? 普通科が新しい科に生まれ変わっちゃうとか……?」
「学院の上層部が考えている事はわからないけど……。でも、心配はいらないわ。もし先生が妙な真似をする気なら、風紀委員である私が取り締まるから、風紀委員である私がね」
 葛葉 杏(くずのは・あん)は、風紀委員に力を込めて言った。
「ああ、うん。そうだね……(俺も風紀委員だけど……)」
「それにしても凄いわね、この武器と弾薬の山」
 通路の横に、と言うか、ここが通路なのか、資材を置いていって結果的に空いた隙間が通路になったのか、どちらが正解かはわからないが、塔のように弾薬箱が積まれ、見たこともない武器が立てかけられている。
「きっと新型の武器なのでしょうね」
 エルノは隠していたデジタルビデオカメラを物質化させ、部屋の記録を撮り始めた。
「良いわね、こういう火力が有りそうな武器。私はこういう威力がありそうな武器が好きなのよ」
 雄々しくそびえる砲身に、杏は満足げだ。
「私のイコン用に一門くれないかしらね。こういう一撃の破壊力の有る兵器は重火力、重武装のコームラント型が使わないとね」
「杏さん、新装備の品評会に来たんじゃないですよぉ〜」
 目を輝かせ始めた杏を、橘 早苗(たちばな・さなえ)は注意した。
「……む、わかってるわ。でも、いいじゃない。調査するついでに、自分のイコンに使えそうな装備を見繕うぐらい」
「それはまぁ、いいかもしれませんけどぉ……」
「そして風紀委員として大文字先生にこの部屋の事を尋ねるついでに、武器を分けてもらえないかおねだりしてもいいじゃないの!」
「それは違うと思いますよぉ!」
 そんな注意を右から左に。杏は気に入った砲身をぺたぺた触った。
「これ、いいなぁ。見てこの大きさと太さ。すんごい黒光りしてる。たぶんコームラントの大型キャノンの3倍ぐらいはあるわ。これは相当な火力が期待出来るはずよ」
「確かに、こんなもの食らったらひとたまりも無さそうですね……あ、”収束熱線砲”って書いてありますね」
「無骨でいい名前ね。気に入ったわ」
「……ん、パーツ231とも書いてあります。三番パイプって……」
「え、パイプ? これが砲身じゃないの?」
 砲身らしきものには確かにチョークで231と殴り書きがされていた。
「と言う事は少なくともこれにあと230はパーツが付くってことよね」
「みたいですね……。この大きさで一部品でしかないなんて」
「……たぶんこれはイコン用の装備ではないんじゃないかしら。きっと海京防衛用の巨大砲台かなんかを作ってるのよ。これより大きい装備なんてイコンじゃ装備出来ないわ。壊れちゃう」
「そうですねぇ」
「もっと実用的なものはないのかしら……あ、これ!」
「今度はなんです?」
 巨大な弾薬が通路の横に並んでいる。
 おそらくイコン用のもの……だと思うのだが、それにしても巨大だ。何せ、弾薬がイコンぐらいの大きさだ。
 弾薬には”時空断裂弾(試作品)”と書かれている。
「”時空断裂弾”だって、これは凄いんじゃない」
「ど、どうなっちゃうんですか、こんなもの発射したら」
「時空断裂……と言うからには、もう装甲の厚さとかバリアの強力さとかは無視出来ちゃう武器なんでしょうね。空間ごと破壊してダメージを与える的な。凄いわ」
「……でも、これもおっきくないですか? 口径がイコンぐらいあるんじゃ、イコンで扱える装備じゃないですよ?」
「……確かに」
 杏は顔をしかめた。
「何よ、もう。デカけりゃいいってもんじゃないのよ! イコンでも扱える武器はどこなの!」
「あ、待ってくださいぃ〜」

「……じゃ向こうは杏に任せて、俺たちはこっちを調べようか」
