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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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インテグラル・ルーク2

 正攻法で進むキロスらとは反対方向から、異様な風体のイコンが一機ルークを目指していた。全高129mを誇る黄金に輝く超巨大大仏型イコンカイザー・ガン・ブツである。セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)の個性の強いパートナーのひとり、願仏路 三六九(がんぶつじ・みろく)が自分の説法をスポーンに説くと意気込んでやってきたのだが、その折に持ち上がった緊急事態。光の老人と同化したルークによる襲撃である。モニターでその姿を確認するや、三六九がおもむろに立ち上がった。
「ンフフフフ、スポーンにもワタシの説法を説きに、わざわざ来てみれば……。
 どうやら避けて通れぬ苦行がワタシの前に立ち塞がりましたね。
 インテグラル・ルークそして特にあの光り輝くご老人……許せませんね!
 ワタシに取って変わり、衆生救済しようなどと!
 天地がひっくり返ってもこれは断じて許せないことです!
 ワタシこそが、この世界の闇と絶望から救済し、光と希望の教え導くことができる『真の神』なのですよ!!
 故に! 何者か知りませんが、ワタシの取って代わり衆生を救済するなど!
 誰であろうと看過できませんね!」
カイザー・ガン・ブツはもともと三六九を模った姿を持つ。簡素に言えば、三六九は要するに自分のキャラと被るあのルークと老人が自分より目立つのが許せないのである。マネキ・ング(まねき・んぐ)がさらにそんな三六九に賛同した。
「フフフ……キロスやらその他諸々が、ルークを惹きつけている間に我らはこっそりルークの背後に回り込むッ!
 かくして奴を制裁してやるのだよ!!
 我の造りしカイザー・ガン・ブツの圧倒的な無尽パンチで殴り倒してくれるわ!」
マネキはくるりと三六九に向き直る。
「おぉ、神よ!
 この不届きにもスポーンと我からアワビを簒奪しようとする愚かな親玉ジジイにお裁きを!」
かくして事態はもうセリスの手には十二分に余るものと化した。
(マネキと三六九の奴がいつも通り妙な持論を語ってアレと戦うとか言い出したからには付き合うしかあるまい。
 まぁ、イレイザー魚雷の対処は、他の契約者たちも奮戦してくれるだろうからその隙に近づくしかないな……。
 というか戦うのはいいが、こいつらに慎重論はないからな……どのみち倒さないといけないならやるしかないか)
慣れと言うのは怖いものである。
 カイザー・ガン・ブツは魚雷を切り捨てながら進んでくるキロスらにルークの注意が行っているのを抜け目なく利用して背後から急接近した。三六九が唸る。
「……あれが、光の老人ですかッ! まごうかたなきワタシの偽者ですね!」
セリスはちょいちょいとメビウス・クグサクスクルス(めびうす・くぐさくすくるす)を手招きした。
「三六九の奴が先ほどからイラついてる……ぼちぼち仕掛ける雰囲気っぽい。
 パンチ程度でどうにかなる相手ではないし、一機で片付くとも思えんが、ファイナルイコンソードの準備を頼む」
メビウスはノリよく快諾した。
「インテグラル・ルークに挑むんだって?!
 特に、三六九さんが、今回はいつもより凄くヤル気いっぱいだよね〜。
 多分、ちょっとキャラ被ってるからね。ライバル意識が高いのかな?
