天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【借金返済への道】秋うらら、行楽日和!

リアクション公開中!

【借金返済への道】秋うらら、行楽日和!

リアクション

■□■□■□■

「わあ! 紅葉って赤くて黄色だ! おにーちゃん、凄いね!!」
「そうだね」
 笑顔で言うソフィア・プレンティス(そふぃあ・ぷれんてぃす)に、神楽崎 俊(かぐらざき・しゅん)も穏やかな笑顔で返す。
 繋いだ手からは互いのぬくもりが伝わって来る。
(ああ……ふつーーーーーーだ。普通の兄妹だ……。なんて貴重な時間なんだ! 昔はあいつもこんな風だったのになぁ……)
 俊は心の中でもう1人の妹を思い、ほろりと涙を流した。
 最近は俊の布団に、俊の白いシャツだけを着て潜り込んできたりするから気が抜けなかったのだ。
 森を抜け、川まで来ると、釣りをしていた人達がお昼の用意をしていた。

「葉月ー! 焼けたよー!」
「有難うございます」
 ミーナが火術で焼いた魚を恭司、樹、フォルクス、そしていつの間にか戻って来ていたホイップに配った。
「寒いだろう? こちらへ来い、風よけになってやる」
 フォルクスは手招きをして自分の膝の間に樹を座らせた。
「確かに寒くない。こういう時は身長差って便利だな。男の腕の中って考えると微妙だけど……。あーんとかはやらないからな! 俺が食べさせるのなら良いけど……」
「なんだ、やってくれるのか? じゃあ、そこにあるものを何か1つ」
 フォルクスは自分が樹の為に作ってきた二段重ねの重箱を指差す。
「やるの!? まあ、良いけど……はい、あーん」
 フォルクスは満面の笑みで海老フライを頬張る。
(ワタシもそれやりたい! でも、葉月は流石にやってくれないよね……うぅ)
 少ししょんぼりとするミーナを葉月はご飯が足りないのかと誤解して、釣りに行こうとしてしまった。
「違うから! 大丈夫! 足りるよ!」
「そうですか?」
「うん!」
 葉月に自分の事を心配してもらえた事で満足したらしい。
「わあ! お魚さん焼いてる! おにーちゃん、お魚さんもいるみたいだよ!」
「良かったらどうですか?」
 ソフィアの声に葉月が勧める。
「悪いよ」
「沢山獲ったから大丈夫!」
 樹が更に言葉を足す。
「では、いただこうか?」
「うん! 有難う、おねーちゃん達!」
 ぺこりと頭を下げてお礼を言う様はなんとも愛らしい。
 塩焼きを手に俊とソフィアは去って行った。
「それにしても、相変わらず葉月さんとミーナさん、樹さんとフォルクスさんは仲が良いね」
「そうですね、少し妬けるくらい仲が良いようですね」
 ホイップが言うと、恭司も口を開いた。
 その後、正義が焼き芋を配りに来たのだった。

 ホイップ達から離れ、暫く歩くとちょうど良く木で出来たベンチを発見し、腰を落ち着かせる。
「ここでお弁当にしようか」
「うん!」
 ソフィアは手を繋いだまま、ベンチへと座った。
「手を離さないと食べられないよ?」
「うぅ〜、でも、でも!」
「オレは逃げないから」
「……そうだよね!」
(おねーちゃんの極秘任務はずっと手を繋ぐ事だけど、これは大丈夫だよね? あ、もう1つの任務の女の人を近づけさせないっていうのは……さっきのは大丈夫かな?)
 納得して、手を放したと思ったら今度は何事かを考えてぐるぐるしているソフィアを見て、俊はくすくす笑った。
「何?」
「いや、平和だなぁと思ってさ」
「ん? いつも平和だよ?」
「う、うん。そう、だね……はは」
 2人は仲良く俊お手製のお弁当と魚の塩焼き、そして正義にもらった焼き芋に舌鼓を打ったのだった。

