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なし

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第1回ジェイダス杯開幕!

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第1回ジェイダス杯開幕!

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第一章 死闘はもうはじまっている

 さぁ、いよいよはじまるぞ!
 世界中から命知らずがそろった乗り物deかけっこジェイダス杯。
 第一回目のレースは、薔薇の学舎がある霧の都タシガンで開催だ!



 荘厳な造りの霧の中の街灯亭をスタート地点に中央病院の角を曲がり、一路、オベラ座へ。
 チェックポイントである薔薇の学舎を通過した後には難所の一つ宮殿通りへと入るスピンカーブが待ってるぞ!
 右手にタシガンの森、左手にタシガン宮殿、美術館の美しい庭を見ながら、芸術家通りを駆け抜け、再び出発点である霧の中の街灯亭へ。
 選手の皆には、この全長1921mに及ぶ、タシガンの名所が楽しめるコースを3周してもらう。しかし、いくら街並みが美しいとはいえ、霧深く急カーブが多いタシガン市街で、よそ見は禁物だ。


 まずは今回の注目選手を紹介しよう!
ゼッケンナンバー1番、蒼空学園から睦月麗恋(むつき・れいれん)選手。黒髪が美しい美少女だ。参加の理由が「何としても賞金を獲得して、孤児院に寄付する」という辺り、泣かせるじゃないか。パートナーのヴァルキリークリスティーナ・マクラミラン(くりすてぃーな・まくらみあん)もともに参戦だ。
 2番手は我らが薔薇の学舎からの参加者、明智珠輝(あけち・たまき)。ぬぁぁぁぁぁんと薔薇柄の海パン一丁で登場だっ?!
「ふふふ…校長の熱いベーゼは私がいただきますよ」
「そんなものが賞品なわけないだろう…」
 薔薇学生の品位が疑われる格好で、不敵な笑いを浮かべる明智選手。すかさずツッコミを入れたのはパートナーの守護天使リア・ヴェリー(りあ・べりー)だ。こちらの御人は至って常識人のようで、実況席もホッと一安心。
 お次は、百合園女学院からやってきた只一人の参戦者、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)選手。今回、百合園の生徒に乗り物の貸し出しは行っていない。ミルディアを巡る男達の熱い戦いも見逃せないっ。………と、思いきや、第一回ジェイダス杯。スタート前から死闘は始まっていたぞ!
 ミルディアの元に怒濤のように押し寄せる、目を血ばらせた漢達!
 先頭を走るのは、蒼空学園のエドワード・ショウ(えどわーど・しょう)選手と波羅実のエルシド・ボロス(えるしど・ぼろす)選手だ。
「お嬢さん、私の勝利の女神になってはくださりませんか? 美しい女性が同乗してくだされば、不肖エドワード・ショウ、必ずや勝利の栄冠を手にすることができるでしょう」
 巧みな話術で口説くエドワード選手に対して、波羅実エルシド選手は直球だ!
「おう、俺のバイクに乗って行けや!」
 言葉が直球なら行動は剛速球。ミルディア選手の腕をつかむと、強引にバイクに乗せようとしているぞ。お姫様のピンチだ、誰か助けて〜!
「止めないか、君。彼女、困っているじゃないか」
 ミルディア選手の熱い視線を受け止めたのは、リュートを抱えた色男、シャンテ・セレナード(しゃんて・せれなーど)選手だ。お姫様を暴漢の手から救う白馬の王子。まさに薔薇学生にふさわしい麗しき立ち振る舞いに、ミルディア選手の目もハートになっているぜ。
「………私の王子様」
「僕の名はシャンテ・セレナード。あなたのお名前は?」
「ミルディアです、王子様」
「良かったら、僕の馬に乗りませんか?」
「えぇ、ぜひ!」
 すでにお姫様の目には他の求婚者の姿なんて映っていないっ?
「男は顔じゃねぇ〜〜〜!!! 力なんだぁぁ〜〜っっっ!!!!!」
 白馬に乗った王子に惨敗を喫した波羅実・エルシド・ボロス選手は、地面に拳を叩き付け漢泣き。ジェイダス杯は「顔が命」の薔薇学主催。ここは潔く諦めるのが肝心だ。
 そして傷心の男がもう一人。蒼空学園のエドワード・ショウ選手が、ものすごい勢いで小型飛空挺に荷物を積み込み始めたぞ。
 って、キミ?!なんでこっちに来るんだぁ〜〜!!!!!
「レース実況は、私Weekly Expressのエドワード・ショウがお送りいたします!」
 エドワード選手の小型飛空挺には、プロ仕様と思われる撮影機材の数々が。お主、ただ者ではないな?
 折角だし、中継でもやってもらいましょ〜か。とりあえず、はい、腕章。
「すでに準備してあります!」
 ……あ、そ。用意いいね、キミ…。


 と、エドワード選手に気をとられているうちに、選手達が控えているテントの辺りが騒がしくなっているぞ。
 人混みの中心にいるのは、蒼空学園の朝野未沙(あさの・みさ)選手と妹の機晶姫朝野未羅(あさの・みら)選手だ。
 蒼空学園から借りてきたパーツを使い、小型飛空挺を改造しているらしい。機体の正面にはドリル、両サイドには2門の砲台を備えている…これは明らかにルール違反だぞ。
「武器も山ほど積んだし、装甲が通常機体の2倍になっている分、重量50%増、速度半減はしょうがないとして。それを補うために小型ブースターを付けて〜。後は攻撃用に付けたアベンジャーの出力をもう少し上げて〜と」
 小型のノートパソコンを睨みつつ、右手に持ったスパナで飛空挺のボルトを締める未沙の形相はまさにマッドサイエンティスト。なんか、違反と分かっていても、正直、止めるのが怖い。
「お姉ちゃん、ダメだよぉ。改造はルール違反だって参加申込書にも書いてあったもん!」
 勇敢にもパートナーの未羅が舌っ足らずな口調で止めているようだが、「これくらい大丈夫だって」と、改造に熱中している未沙は聞く耳を持たない。
「後はステークの硬度も上げて〜」
「お姉ちゃんってばぁ!」
 なんかもう放っておけばレースが終わるまでやってそうだよ、この人達…。


 おぉ〜っと、何やら今度はスタート地点が騒がしくなってきたぞ!
 出走間近で皆気が高ぶっているのは分かるが、何やら剣呑な雰囲気。どうやら、つかみ合いの喧嘩をしている者もいるようだ。こんなときこそ熱く燃える記者魂を持った漢、エドワード・ショウ。行ってきて〜!
「こちらエドワード・ショウです。スタート地点は大変な騒ぎとなっております。さきほど聞き込みを行ったところ、蒼空学園の光臣翔一朗(みつおみ・しょういちろう)という人物が、スタートを待つ選手に突然蹴りかかったという情報が入っております。犯行の瞬間に居合わせたという睦月麗恋選手、パートナーのクリスティーナ選手にお話をお伺いします」
「お祭りに喧嘩は付き物よ。これはこれでいいんじゃないの?」
「麗恋が相手の攻撃を避け損なっておりましたので、わたくしが剣でなぎ払いました」
 可愛らしい外見と丁寧な口調とは裏腹に、言っていることはかなり物騒だ…。クリスティーナ選手の剣を受けた光臣選手は、憐れスタート前にリタイアなのか?
 何はさておき今回のレース、かなりの妨害が入りそうだ。気合を入れ直してかからないと、完走どころか生還すら難しいかもしれないぞ?!