 こうなったら相手倒すまで止まらないよね〜」
セリスがこっくりと頷く。
「まぁ、折角なんだからこっちの神の剣も使うべきだよね〜。ファイナルイコンソードの調整はしておくよ」
「……頼んだ」
十七夜 リオ(かなき・りお)フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)とともにヴァ―ミリオンを駆り、対ルーク部隊の支援を行っていたが、まっすぐにカイザー・ガン・ブツがルークに単機で突っ込んでいくのを見た。
「……後方からって確かに効果あるかもだけど……あれだけ目立ってちゃ……オマケに魚雷をよける気もないみたいじゃないか。 
 行くよ、フェル。こっちでも引き付けられれば、キロスさんたちへの直接支援にもなる」
機体名は朱を意味しているが、外宇宙航行の為に失敗と改修を例え100万(ミリオン)回繰り返しても遣り遂げるという誓いを込めた名でもある。ヴァ―ミリオンは滑るようにカイザー・ガン・ブツとルークの間に滑り込む。向かってくる魚雷を避ければ遺跡や僚機に被害が出る可能性がある。ヴァーミリオンはV−LWSで魚雷をすれ違いざま叩き切ってゆく。ルークからは全方位に向けてイレイザー魚雷を発射できるようだが、今は主にキロスらの方向に向けて重点的に射出されている。とはいえ決して後方のガードが甘いわけでもない。
「まったく次から次へと……あのイレイザー、どこから沸いて出てくるんだか……。とっとと片付けて先に進むよ、フェル!!」
次々と飛来する魚雷を切り伏せながら、その高い機動性を生かして幻惑するような動きでルーク後方を中心に舞う。
「『エセンシャルリーディング』でルークの弱点を……探……すまでもなく、どーみたってあのじーさまが弱点、というかインテグラルを操ってる元凶だろ?
 まぁ、そう簡単に弱点を攻撃させてくれるほど甘くはないんだろうけどもさ。
 前回、単身突撃で迷惑かけた事もあるし、こっちが囮になって注意を引き付けて、キロス達に老人の方をぶっ叩いてもらおう」
「あの魚雷、一発たりともワタシの後ろには……行かせない」
フェルクレールトがキッとルークを見つめる。リオがヘクトルに通信を開く。
「こっちの機動性は前回で十分知ってるだろ、ヘクトルさん。こっちと……もう一機なんかいるからさ。
 あいつの注意を引くから、とどめはキロスくん達で頼むよ」
ヴァーミリオンが不規則にルークの周囲を舞い飛びながら、同じ方向から執拗に絶対零度の冷気を放つ氷剣、二式(レプリカ)で老人めがけて切りつける。そこにカイザー・ガン・ブツがルークに辿り着き、おもむろに老人もろともルークに掴み掛り力づくで補陀落山おろしを仕掛けた。冗談のような攻撃に、光の老人はたじろいだ。そこに老人めがけ無尽パンチが繰り出される。そう、その攻撃はただの八つ当たりなのであるが。
「な……!?」
その隙を逃さず、ヴァーミリオンは覚醒し、リミッター解除を行った。対INT用スタン装備を老人周辺へ全力で撃ち込む。
「1回でダメなら2回、それでもダメなら3回……何度だって……っ!!」
フェルクレールトが老人の顔を見据える。リオが叫んだ。
「絶望させるっていうんなら、絶望させてみろ! 幾らでも足掻いてやる! 
 何度だって立ち上がってやる!この程度の壁で……夢を諦めて……た・ま・る・かぁぁぁぁっっ!!」
大ダメージとはいえないが、老人は今の攻撃でやや消耗したように見えた。
「……後は……頼んだ!!」
フェルクレールトはキロスらにメッセージを送信し、残るエネルギーを使い撤退行動に入った。

 セリスらの様子を紅龍から見ていた董 蓮華(ただす・れんげ)は、今回協力戦を行うつもりでいるクローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)フォトンに通信を入れた。
「巨大ルークとの戦いを本格的にはじめるにはここはまずいと思うの。
 あの規模のものだし、爆発したりそうでなくてもこちらの攻撃も相当なものになると思うし。万一遺跡に近いほうにでも行ってしまったら……。
 スポーン達に怪我人も出したくないし、湖から上がってしまうと人々の町もあるから浅瀬での戦いは避けたいの!
 アピスさんにお願いして、パラ実分校に合体したイレイザーをパラ実分校ごとルークに対する囮にしてルークを湖の最深部に誘い込むのはどうかしら?
