リアクション
南入り口 南入り口前には、エステル・シャンフロウとニルス・マイトナーを乗せた中型飛空艇のシャトルと、護衛部隊を乗せたシャトルが降り立っていた。その他にも、パワードスーツ輸送車両などが集結している。 「敵映像が入手できたら送ってください。分析します」 レギーナ・エアハルトが、パワードスーツ隊カタフラクトを率いる三船敬一たちを送り出しつつ、白河淋に念押しした。 フィアーカーでも、魯粛子敬が、装備を調えたフィアーカー・バル隊のトマス・ファーニナルたちを送り出している。 鳴神裁は、すでに宝貝・補陀落如意羽衣を身に纏った状態でシャトルに便乗してきている。ほとんどキャットスーツなみの露出の多い宝貝・補陀落如意羽衣では、三船敬一やトマス・ファーニナルたちのような本来の重パワードスーツとはほとんど別物と言っていい軽量スーツになっている。 「編成を指示します。内部は狭いことも考えられますので、身動きの取りやすいように。それから、他の戦闘による二次被害を受けにくいようにして進みます。ソルビトールを発見したら、なるべく確保してください。ただし、状況によっては、生死は問いません。まずは、自分の身を守ってください」 エステル・シャンフロウが、一同に言い渡した。 急ぎ、突入順で小隊が形成される。 先頭は、パワードスーツ隊で、カタフラクトの三船敬一と、コンスタンティヌス・ドラガセス、テノーリオ・メイベア、ミカエラ・ウォーレンシュタットが前衛。後衛として、指揮としてのトマス・ファーニナルがフィアーカーの魯粛子敬に情報を送るように、21式装甲兵員輸送車のレギーナ・エアハルトには白河淋が情報係として位置している。 その後ろに、レン・オズワルドが斥候として生身で周囲を警戒している。同じ場所にいるカミーユ・ゴールドは武官を連れてトラップの警戒にあたる。 エステル・シャンフロウの少し前には、護衛としてエヴァルト・マルトリッツ、ロートラウト・エッカート、西表アリカ、緋王輝夜、ネームレス・ミスト、ヤンキーを手下として引き連れてポントー・カタナブレードツルギを装備した鬼頭翔、猿渡剛利、エメラダ・アンバーアイ、佐倉薫が、敵を排除するために位置している。 物部九十九を憑依させ、カミーユ・ゴールドと黒子アヴァターラマーシャルアーツを身に纏った鳴神裁もこのあたりに位置しているようだが、基本フリーダムである。 直接的な盾としては、無限大吾、セイル・ウィルテンバーグ、アーマード・レッド、桐ヶ谷煉、エヴァ・ヴォルテール、エリス・クロフォードがエステル・シャンフロウの直前にいる。 エステル・シャンフロウのそばには、ローゼンクライネとバードマン・アヴァターラ・ランスを連れたコハク・ソーロッド、秋月葵、山葉加夜たちがニルス・マイトナーと共にいる。 最後尾に、リリ・スノーウォーカーとペガサスのヴァンドールに乗ったララ・サーズデイ、ガーゴイルに乗ってクリスタルゴーレムや機械化ヒュドラやSイレイザーを連れたライラック・ヴォルテールが続く。さすがに、ペガサスやガーゴイルはかさばるので後方支援にしている。 毒島大佐は、気ままに遊撃として、姿を隠してどこかにいるようだ。 その他の者は、フリングホルニなどで待機している。 「にしても、ちょっとこれはあれですね……」 平気で待機しているレギーナ・エアハルトとは対照的に、魯粛子敬が近くに待機しているネームレス・ミストの魔瘴龍「エル・アザル」と四匹の瘴龍をチラリと見て顔を引きつらせた。 さすがのネームレス・ミストも遺跡内に魔瘴龍「エル・アザル」らを連れていくことは諦めたものの、ここに残されても、一緒にいるはめになった者たちは気が気ではない。 ★ ★ ★ 南の入り口も、西と同じように封印が破壊されていた。入り口の大きさが、人間用のエントランス的な物であることから、ソルビトール・シャンフロウがここから入っていった可能性は非常に高い。 「なんだか、空港の入り口みたい」 今回の遠征で、さんざんくぐってきた空港の入り口を思い出してライラック・ヴォルテールがつまらなそうに言った。