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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第1回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第1回/全3回)

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遺跡

 アクアバイオロボットが遺跡内に入り、ある程度進んだところでおそらく巡回のものだろう、機晶ロボに出くわして破壊された。
「前の遺跡と同じく、侵入者迎撃システムがあるってことじゃな」
青白磁がボソっと言った。
ついでスクイードパピーが、遠距離からその良好な視力を生かして偵察を行う。
「やはり前の遺跡と同じようですね。機晶ロボと、おそらく迎撃システムもあるかと思います」
セルフィーナが言った。レナトゥスは頷いた。
「同じような感じだろウ。感じ取れル」
「わたしもレナトゥスちゃんたちのお手伝いをするよ! みんなで協力して行こう!」
声を上げたのは御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)。彼女もレナトゥスとともに遺跡探索にやってきた一人だった。水中での行動とあってウォータブリージングリングを身に着けている。以前は敵として相対したレナトゥスが、今は仲間で、成長しようと頑張っている。そして、レナトゥスを大事に思ってくれる人たちも多数いるという事実。ノーンはレナトゥスと彼女の周りのみんなを力一杯手伝いたいという思いを胸にこの探索の参加を決めたのだった。陽太は夫婦ともどもシャンバラで鉄道事業に携わるほか、危機的状況が進行している現状、有事の際にニルヴァーナや最前線で活動する人員を、迅速かつ堅実にバックアップする為の補給ラインの整備にも、並行して勤しんでいるためニルヴァーナにはやってきていない。神崎 優(かんざき・ゆう)はパートナーたちを連れて、レナトゥスの傍に待機していた。
「過去の歴史の謎を当時の情景・暮らし等に想いをはせながら紐解いていくのが歴史学だ。
 新たな発見や知らなかった事を知っていく。何だかワクワクしてこないか?」
優がレナトゥスに語りかける。
「そうだナ。私はまだまだ、いろいろなことを知ってゆかなくてはならなイ」
「おっと、そうそう、俺のパートナーたちとは初対面だったな」
長いこげ茶の髪、温和そうで幸せそうな表情の神崎 零(かんざき・れい)が進み出て手を差し伸べると、レナトゥスはその手をとった。
「はじめまして、神崎 零よ。優の妻です。調査のサポートをさせてもらうわ。よろしくね。
 私ね、長い間、守護天使の自分の存在や呼びかけに答えてくれる人を探してて、応えてくれたのが優だったのよ」
そう言っていたずらっぽく優を見ると、優は咳払いしてそっぽを向いてしまった。
「照れくさいのね」
神代 聖夜(かみしろ・せいや)がついで進み出ると、軽く会釈をした。一房だけ伸ばした銀色の髪を後ろに束ね、同じ色の瞳持つ狼の獣人だ。
「俺もサポートさせてもらうよ。神代 聖夜だ。こっちは俺の恋人」
そう言って陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)を引っ張り出す。白い髪、青い瞳の少女の姿をとった魔道書だ。
「はじめまして。刹那と申します。遺跡を調べることで何かこの世界崩壊を防ぐお役に立てれば……」
レナトゥスは不思議そうに彼らの様子を見やった。恋も結婚も、彼女の理解の範疇にはまだない。水晶森 デモンズヘッド(すいしょうもりの・でもんずへっど)伯 慶(はく・けい)を従えたベネティア・ヴィルトコーゲル(べねてぃあ・びるとこーげる)も挨拶して彼らと一緒になったが、ベネティアにはこの探索にはまた別の思惑があった。創世学園・応用機晶工学科で研究中の機晶リアクター及びジェネレーターセット・システム――これはイコン用新型動力炉であるのだが、既存のツインリアクターシステムと違い、将来的にはパワードスーツ並のイコンの開発も考慮した新型動力炉である。その実用に関係する機晶技術を、過去の遺物から得られるかも知れないという理由から同行しようというのである。ベネティアの思いを知ってか知らずか、恐竜型ギフトのデモンズヘッドは黙々とその強靭なあごでH鋼を噛んでいる。頭が大きく、身体は尻尾の長さでバランスを取るほどに小さなものだが、その尾の一撃は強烈で大型動物も一撃で昏倒させるパワーを持つ。先頭時には頼りになるだろうが、今は荷物もちだ。慶が進み出ると元軍人らしい身のこなしで丁寧に一礼した。
「それがしは伯 慶と申します。よろしくお願い申し上げます」