 パラ実分校は二度と使えなくなるけれど、スポーンや町の人に怪我人が出るよりずっと良いと思う。
 誰かを助ける為なんだってのは、きっと分かってくれると思うし、学校についても当座ニルヴァーナ学園に通うか新たにに作っちゃえばいいしね。その時は、手伝うし」
「ルークを、湖畔の人間の居住地域や水中のスポーンの町などに一切被害を出させないままに、倒す……か」
クローラが言った。
「アピスにパラ実分校と合体してるイレイザーを動かして貰い、私もイコンの砲撃でルークを挑発。
 できたらキロスにもハデにこっちで暴れてってお願いするわ」
「アピスとアクリト教授は確か一緒にいるはずだ。教授に連絡を取ればアピスと話せるだろう」
スティンガー・ホーク(すてぃんがー・ほーく)が蓮華に言い、通信回線を開いた。蓮華が思いついた案をアクリトとアピスに伝えると、アピスが繊細な羽を震わせて応えた。
「街ガコワレルノハコマル。デモ、アソコハワタシガズットイタ『家』デモアル。壊スノハイヤダ』
アクリトも言葉を継ぐ。
「実際あの校舎にはまだパラ実の生徒たちがいる、彼らをを全て避難させる時間もない。
 それにまだあのイレイザー自体の研究も進められている途中だ。引き付ける役割だけならかまわないが破壊は認められない。
 ……それに、せっかくあそこを『家』と認識したアピスの意図も汲んでやりたいしな」
「アリガトウ」
アピスがまっすぐにアクリトを見つめ、触角を震わせる。
「わかりました。ではおびき出すのだけでも手伝ってもらえませんか?
 分校のイレイザーのパワーや大きさが有れば、あれが遺跡の最重要守護騎士だって見えるでしょうし……」
蓮華の言葉にしばらく考え込んでいたアピスが頷いた。
「湖ノ一番深イトコロ、マワリニ何モナイ所ニツレテイケバイインダネ? ソレナラヤッテモイイ」
アピスが念を押す。
「ありがとう」
紅龍とフォトンが発進し、アピスの操作する巨大イレイザーが発進した。そのあとにキロスをはじめとする対ルーク戦のメンバーが目立たないように続く。クローラが最終確認をとる。
「まず董少尉と俺の機体が交互に砲撃を当て、回避しあうことで互いへの負担を軽くしつつ、湖底深くへルークを誘導。
 ルークを追わせるというより追撃によって『結果とし』移動するという誘導、俺達が常日頃訓練している駆け引きだな。
 そこに分校イレイザーが重量も加味して砲撃や攻撃をかます事が出来れば、さしもの化物ルークも多少ダメージはあるだろう。
 そこに一斉攻撃…というのが青写真だな?
 まあ、実戦は理屈どおりには行かない事も多々有るから、あとは臨機応変に行くしかないがな」
「ルークが十分なダメージを負ったって感じたら、ヴィサルガで『覚醒』!
 奴の関節に近接武器を叩きこみ、そこから爆弾を捻じ込んで、起爆と同時にブースト全開で離脱する!」
クローラのパートナー、セリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)が言葉を継いだ。
「僕達の『ヴィサルガ覚醒』も董さんとタイミングをあわせるよ。
 武器へのエネルギーチャージや姿勢制御を早く安定化させてミサイルポッドによる連射幕。
 ミサイルでのピンポイントターゲットはルークの『目』
 目は全ての生物の弱点だからね。ルークが完全に死ぬまで、油断せずトドメを刺す。
 頭部と四肢を切断し、研究用サンプルとして持ち帰れたらいいな。
 インテグラルにはまだまだ不明点も多いから、解剖して調査して貰うんだ!
 むろん復活されると困るからバラバラにするのは忘れないよ。冷凍ビームで凍結して運べばより安全かな?」
スティンガーが全員に注意喚起を行う。
「あのルーク、一撃掠れば俺達の普通のイコンなんかスクラップになりかねないので、回避には全力を注げ。
 ルークの動きは先の先までシミュって想定し対応するくらいでいい」
 カイザー・ガン・ブツの妙な攻撃に何かイヤな物を感じたルークは、こちらにまっすぐ向かってくる巨大イレイザーと紅龍、フォトンの意図にやすやすと引っかかった。魚雷を撃ちまくり、触手攻撃をも交えながら迫ってくる。紅龍とフォトンが高速機動を生かし、素早く攻撃を回避し、小手先の攻撃を繰り返す。アピス操る巨大イレイザーがその後方からビーム砲を撃ち、ルークに負けず劣らずの巨大な腕で触手をなぎ払い、パンチを繰り出す。時折の回避行動で少しずつ湖の最深部へとルークは誘導されてゆく。