■□■□■□■

 けっこう着こんでいるレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)はビニールシートやお弁当等を一手に引き受け、背負っている。
「ん、こんぐらい余裕だからな」
「レイちゃん有難う!」
 最初に荷物を持っていた朝野 未沙(あさの・みさ)はお礼を言った。
「それより、どの辺にするんだ?」
「そうだね……あの辺りなんか良さそうじゃない?」
 未沙が指差した先は森を出て、少し開けた場所。
 紅葉がはらはらと舞っていて、風情のある景色が楽しめそうだ。
「ふっかふかなの〜!」
 朝野 未羅(あさの・みら)は自分の足元がコンクリートとは違うふわふわの感触に感動しているようだ。
「凄いですぅ〜!」
 朝野 未那(あさの・みな)も同じようで、未羅と一緒に飛び跳ねてみたり、かさかさという音をわざと立てたりしながら歩いている。
 未沙が示した場所へと到着し、レディスが早速ビニールシートを広げる。
 そのあと、未沙がお弁当と水筒をビニールシートの上に載せた。
「今回のお弁当はあたしが腕によりをかけて作った自信作!」
 そう言うとわくわくして待っている3人の目の前でお弁当の蓋をあけた。
「おお〜!!」
 3人から歓声が上がる。
 中身はおにぎりと卵焼き、唐揚げだ。
「いただきます!」
「どうぞ召し上がれ」
 レイディスはまずサケおにぎりを口にし、そのあと唐揚げにも手を出した。
「この唐揚げ最高だな」
「でしょ? わざわざ捌くところから始めたんだから」
「なるほど、自信作なわけだ」
 そして、手に取ったものはあっという間に胃袋の中へとおさまっていく。
「ちょっと甘いの〜」
 未羅は卵焼きを頬張り、幸せそうにしている。
「ふりかけも美味しいですぅ」
「勿論、ふりかけもお手製だよ」
 未那の食べているおにぎりも一瞬で口の中へと吸い込まれていった。
「温かいコンソメスープもあるよ」
 魔法瓶の中に入れておいた白い湯気が出ているスープを未沙は3人に手渡してから、自分の分を注いだ。
 どれもこれも好評だったようで、お弁当は瞬殺されてしまった。
「ごちそうさまでした!」
「おそまつさまでした!」
 食べ終わるとレイディスは欠伸を1つする。
 喧騒を離れた場所での寛げる空間というのは、ほっとするものだ。
 レイディスはシートの上で大の字になって寝転がった。
「レイディスお兄ちゃぁ〜ん」
 そこへ、がばっと抱きついたのは未羅だ。
「レイディス様、暖かくて大きいですぅ」
 反対側にひっついたのは未那。
「ん? 一緒にまったりするか?」
 2人の頭をなでてやると更にひっついて来た。
「えへへ〜」
 未羅が嬉しそうな声を上げる。
「レイディスお兄様……って、呼んでも良いですかぁ?」
 未那がレイディスの顔を見上げながら聞いて来た。
「構わないぜ」
「お兄様が出来ちゃいましたぁ〜……レイディスお兄様ぁ大好きですぅ」
 ぎゅぅっと、2人から抱きしめられ、いつの間にか妹の様な存在が増えた事に喜んでいるようだ。
「未沙、今日は一緒に来てくれてサンキュな」
「レイちゃんとなら楽しいと思ったからだよ。一緒にゆっくりしようね」
「ああ」
 4人にはこの後、源次郎が焼き芋を届けていたのだった。

