なし

リアクション

（９）特設スペース　〜夕の部〜

　５：００になった。

「これより抽選の発表を行います。皆様特設スペースにお集まりください」
　歓迎会で１番はしゃぎすぎてしまうのが打ち上げの時間帯である。警備スタッフの祥子は公序良俗に反する参加者を徹底的にとりしまるべく、特設スペース夕の部を見回っていた。司会のイオテスが当選者を読み上げていく。


■当選者
マイト・オーバーウェルム
本郷　涼介
神楽坂　翡翠
毒島　大佐
宇都宮　祥子


　イオテスはうふふ、と祥子の名を読み上げて笑った。
「賞品は直接ご自宅まで配送いたします。それではこれより打ち上げを……」
　イオテスが言い終わらないうちに、タタタッとフィルテシア・フレズベルク（ふぃるてしあ・ふれずべるく）がステージを駆けあがって鮮やかにマイクを取り上げた。
「突然ですがぁここでスペシャルショー『パラミタ刑事シャンバラン　春のシャンバラン祭り』を始めまぁす♪」
「あら？　この集まりは一体どういう趣旨なのでしょう？？？」
　あらあら？　と首をかしげるイオテスに、祥子はいったん自分のいる客席まで戻ってくるように伝える。どうも、スタッフには知らされていないショーのようだった。
「ふっふっふ〜……私は暗黒博士フィルテシアちゃん１７さいっ♪」
　祥子が本部に連絡を取り状況確認をしているうちにも、ショーは次の段階に進んでいる。悪の幹部になりきったフィルティアはマイク片手にノリノリで演技していた。
「この幸せいっぱいの歓迎会を〜悪の力でめちゃくちゃにしてやるわぁ…来なさぁいオークアイッ」
「オ、オークアイです……。がっ、がおー……」
「さぁ貴女の力で会場をめちゃくちゃにするのよ〜♪」
　恥ずかしそうにオークの着ぐるみを着た大神　愛（おおかみ・あい）がステージ上にあらわれ、日ごろストレス溜まっているのだろうか。バシン、バシーンとその辺のセットを壊し始めた。
「ううっ、事前に申請しとけばいいじゃないですか……暴れてやる！　暴れてやるぅ！」
　

「そこまでだ！　スゥウウゥウパアァァッ、ヒイイィイロオオォタアアァアッッッッイムッ！！」


　神代　正義（かみしろ・まさよし）……この世に悪が現れる時、彼は正義のヒーロー『パラミタ刑事シャンバラン』へと変身するのであった！
「これ以上の悪事……たとえ女王候補が許してもっ、この俺が許さん！　怪人オークアイ、覚悟しろ！」
「ば、馬鹿がステージを壊していく……」
　正義の出現に祥子はこみかみをピクピクとふるわせ、リンゴをつぶせそうなほど強く拳を握りしめた。ええい、本部からの連絡はまだか！
「瞬着！パラミタ刑事シャンバラン…うおぁー！？」
「はっ恥ずかしいんです！」

　ヴォゴッ！！　ドゥクシ！　ドゥクシ！！

　愛は正義が着地でバランスが不安定な状態をド突き倒しマウントポジションをとると、両手で力いっぱい殴り始めた。観客ドン引き。シャンバラン涙目。
「打ち合わせと違う！」
「悪には関係ありません〜！！」
　女王の加護の力で比較的軽傷で済んだものの、えーと、このままでは本当に死んでしまうかもしれないのでオークアイを突き飛ばし必殺技の構えをとるシャンバラン。
「これで終わりだ！　シャンバランダイナミック！」


　説明しよう！
　シャンバランダイナミックとは、悪を滅ぼすパラミタ刑事シャンバランの必殺技なのだ！！


「うぅ……扱いがひどい……」
　オークアイはぴゅーん！　と派手に飛んでいき、今夜の一番星になった。
　オレンジ色の光がパラミタの大地を染め上げる。かくして、明日を守るための戦いがまた１つ人々の心の中に刻み込まれた。悪は何度でもよみがえる……頑張れ、シャンバラン！　負けるな、シャンバラン！！　決戦の時は近い、かもしれない！！


〜続く〜


「続編が出るまでも無くここで潰してあげるわ！」
　本部から許可を取った祥子がチェインスマイトで全力でシャンバランを取り締まりに来た。
「何奴！？」
「この子たちはぁ我が組織の戦闘員よぉ♪」
「官憲の横暴？　こっちはそれが仕事なんだもの、大人しくして欲しいわね！！」
　等活地獄で鬼神のごとき猛々しさでせまる祥子、轟雷閃でそれを迎え撃つシャンバラン！！　


「折角皆で楽しめる時なんですもの。何事もなければと思っていましたが……」
「これは、もうこれでいいんじゃないかしら？　裏方さん、打ち上げやって下さいませ」
　イオテスと静香がスタッフ無線で伝えると、空には大きな花火が打ち上げられた。


　来年度も、素敵な１年になりますように。




おしまい