もっと、とびきり変な物を想定していたのだが、意外と普通だ。遺跡なのに、遺跡根性がない。 先に立てた計画通り、まずはパワードスーツ隊が安全を確かめに行った。その後を、偵察隊が確認に行く。 「現在、敵と遭遇中。安全を確認しつつ前進してくれ」 レン・オズワルドが、カミーユ・ゴールドの武官に後方へと伝えてくれるように頼んだ。 中はいくつかの通路がエントランスで合流している。それらを調べるうちに、予測通り敵と遭遇した。 「機晶姫か。それにしては、奇妙な形をしているが……。鏖殺寺院か、それとも、ソルビトールの一味か?」 柱の陰に隠れて銃撃戦を繰り広げながら、三船敬一が言った。 「照会してみます」 白河淋が、敵の姿を撮影して、レギーナ・エアハルトに照会する。 『その機晶姫たちは、イレイザー・スポーンに寄生されています。彼女たちの身体に付着している結晶体が、イレイザー・スポーンです。ただし、内部まで侵食されているようですから、すでに組織が融合してしまっているでしょう。そこにいるのは、機晶姫の形をしたただのイレイザー・スポーンの操り人形です』 データを照合したレギーナ・エアハルトから、すぐに結果が返ってくる。 同じ報告は、魯粛子敬からトマス・ファーニナルたちの方にも伝えられていた。 『よく見てください。敵はすでに理性など持ってはいません。殲滅対象です』 「了解した。ここで時間を食うわけにはいかない。テノーリオ、ミカエラ。カタフラクト隊と協力して進路を切り開くぞ」 トマス・ファーニナルが、テノーリオ・メイベアとミカエラ・ウォーレンシュタットに指示を飛ばした。 「とはいえ、人の形をした敵はやりにくいな……」 「あなたはそうかもしれないけれど、私は……」 そう答えるなり、ミカエラ・ウォーレンシュタットが飛び出していった。 すかさず、白河淋とトマス・ファーニナルが援護射撃を開始する。 「やれやれ。そういうのは、俺の仕事だってえの」 遅れじとテノーリオ・メイベアが、コンスタンティヌス・ドラガセスと共に飛び出した。その後ろから、三船敬一がレーザーライフルで弾幕を張りながら追いかけてくる。 パイルバンカー・シールドで敵の銃弾を天井方向へと弾くと、ミカエラ・ウォーレンシュタット、テノーリオ・メイベア、コンスタンティヌス・ドラガセスが、パイルバンカーを敵機晶姫に撃ち込んだ。衝撃で、機晶姫の内部部品が、背中から後ろへと吹っ飛んでいく。 「手を抜かないでよ」 ミカエラ・ウォーレンシュタットが、倒れた機晶姫に寄生していたイレイザー・スポーンの結晶体を踏み砕いて止めを刺した。敵の本体は、機晶姫ではなく、この結晶体の方だ。 「クリアだ」 三船敬一が、トマス・ファーニナルにむかって合図を送る。 「了解。クリア」 トマス・ファーニナルが、離れた場所で様子をうかがっていたレン・オズワルドたちに合図を送った。 「トラップもないようだな。よし。もう一度伝令だ。エステルさんに前進してもらってくれ」 カミーユ・ゴールドが、武官に命じた。 連絡を受けたエステルたちが前進する。 「方向はこちらでいいのですか?」 エステル・シャンフロウが、ニルス・マイトナーに訊ねた。 「トマス・ファーニナル、三船敬一、山葉加夜、テノーリオ・メイベア、西表アリカらの超感覚が、一致してこちらの方向に機晶姫ではない人間の気配があると感じています。レン・オズワルド、鳴神裁、エヴァ・ヴォルテールも、深部へ進むのであればこちらだと予測しています」 同行する者たちを信じて、ニルス・マイトナーが答えた。 「ただ、何かさっきから嫌な感じがする……。そこか!」 鬼頭翔が、殺気を感じた場所へ、ポントー・カタナブレードツルギでソニックブレードを放った。 何かが砕ける音がして、物陰から少し破損した機晶ロボットが現れる。 「なんだ、横からろぼー!?」 左右を警戒していたエヴァルト・マルトリッツが、別な通路を進んでくる敵を見つけて叫んだ。屋内の作業用ロボットのようだが、イレイザー・スポーンと共に、別の戦闘用機晶ロボットか何かと融合している。 