■□■□■□■

「あら、そこのあなた、良いもの持ってるじゃない」
 カーリー・ディアディール(かーりー・でぃあでぃーる)は籠を背負っていた健勝に話しかけた。
「へっ? 自分でありますか?」
「そうそう。その籠の中に入っている栗って余るかしら?」
「いえ、誰か使ってくれる人を探していたであります! よろしければどうぞであります」
 スッと栗の沢山入った籠を差し出す。
「有難う」
「ほわ〜、美人さんであります……」
 笑顔でそれを受け取ると、持ってきていた調理器具を並べているアルカナ・ディアディール(あるかな・でぃあでぃーる)のところへと寄っていく。
「アル」
「ね、姉さん。何か?」
 手を止め、少し後ずさる。
「このイガ全部取りなさい」
 そう言うと、アルカナの頭の上から籠いっぱいのイガ付き栗を落とした。
 アルカナが声にならない悲鳴を上げたのは言うまでもない。
(なんてことしやがるんだ! この悪魔!!)
「ちょっと足で踏むだけで直に終わるわ」
「う……解った」
 渋々、カーリーの命令に従うのだった。
「わあ、こんなに沢山の栗があれば色々作れるよね! カー姉の好きなマロングラッセも作ってみようっと」
 アルカナの足元にある栗を見て、サトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)が楽しそうに言う。
「まあ、素敵。楽しみにしているわ」
「任せてよ」
 腕まくりをすると早速、準備をしに調理器具のある場所へと歩いて行った。
「そういえば……白君(びゃっくん)は何してるのかな?」
「ルウ君、呼びました?」
 いきなり背後から現れたのは銭 白陰(せん・びゃくいん)だ。
「あ、うん! って、それもしかして鮭!?」
「ええ、川で獲ってきちゃいました〜。これで……えっと『きっしゅ』? を作って欲しいんです」
「うん!」
 白陰から鮭を受け取ると直ぐに、調理を開始したのだった。
 さっきやっていた芋煮に使っていた窯を使わせてもらう。
「お〜い! 何か手伝う事はないか?」
 その後ろから急に声を掛けてきたのは降夜 真兎(ふるや・まさと)だ。
 何故か頭から本物の白兎の耳が生えている。
「……へっ?」
「いやぁ、なんかこんな天気の良い日にごろごろしてるのが勿体なくてよぉ、勢いで外に飛び出してこんなところまで来たのは良いがやる事がみつからなかったぜ! ついでにご飯貰えると助かる!」
「……うん、構わないけど……」
「あんだよ! さっきまではあんなに笑顔だったのに……さてはお前、人見知りってやつだな!?」
「……」
 空気が読めずにガンガン言いたい事を言っていく。
「はい、そこまでよ。うちのサトゥを苛めないでもらえるかしら? って、あらあなた……その兎耳……触らせてもらえる? 顔は馬鹿っぽくていただけないけど、その耳は可愛いわ」
 カーリーが助太刀に入ったと思ったら、直ぐに興味は可愛いものへと移ってしまったようだ。
「……僕もちょっと触りたい」
 カーリーの後ろに隠れながらもはっきりと意思表示をした。
「ん? ああ、別に構わないぜ? ふわっふわのぴっくぴくだぞ!」
 2人は心行くまで耳に触らせてもらうと満足したようだ。
 サトゥルヌスは少しだけ打ち解ける事が出来たようで、普通に接することが出来るようになっており、仲良く料理を始めたのだった。
 完成したのは、マロングラッセと白陰希望のキッシュだ。
「サトゥの作ったマロングラッセは最高ね」
「有難う!」
 カーリーは好物のマロングラッセにかなりパク付いている。
「流石、サトゥ。うまい」
 アルカナはひたすら食べ続けている。
「サトゥルヌスって凄いのな! うまいぜ! うおおお!」
 真兎は叫びながら頬張っていて、まるでハムスターの様になっている。
「ああ〜、やはり『きっしゅ』というのは美味しいですね〜」
 白陰もかなり満足しているようだ。
「次はお肉の『きっしゅ』も良いですよね。確かこの辺りの森には良いお肉が居ましたよねぇ?」
「ぶもっ!?」
 ジャタの森を見つめて言う白陰の言葉に、聞いていないはずのパラミタ猪が反応していた事は誰も知らない。