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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

リアクション

 
 
 

暁光

 
 
 
 ダエーヴァの撃退が終わった頃、イリノイ基地の攻略に出撃していた面々が戻ってきた。
「色々と失敗したけど、やりたいことはやれたからまあ、いいかな!」
 垂はそんな感想を漏らしながら鳳凰から降りると、汗を流すために基地のシャワールームを借りにいった。
 
「何とかハッキングに成功したが、いろいろとアクシデントが多かったな」
 ダリルはルカルカに向かってそんなふうに話し掛ける。
「でも、終わりよければすべてよしって言うじゃない?」
 そんなダリルにルカルカ微笑みかける。
 
「いや、まあ少しは巨人と戦えたんだからいいじゃない」
 暴れ足りないと騒ぐパートナーをなだめるのはリカイン。今回、ハンドヘルドコンピューターを持っていたことによって幸運にも通信網が構築された。
 さらには、ダエーヴァを解析していたイーリャによっていくつかの情報がリカインにもたらされたため、リカインは少しだけ胸のつかえが取れたのであった。
 
「ふー。疲れたぜ!」
 イコンから降りてそんなことを言いながら顔の汗を拭くのはシリウスだ。
 シリウスが汗を拭くために顔を動かした瞬間、ポニーテールにまとめられた見事な赤い髪が、化粧品の CM のワンシーンのように舞ったのであった。
 
「破壊はできたが……せっかくの新型機のお披露目がいまいちだったぜ……」
 イコンから降りた唯斗は、パートナーのエクスに対してそうぼやきつつシャワールームに向かって歩き出す。
「まあ、良いではないか。次こそ派手に暴れてやれば良い」
 エクスは唯斗の背中を叩きつつ、女子用のシャワールームに向かったのであった。
 
「みんな御苦労様。お疲れさん」
 泰輔は、そんなふうにパートナーたちにねぎらいの言葉をかけると、その一方でウィンダムから降りてきた朋美一行が目に入った。シマックとの仲を玄祖母たちにからかわれつつも泰輔と視線があった朋美は、泰輔にペコリと頭を下げると、お腹がすいたと玄祖母達に食べ物をねだる。
 
 重装備を脱ぎ捨てていつもの格好に戻ったセレンフィリティたちは、クローラと挨拶を交わすと、一緒になってシャワールームと歩いていく。そして、女同士での話を繰り広げたのだった。
 
 
 佐那と真司は一緒に格納庫にイコンを止めると、今回の作戦についての軽い反省会を行った。
 結局のところ低空飛行での高速移動は正解だった、そんな結論に落ち着く。その一方で、ソフィアとヴェルリアはお互いに波長が一致するところがあったらしく、見た目が近いこともあり仲良くなっているのだった。そしてヴェルリアの持つ人形を貸してもらってご満悦のソフィアに、佐那は暖かい視線を注ぐのであった。
 
「お疲れ様でした。大統領閣下。とはいえ、今後の戦いにも閣下の御身が必要であります。再び捕虜になられては、僕達も責任を問われます。くれぐれもご自愛ください」
 トマスは帰還した大統領に対してそんな小言を述べていた。そこまではおとなしく聞いていた大統領だったが、ミカエラが側にやってきて微笑むと、慌てて自重を約束して自分の執務室へと逃げていった。
 そんなミカエラを魯粛とテノーリオが、不思議そうな視線で見つめていた。
 
 
「お疲れ様です。大尉!」
 一寿はトマスの姿を認めると、トマスに向かって敬礼をする。
「お疲れ様でした」
 トマスに返礼を受けるとともに、守りを固めながら戦ってくれたことに礼を言われる。
 そして、パートナーたちは魯粛とともに打ち上げと称した宴会に向かう。
 
 そして、グレースである。
「もう少し……もう少しだけ持って私の体……」
 そう呟くグレースの銀色の瞳が、静脈の血のように濁った赤に染まっている。
「やぁ、お嬢さん。お元気かな」
 そんなふうにグレースに語りかけてくるのはダエーヴァの指令級。アメリカを受け持つサルヴァである。
「……消えろ」
 グレースは殺意を込めた声を発する。
「キヒヒヒヒ。怖い怖い」
「お前たちに、怖いという感情があるなんて驚きだわ」
 もちろん、おどけているサルヴァが本気で怖がってるわけなどないのだ。
「そう言わないでくれお嬢さん。ユーはもうすぐミーたちの仲間入りをする。だから、お迎えにやってきたのさ。こうして君の頭にね。いや、ようやくテレパシーが通じるくらいこっちに近づいたようだね。めでたいめでたい」
 グレースの頭の中に、サルヴァの嫌みな笑い声がこびりつく。
「確かに、めでたいわね。これで、いつでもあなたの居場所がわかる。待っていなさいサルヴァ。必ず、殺してあげるわ」
 グレースがそう言うと、サルヴァはグレースの意識から消えた。
 グレースは一人基地を抜け出すと、大統領の息子にして婚約者であったダニエル・ウィルソンが形式上眠っている墓地に、誓いをかけるために出かけていったのだった……
 
「グレース、さん……?」
 そんなグレースの様子を、グレースを探していたのだが様子がおかしいために声をかけそびれていたカルが目撃していた。だが、グレースはそれに気が付かずに基地から出て行った。
 太陽の光が宵闇を払い、世界は暁光を迎える。だが、カルの心には暗いものがかかったままなのであった。
 
 
 そして、今日も朝がやってくる。
 
 
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

樹 和寿

▼マスターコメント

 お待たせいたしました。北米戦役キャンペーン第2回リアクションの完成となります。
 このキャンペーンは次回で最終回となるのですが、今回、何人かの方が非常に良い意味での想定外のアクションをしていただいたため、最終回の構想が大幅に変わっております。このように予想もしない方向に物語が展開するとPBWのマスターをやっていてよかったなと思います。
 今回一部の方からも指摘をいただきましたが、リリース日と締切日が悪かったせいか、予算不足の方が多かったようで反省しております。
 また、シナリオガイドの記載が不親切だったため、一部のPL情報をPC情報と誤解されたアクションがありましたり、既存の技術での無線封鎖が【アナザーの既存技術の】と書けばよかったのでしょうがオリジンの無線までも通用しないと思われたりしてしまったようで、この点も反省しています。
 最終回についてですが、このキャンペーン内ではグレースが悪堕ちすることはないですのでその点は明言させていただきます。

 また、私事になりますが、今回の執筆に音声認識ソフトの体験版をインストールして執筆を行ってみました。口述筆記に近い形で執筆をしたため喉が少し痛いのですが、その分執筆のスピードは上がったのではないかなと感じました。
 よろしければキャンペーン最終回も参加いただければと思います。またお会いいたしましょう。