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リアクション
厨房では最初の準備としてジャタ松茸を炙っておく。
万が一厨房で幻覚にかかったら大変だからだ。
調味料は適当に使って良いとの事だったので、店内のガラスケースに飾ってあったものを持ってきておく。
料理酒も同じく。
「よっしゃ! 腕がなるわっ! 今、美味しいお好み焼き作ったる」
腕まくりをして気合いを入れる日下部 社(くさかべ・やしろ)。
厨房にはホイップが念の為と言って匂い袋を置いていっていた。
社はキャベツを華麗に刻んでいく。
ジャタ松茸は軽く火で炙ったものを薄くスライスしている。
猪の肉も薄めにスライスしておく。
「……お好み焼き」
隣ではサトゥルヌスとアルカナがパスタの準備をしていた。
サトゥルヌスはお好み焼きが焼き上がっていく様を覗いている。
やり方を勉強しようとしているようだ。
勿論自分の料理はしつつ。
細かく刻んだニンニクとオリーブオイルをフライパンに入れ、弱火でうまみを引き出している。
キノコは社を同じく、軽く炙ったものを使用している。
あとはネギを斜め切りして下準備は完了した。
「なんや? サトゥルンは俺のお好み焼きを学びたいんか?」
「う……うん」
おずおずと頷いて肯定する。
横では大きな鍋に蓋をしてお湯が沸くのをアルカナが真剣に見つめていた。
「ええかぁ――」
社は自分流お好み焼きの作り方を解説しながら作っていく。
サトゥルヌスはその様子を料理をしつつ見ている。
フライパンのオリーブオイルが良い感じになったのを確認するとネギを投入し、火が通ったらキノコを入れる。
「醤油は……」
「おう! それならここにあるで。ほい」
「うん、有難う!」
この2人は料理ですっかり打ち解けたようだ。
手渡された醤油を見ると見たことのないメーカーのもの。
構わず、フライパンへと入れてソースは出来あがった。
社は社でコテを使い、お好み焼きをひっくり返している。
「アル君、パスタは茹であがった?」
「ああ、サトゥの指示通り細めの麺を少し硬めに茹でた」
「じゃあ、こっちにお願い」
ソースの中へと麺が入る。
結構な量なので混ぜるのに悪戦苦闘していたが、なんとか全体にからめる事が出来た。
「あとはお皿に盛りつけるだけだね」
「そっちも完成かぁ。お好み焼きも出来たで」
焦げ出したお好み焼きソースの香りが辺りを包んだ。
「むむ? ここからなんだか良い匂いが……」
空京でふらふらとお散歩をしていた佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)が琥珀亭の扉を開ける。
テーブルの上では何やらコンロで鍋を作っている人達、厨房からも良い匂いが漂ってくる。
テーブルに乗っている材料を見るとそこには、ジャタ松茸とパラミタ猪の肉が。
「こ、これは……」
きゅ〜んと胸を締め付けられ、いったんトイレへと駆けこむ。
すぐに半分の仮面と青薔薇マントをして戻って来ると厨房の中へと入り、謎の料理人Sとして料理を始めた。
顔半分しか隠れていないからバレバレなのだが。
厨房の一角を手に入れるとすぐさま調理を開始させる。
「弥十……料理人S、お手伝いしますっ」
材料を切っていると横から鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)が手伝いを申し出てくれた。
ニンジンのイチョウ切り、タマネギのみじん切りと包丁を使いこなし素早く切っていく。
「じゃあ、お願い〜」
切り込み隊長は虚雲へ任せ、弥十郎は味付けや炒めへ専念する。
1品目は中華クワイも使ったキノコ炒め。
湯通しした鶏肉、削ぎ切りにしたキノコをカシューナッツと共に炒めた料理となっている。
味付けはオイスターソースと甜麺醤。
「おやぁ? これは……ま、いっか」
弥十郎は調味料を見ながら何やら呟いていたが、気にするのをやめたようだ。
2品目は煮込みハンバーグを作る。
ココット皿に猪肉で作ったハンバーグ、デミグラスソースとスライスしたキノコを一緒に入れ、パイ生地で蓋をする。
パイ生地には薔薇が描かれており、目にも楽しい。
これを30個ほど作る。
「あとはオーブンに入れるだけ」
「早かったですね。しかも美味しそう……」
「はは、そう言ってくれると嬉しいなぁ」
ゆっくりと出来あがりを待つばかりとなった。
「鍋なら私にも作れるよね……え〜っと……」
猪肉、ジャタ松茸、ネギ、こんにゃく、白菜などを適当に切っていくのは如月 玲奈(きさらぎ・れいな)だ。
いや、本当に口に入るくらいの大きさに切り方など気にせず切っていっているのだ。
一緒に料理をしているのは八斗。
「ボクはこっちを切るね」
「あ、うん」
八斗の方はその他キノコに牛蒡、豆腐を処理していく。
「あとは、コンロの上に鍋を置いて……」
覚束ない手で調理を進めていく。
恭之郎はその様子を心配そうに見つめている。
「白味噌と赤味噌を……適当に」
「塩も入れちゃうね! あ、入れ過ぎた」
「砂糖で調節しよう」
「うん!」
鍋の中はどんどん恐ろしい事態になっていく。
見た目まともなスープが出来ると今度は材料を入れる。
蓋をして、出来あがるのを待つ。
このほかにも近くで鍋を作っている人達がいる。
シーリルは塩を酒で猪肉とキノコを煮込んでいる。
他にも何か入れているようで、おかしな色合いをしている。
ウィングは自分で食べる用に作っているようだ。
「他の鍋を作っている人達を見てるとカオスな予感が……」
味噌、ネギ、猪肉、キノコとシンプルに作り、良い匂いがする。
「皆さんのお口に合うと良いです」
ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)も家庭科が得意と言うだけあって、段取りも良く、鍋を完成させていく。
「ソア、そっちの醤油を取ってくれないか?」
「あ、これですか?」
「うん、それ」
緋桜 ケイ(ひおう・けい)とソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が協力して醤油味の鍋が完成していく。
「うおりゃーー!!」
「わらわの料理テクを見るが良い!」
厨房からは互いのパートナーである、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)と悠久ノ カナタ(とわの・かなた)の奇声が聞こえてくる。
「……あいつら大丈夫か?」
「さ、さぁ……」
こうして、鍋は色々な物が出来あがりそうだ。
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