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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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「ううむ、一番後ろでは、いい物を拾えないのだよ」
「何か拾うつもりだったの?」
 しきりに地面ばっかり見ているリリ・スノーウォーカーに、馬上のララ・サーズデイが言った。
「その予定だったのだ。なにしろ、敵の親玉は一つの領地を簒奪したのだぞ。最初に何をする?」
「まあ、リリだったら、金庫を漁るわよね」
 ララ・サーズデイの言葉は身も蓋もない。
「その通り」
 あっさりとリリ・スノーウォーカーが肯定した。
「なのに、どうだ。落ちているのはイレイザー・スポーンの破片ばかり」
 そうは言うが、そうそうリリ・スノーウォーカーの目論見通りに。ソルビトール・シャンフロウが金目のものを持ち歩き、ましてやここに持ち込んだとは思えない。
「きっと、先頭で戦っている者たちが、ポップした宝箱を開けているのに違いないのだ」
「どこのゲームですか、それは」
 ララ・サーズデイが呆れて言った。
 のほほんと殿の二人がライラック・ヴォルテールやペットたちと遅ればせにやってくると、エントランスは混戦のまっただ中であった。
「よし、何か使えそうな物を叩き壊すのだ。いけー」
 リリ・スノーウォーカーが、無茶苦茶な命令をララ・サーズデイに出した。
 それを聞き流しつつも、やっとペガサスを走らせても大丈夫そうな広間へ出たので、ララ・サーズデイが一気にヴァンドールで敵を蹴散らし始めた。
「こっちも負けていられないわよ。みんな、やっておしまい!」
 ガーゴイルの上から、ライラック・ヴォルテールがペットたちに命令した。クリスタルゴーレム、機械化ヒュドラ、Sイレイザーたちが一斉に周囲のイレイザー・スポーンを破壊し始める。
またメカ? 相変わらず、敵に人がいないな。これって、敵が連れてきたロボットが、イレイザー・スポーンに寄生されたのか? まあ、どうでもいいことではあるな。私は、破壊できればそれでいいのであるから」
 毒島大佐が、気持ちよく敵をカクタリズムで薙ぎ払いながらつぶやいた。雑魚戦は雑魚戦なりに、爽快感が大切だ。そこに、エリス・クロフォードがおびきだした敵の一団が目に入った。
「いただき」
 素早くその中央にポイントシフトすると、シリンダーボムを敵にねじ込んだ。そのままエリス・クロフォードをかかえて後退すると、グラビティコントロールで爆弾をくわえ込んだ敵に、他の敵を集めて押しくら饅頭させる。
 ボンと、爆弾が破裂して、纏まっていた敵がすべて吹っ飛んだ。
 
    ★    ★    ★
 
ごにゃ〜ぽ☆ こっちこっち!」
 通路を螺旋状に駆け抜けながら、鳴神裁がエステル・シャンフロウたちを先導した。
誰にも風を捉えることなんてできはしないよ。
 天井と言わず、床と言わず、現れる敵は猫パンチ猫キックで次々に蹴散らしていく。
 その後ろから、猿渡剛利が、鳴神裁が弾き飛ばした敵に丁寧にレーザー銃で止めを刺していった。
「道は、裁さんが作る。エステルさんは少し下がって」
 猿渡剛利が、後ろから走ってくるエステル・シャンフロウに言った。
「このタイプのイレイザー・スポーンは、寄生部分が弱点だよ」
 敵を分析していたエメラダ・アンバーアイが、猿渡剛利たちに告げた。
「これでいいかな」
 佐倉薫が、自在刀の疾風突きで、敵の結晶部分を突き崩した。
「こっちだ!」
 銃で周囲の敵を牽制しながら、レン・オズワルドが階段の方へエステル・シャンフロウたちを呼んだ。
 すでに、パワードスーツ隊は下の方の敵を排除している。
「先に行ってくれ」
 インビジブルトラップで、追ってくる敵から階段をカモフラージュしながら、レン・オズワルドが言った。
 追ってくる敵をエヴァルト・マルトリッツやロートラウト・エッカートらが防ぐ間に、エステル・シャンフロウとそれを守る者たちは下へとむかった。
「それにしても、こんなに敵がいるということは、ソルビトール一派も、無事では済まないのではないでしょうか。他の入り口にむかった皆さんは、どうしているのかしら」
 山葉加夜が、ノア・サフィルスに精神感応で現状を訊ねてみた。
 西の部隊は、敵イコンと戦闘中。東の部隊は、何かが隠されているのを発見し、調べている最中らしい。北の部隊は、まだ敵に遭遇しておらず、探索を続行中ということであった。
 階下まで下りると、すでに敵を蹴散らしたパワードスーツ隊が、奇妙な光の壁に閉じ込められていた。
「どうしたのですか!」
「気をつけろ。トラップだ!」
 壁のむこうから三船敬一が言うと同時に、エステル・シャンフロウのすぐ後ろにも、光の壁が現れた。
「しまった!」
 分断された緋王輝夜が、ツェアライセン:爪形態で、障壁を破壊しようとする。だが、障壁は緋王輝夜の攻撃を弾き返した。
 ネームレス・ミストが、龍鱗化させた拳で叩いてみたが、自分の手がひしゃげただけであった。名も無き呪鎧ですぐに回復したものの、簡単に突破できそうもない。そもそも、火力で勝るはずのパワードスーツ隊が閉じ込められているのだ。
「他の人たちに、トラップのコントロールか動力源を発見するように言ってください。こちらはまだ進めます」
 エステル・シャンフロウが、近くに残った者たちに告げた。すぐに状況が伝えられるものの、即時の解除は厳しいようだ。
「ここで立ち止まるわけには参りません。皆さん、まだ進めますか?」
 エステル・シャンフロウが、周囲に残っている者たちに訊ねた。
 わずかに、ニルス・マイトナー、桐ヶ谷煉、エヴァ・ヴォルテール、エリス・クロフォード、コハク・ソーロッド、秋月葵の六人とローゼンクライネというメンバーだ。
「ここにこのままいても敵が来るかもしれないし、行けるとこまで行ってみよう」
 秋月葵が答えた。
「ええ。その通りです。行きましょう」
「ああ、もう少し待って、状況を……」
 通路の扉を開けて奥へと進むエステル・シャンフロウたちを見て、追いついてきたはいいが障壁に行く手を阻まれたエメラダ・アンバーアイが叫んだ。このまま分断されるのは、戦力的には非常にまずい。
「なんとかして、こいつを破って進むぞ! 特訓の成果を見せてみろ!」
 猿渡剛利が、そう言いながら他の者たちと一緒に障壁へ攻撃を加えた。