 更に奥に進むと、分解途中のイコンライフルや、積み重なった金属板の間に、ぽっかりと作業用のコンピュータールームが見つかった。
 と言っても壁も仕切りもなく、無造作に20台近くのPCが置かれているだけだ。
 太いケーブルが無数にPCから伸びて、部屋のどこかに繋がっている。おそらくこのPCでここの装置を動かして、作業を行っているのだろう。
「何か見えるといいんだけど……」
 秋はサイコメトリをかけてみた。けれども、特に何も見えなかった。
「うーん、駄目か」
 秋たちにとっては気になる場所だが、ここを使っている人間たちにとっては、特別な場所ではないのだろう。
 カーリン・リンドホルム(かーりん・りんどほるむ)はPCを起動した。
「まぁ中を調べてみましょう。この間、プラントで見たあの謎の動力部、あれに関係するものが出てくるんじゃないかしら」
 PCの中には”イコン関係の武装”に関する資料や企画が大量に収められていた。
「うーん、イコンの設計図はここじゃないみたいね。あっちの設定資料室かな、じゃあ」
「何か気になるものはあるかい?」
「ほとんどが武器の資料だけど……気になるものはあるわ。面白そうな武器のアイディアは頂いちゃいましょうか」
「それ、盗作って言うんだよ、ねーちゃん……」
「あ、これなんてどう?」
 画面に”ビッグバン・ボム”が現れた。
 究極の殲滅爆弾。爆弾内部を、機晶タキオンエネルギー制御回路を中心に、機晶爆弾を最大誘爆を引き起こす形に配置。これにより機晶爆弾の威力を400倍に増幅させ、絶大な破壊力を生み出している。その威力は想像を絶し、ぶっちゃけ一都市丸ごと消し飛ばすぐらいの威力はある。
 正直、兵器としてはオーバーキルにもほどがあるのだが、そこは大文字も自覚しているらしくて、コメント欄に『でもとにかくすげぇ威力の武器を作ってみたくて……』と魅惑に負けて図面を引いてしまった事を告白していた。
 またこんな事も言っている。
『少し不安なのが、機晶タキオンエネルギーと言う未知のエネルギーに依存している点。正直、現段階でどこまで扱えるエネルギーがわからんので、変なタイミング勝手に爆発しちゃうかも。まぁでもそれ以外は、ぶっちゃけ完璧』
「全っ然、完璧じゃないよ! 恐過ぎるよ!」
 秋は画面に突っ込んだ。
「えー、そう? 男の子の夢が詰まった武器で、秋ちゃんも好きかなって思ったんだけど」
「自爆願望はないから! と言うか、なんだよ機晶タキオンエネルギーって!」
「うーん、じゃあもっとちょうどいい威力の武器がいいかな。これは?」
 画面に”収束熱線砲”が現れた。
 通常のビーム兵器の5倍以上の威力を持つ長距離用武装。理論上、第2世代機の装甲なら一撃で融解させる事が可能。
 高威力だが、チャージに時間を要するため、命中精度に難点がある。改善にはホーミング機能などを検討、とのこと。
「さっき杏ちゃんが物欲しそうに見つめてた奴ね」
 遠くのほうで「誰が欲求不満なのよ!」と声が上がった。
「この武器って……」
「ん、どうかした?」
「考え過ぎかな……、あのプラントを焼き尽くした熱線兵器に似てるような気がするんだけど」
「ああ。例のガーディアンとか言う巨大兵器の武装に、そう言う熱線砲が確認されたって報告にあったわね。名前は……”メギドファイア”だっけ?」
「それによく似ている気がするんだけど……、ううん、気のせいだよね」
「スペックを見る限り、威力は報告書にあったものと同程度ね。ただ、メギドファイアにはホーミング機能なんてなかったと思う。もっとも、そんな機能があったら、全滅してたのはこっちのイコン部隊だったかもね……」