「来させるかよ!」 エヴァルト・マルトリッツが、通路自体をアブソリュート・ゼロの氷で塞いで敵を足止めした。 他の通路からも似たような敵がやってくるのを、桐ヶ谷煉と山葉加夜が同様に通路を氷づけにして足止めした。 だが、敵がその氷を削って攻撃してこようとする。 「来させないよ!」 素早く飛び出した西表アリカが、敵ロボットが氷の壁に開けた穴に一瞬で近づくと、ブレード・オブ・リコを突き立てて轟雷閃を放った。もろに雷撃を食らった機晶ロボットが、スパークをあげて活動を停止する。 「ちょ……、エステルちゃん、後ろ、後ろ!」 敵の殲滅とエステルの護衛に一同が別れるのを振り返ったロートラウト・エッカートが、あわててクライ・ハヴォックで警告を発した。 天井や物陰から、蜘蛛状の多脚ロボットが次々に現れる。ポーター用の小型ロボットのようだが、イレイザー・スポーンに寄生されて、鋭い爪と触手状の電磁鞭を持つクリーチャーに変化してしまっている。 いつの間にか、それらの敵に囲まれてしまっていた。 「来い、バードマン・アヴァターラ・ランス!」 コハク・ソーロッドが叫んだ。 随伴していた鳥人ギフトがカシャカシャと自らの機械的な体構成を組み替えて巨大な槍に変化し、のばしたコハク・ソーロッドの手に飛び込んで来る。パシンと小気味いい音をたてて両手でそれをつかみ取ると、コハク・ソーロッドが軽くそれを一振りした。 「ここは通さない!」 近づいてきた敵を、コハク・ソーロッドが槍で叩き伏せた。その衝撃に、敵が動けなくなる。 「空を渡る虹色の橋よ、何者にも屈せぬ新たな力を私に!」 フリージアのカメオを掲げて、秋月葵が叫んだ。その言葉とともに、秋月葵の足許からのびてきた光でできた巨大なフリージアの花々が、螺旋を描くように彼女の身体をつつみ込む。花の光の中で青かった魔法少女コスチュームが光に溶けていき、おぼろに秋月葵の素肌のシルエットが浮かびあがる。その身体が、より強い虹色の光につつまれると、それはふわりと翻って黄色をベースとした虹色の魔法少女戦闘服へと変化していった。全体の布地が虹色の半透明の動きやすい物に変わり、黄色のコルセット部分がピシッと身体を引き締め、腰のファーと共に虹色のパネルドレスが素足をふわりとつつみ込むように広がった。肩や袖口にも、緑がかった虹色の飾りが翻る。 変身が終わると、その身をつつんでいた光の花が一斉に散って、間近に迫っていた敵を弾き飛ばした。 「魔砲ステッキ!」 パンと秋月葵が両手を叩き合わせると、大きく開いた両手の間に長いステッキが現れる。 新たに襲いかかってきた敵を古代シャンバラ式杖術で叩き飛ばすと、魔砲ステッキから迸る光で粉砕する。 それにしても、敵が小さめのせいか数が多い。 「こっちだよ。変な虫さんたち!」 エリス・クロフォードが、プロボックで敵の注意を引く。がさがさと、敵の一団が、逃げるエリス・クロフォードを追いかけていった。 「今のうちです。エステル様、ワタシが血路を開きます。ついてきてください」 パイルバンカー・シールドを構えて、アーマード・レッドが重心を低くして身構えた。そのままダッシュ・ローラーで一気に加速して、その勢いのまま前方に集まっていたイレイザー・スポーンを容赦なく弾き飛ばしていく。 「行きましょう!」 ニルス・マイトナーが、エステル・シャンフロウをうながした。 エステル・シャンフロウが走りだすのを、無限大吾とセイル・ウィルテンバーグが左右から守る。 「砕けろ!」 無限大吾が、レジェンダリーシールドで横から突進してきた敵を防いで押し返すと、至近距離からインフィニットヴァリスタを放った。結晶体を打ち砕かれた蜘蛛型のイレイザー・スポーンが、バラバラになって吹っ飛ぶ。 「吹っ飛べー!」 セイル・ウィルテンバーグが、巨大な金剛嘴烏・殺戮乃宴を一振りして、イレイザー・スポーンを壁際まで撃ち飛ばした。 |
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