彼は本来番頭なのだが、ベネティアの父親代わりで、教育係であり、礼儀作法を教える立場でもある。薄茶の髪をポマードでオールバックになでつけた三白眼のこわもての男だ。
 ロボットやスクイードパピーでの調査からある程度判明したことを踏まえ、調査隊は慎重にピラミッド内部に侵入した。零が禁漁区で、聖夜が隠形の術と獣人特有のカンを働かせ、先陣を務める。セルフィーナが時々見通しの悪いエリアにスクイードパピーを放ち、偵察させる。ノーンは幸運のおまじないと、ダウジングやトレジャーセンスで価値ある“何か”の気配を探って妖精の領土の方向感覚で進路をみなに提案している。白竜と羅儀も調査メンバーの前後に別れ、油断なく警戒すると共に、遺跡内の壁面などから藻類や小型の生き物などのサンプルを採取している。優はHCで博識を駆使して以前のピラミッド型遺跡と照合しながらデータを検索し、マッピングも行う。その合間にレナトゥスに考古学の知識等を教えている。彼はレナトゥスに知らない事を知る・過去の歴史の謎を紐解いていく楽しさを知って貰いたいと考えていた。
「パズルと少し似ているのだナ」
レナトゥスが感想を漏らした。
「そうだね。壮大なパズルだね」
優が頷いた。
 そのとき零と聖夜がさっと緊張した。白竜、羅儀も身構え、ノーンは弓を構えた。前方から機晶ロボが数体突っ込んでくる。デモンズヘッドがその強靭な尾の一振りで一体をカベにふっ飛ばし、もう一体に食いつき、メキメキと頭部を砕く。白竜、羅儀は連携攻撃で敵に相対している。ノーンは優とそのパートナー、詩穂らと共にレナトゥスを護衛している。ベネティアが放電実験で、羅儀はカタクリズムを同時に放ち、一気に数体をショートさせた。
「こっちから来たって事は、この奥に……?」
ベネティアが言う。
「そうかもしれんな」
青白磁が言った。構造としてはスポーンの研究所とここは酷似している。とすればおそらく遺跡の中心付近にキーとなるものがあるに違いない。慎重に、だが迅速に一行は進んでゆく。途中何度か機晶ロボに出くわしたり、隔壁に阻まれたりしたが、なんとか切り抜け、中央部に程近いと思われるエリアにやってきた。そこはまだシステムが完全に生きているのか、明るかった。白い壁は風化がだいぶ進んでいるが、照明などはかなりのものがまだ作動している。一部屋は巨大なタンクが設置されており、壁に並んだ機器類が淡い光を明滅させている。タンクからはいくつものパイプが伸びているが、そのうちの一本が破損している。そしてそこから湖の水と同じ色の液体が煙のように漂い出て、部屋の上部の換気用のダクトと思われるところに吸い込まれていっている。
「水の色は……このタンクの中身だったんだ……」
ノーンが言った。優がHCに届いた飛都からの情報を照合する、
「どうやら、ゲルバッキーが以前、剣の花嫁製造の際に使った物質のひとつと成分が酷似しているらしい」
部屋の隅に何か居た。見かけ巨大なゴキブリそっくりの生き物である。セルフィーナが言った。
「……前の遺跡にも確か、同じ生物がいたとありましたね。友好的だという話しでしたけど……」
ノーンが進み出て、コンタクトを試みる。
「こんにちはー。この建物の中に、宝物があるって聞いたのですけど……。
 なにか大事そうにおいてあるものか、厳重に管理されているドアとか、見たことないですか?」
生き物は友好的な反応を示した。触覚を振り回し、身振りでついてくるよう促した。全員警戒しながらもその先導に従って進んでゆく。幾つかの部屋を抜け、もとは厳重なセキュリティが施されていたであろう大きな扉の前にたどりつく。マッピングと照合して優が頷く。
「ここがどうやら、遺跡の中核部分らしい」
ひとつ手前の部屋に戻り、手がかりを探してみる。部屋の中にはあまり物はもう残っていなかったが、何かの資料のようなものの断片的なデータが見つかった。
「光条兵器に関係するもののようですね」
零がデータをざっと見て言った。全員でさきの大きな扉の前に戻る。扉に施されていたセキュリティは一部がまだ生きていた。詩穂と聖夜がピッキングで、ベネティアが機晶技術と先端テクノロジーを使って扉のセキュリティを解除した。
「開けますぞ」
慶が言って扉に手をかける。全員が身構え、不測の事態に備えた。
 その奥は巨大な祭壇に似た台座を設置しただけの空間だった。台座の上には巨大な一振りの剣が、白銀の輝きを放って鎮座している。セルフィーナが今までの情報や記録に基づいてデータを提供し、詩穂がニルヴァーナ知識で周囲にある文字などを先に、ついで秘宝の知識で剣を調べる。
「どうやら……巨大すぎるくらいですけど、光条兵器のようですね」
すぐにこの秘宝についてのデータが、調査本部に向けて送信され、収容のための人員がヘクトルを現場指揮に、こちらに向かうこととなった。