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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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「悪いが、アガートラームの修理を頼む」
 宇宙港のスタッフに格闘式飛空艇 アガートラームの修理を頼むと、レン・オズワルド(れん・おずわるど)は、先行してゴアドー島にむかう葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)伊勢に便乗させてもらった。
 伊勢の本来の乗組員であるコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)の他にも、伊勢の改修の手伝いをするためにジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)も乗り込んでいる。
「さてと、アイールに着いたら、ふふふふふふ……」
 伊勢のブリッジでは、葛城吹雪が、何やら企んでいるような笑いを押し殺していた。
 
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「さてと、ゲートに着いてからが大仕事だな」
 土佐のブリッジでは、湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)が頭を悩ませていた。
 土佐の大きさでは、そのままではまともにゲートをくぐることはできない。だが、中央船体の左右にイコンデッキのある副船体を接続した構造であるがゆえに、非常時の分離が可能となっている。その機能を使って各船体を分離させれば、なんとかゲートをくぐることはできそうであった。
「手順の計算、手伝いますから、ゲートに到着するまでには見通しをつけてしまいましょう」
 膨大なマニュアルを前にして、高嶋 梓(たかしま・あずさ)が湊川亮一に言った。なにしろ、分離を行うのは、これが初めてなのである。
 いずれにしても、分離した副船体もきっちりとニルヴァーナまで持っていく必要がある。H戦隊における空母の役割が強かった土佐は、現在も七機のイコンと、パワードスーツ隊を格納しているのだから。
 ソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)アルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)陣風は、右側の格納庫に収められていた。
 その隣では、ファスキナートルエレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)の手で修理中である。支援ユニット・クリスニッァのエナジーウイングを展開していないため、陣風とくらべると意外とコンパクトに見える。
「ここにも傷が。交換部品はと……」
 積載している交換部品のリストを確認しながら、エレナ・リューリクが言った。
 前回の戦いで、飛行タイプは敵フィーニクス部隊とドッグファイトを演じたため、結構機体に損傷を受けている。ファスキナートルも例外ではない。それらは、ニルヴァーナに着くまでには修理しておきたいところだ。
 その隣では、岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)山口 順子(やまぐち・じゅんこ)飛燕がじっと出番を待っていた。
 さらに、斎賀昌毅とマイア・コロチナのフレスヴェルグがハンガーに収まっている。
 左側の船体にも、三機のイコンと車両一両が収納されていた。
 こちらは、イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が纏めてメンテナンスの面倒を見ていた。
 イーリャ・アカーシとジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)の乗るフィーニクス・ストライカー/Fにも新装備を取りつけるのだが、その最終調整は後回しにして、頼まれた二機のイコンの改造を主に行っている。
「それじゃあ、セラフィートのことは頼んだぜ」
「ええ、任せておいて」
 ジヴァ・アカーシが、メンテナンスハッチに頭を突っ込んだまま桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)に答えた。
 セラフィートは、先の戦闘での破損箇所の修理と、デュランダルに関する調整が主になる。
 デュランダルに関しては、覚醒時の高出力を前提としているため、覚醒時と通常時の二種類の攻撃パターンと管理パターンを組み込まないといけないのでやっかいだ。さらに、覚醒状態はプロテクトがかけられているので、あくまでもシミュレータでしか調整はできない。
 修理しつつも、細かいエネルギー配分や各部伝導管の耐久性アップなど、表からは分からない細かい調整が続く。
 非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)E.L.A.E.N.A.I.の方はイーリャ・アカーシが担当している。
 E.L.A.E.N.A.I.は、機体の修理によってジェネレータとなっている巨大な光条石を一部外すこととなったため、それを利用してコックピットスペースを拡張するのが最大の変更点となっている。それによって確保したスペースに、機内オペレータ席を増設しようというわけだ。設計的にも、システム的にも問題はないが、それでもやはりコックピットが全体的に狭くなったと感じるのは仕方ないと言うところか。
 武装的にはデスサイズから新式ダブルビームサーベルに換装したため、物理的な大きさと重量がかなり軽減されている。後は、変形時や、抜刀時のモーションを最適化して調整するわけだ。
 今回は、物理的な改修よりも、プログラム的な変更の方が大きいと言えよう。
 ただし、機内オペレータ席のパーツはニルヴァーナの方にあるため、現在は設置スペースの確保と武装の方の調整が主となっている。
 後回しにされたフィーニクス・ストライカーの改修は、こちらもニルヴァーナで開発された武装のセッティングが主となる。そのため、本番はどちらもニルヴァーナに着いてからだ。
 バーデュナミス用の多目的支援ユニット、インファントは、量子通信で制御される誘導攻撃が可能なユニットだ。小型のフィーニクスのような形をしている。機体に固定して補助推進と砲台として使用できるが、分離して使えば独立砲台として多方向攻撃が可能になる。
 強力な兵器だが、それゆえにコントロールが難しく、調整は実に微妙な物となる。
 いずれの調整も、イーリャ・アカーシとジヴァ・アカーシの腕の見せどころというところだが、簡単な作業ではないのは明白だった。
 イコンハンガーを後にした桐ヶ谷煉は、用意してあった機晶バイクへとむかった。ニルヴァーナへは、フリングホルニに移乗してむかう予定だ。
 途中で、トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)たちが、フィアーカー・バルから降りてくる。パワードスーツ輸送車両では遅いので、ゲートまでは土佐に運んでもらっているようだ。
 桐ヶ谷煉が下船すると、ほどなくして土佐が出港した。
 
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「これで、みんな一緒に乗れるようになるのですわ」
「そうですね」
 土佐の食堂で、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)に言われて、非不未予異無亡病近遠が答えた。
「楽しみでございます」
「ええ。みんなで相談できれば、いかなる状況でも、乗りきることができるでしょう」
 イコン戦のときに、待機となって心配するだけになるような場面がなくなると、アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)も歓迎していた。
 
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「よし、ゴアドー島にむかうぞ」
 ブリッジに立つ湊川亮一が、進行方向を見据えて言った。
「ちょっといいかしら」
 そこにやってきた富永 佐那(とみなが・さな)が、湊川亮一に声をかけた。
「ゲートへの進入順なのですが……」
 富永佐那が切り出した。
 大型艦が多い分、ゲートへの進入は大きければ大きいほど慎重を期する。万が一ゲートに接触でもしてしまったら、大惨事にもなりかねないし、ニルヴァーナへの重要な移動手段が失われることにもなる。
 ここは、スムーズに進入できるように、交通整理が必要であろう。
「一応、準備ができた艦からということになっているんだが……」
 それぞれの艦の状況が違うことから、現場で柔軟に対応すると湊川亮一が答えた。
「それだと混乱しかねないわね。本当は、フリングホルニを中心とした進入順をマニュアル化できればいいのですが」
「残念ながら、土佐はフリングホルニに先行するから、一緒には考えられないな。全艦艇を二つに分けて考える必要があるだろう」
「そうですね。それで検証してみて、計画書をフリングホルニにも送っておきましょう。こちらの部隊の進入時には、問題のないように私が誘導します」
「ああ、そうしてくれると助かる。テメレーアにも伝えておいてくれ」
 湊川亮一が、そう富永佐那に頼んだ。