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うきうきっ、合同歓迎会!

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うきうきっ、合同歓迎会!

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(5)飲食スペース

 昼時の出店・飲食スペースは美味しそうなにおいにあふれている。そんな中、瀬島 壮太(せじま・そうた)は相棒のミミ・マリー(みみ・まりー)の元気のない後ろ姿を見てぶっきらぼうに声をかけた。
「……」
「仕方ねえな、今日は好きなもん奢ってやるから、いい加減にぶすくれんのやめろ」
 壮太とミミの友人も歓迎会に参加する予定だったのだが急な用事が出来たらしく来られなくなってしまったらしい。仕方ないので2人で来たのだが、ミミは1番仲のいい友達と遊ぶのを前日から楽しみにしていたので随分落ち込んでいた。
「え、いいの……?」
「……あんまり食いすぎんなよ、今日だけだぞ!」
 ミミは壮太の言葉を聞くと、ぱちくりと目をしばたかせた。財布の中身を確認しながら、目を合わせないで約束される。ミミは、自分たちがあまり……いや、全然、裕福ではないことをよく知っていた。壮太の財布は、あまりじろじろ見るのは失礼だから見ていないが僕を養ってくれる分で精一杯のはずだ。
「何だよ、食べねえのか? いくつか出店もあるみたいだし、食い物屋もちょっとはあるだろ」
「えっとね、じゃああのお店のメニュー、一通り全部食べたいな!」
 寂しいけど、いつまでも落ち込んでちゃだめだよね。次にお友達に会えたときにも、きっと楽しい思い出のほうがみんな喜んでくれる。あんまり心配かけないように、元気に振舞わなくちゃ。
 ミミはイルミンスール魔法学校お料理クラブの看板を指さして、壮太と一緒に美味しそうなにおいに向かった。


 イルミンスール魔法学校お料理クラブの部長、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)はせっかくのお祭りだからおいしいものを作って振舞いたいとあえて出店スペースでの参加を希望した。店のメニューはお好み焼きと焼きそばである。
「今日もおいしい料理を作って振舞うぞ!」
「「えいえいおー!」」
 調理担当の涼介は接客担当のパートナーであるクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)エイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)に向かって開店前の気合いを入れた。3人はイルミンスールの制服のローブをはずして、おそろいの白いエプロンをつけている。
「お好み焼きと焼きそば、くださいな」
「青ノリ、マヨネーズは全部大丈夫ですか?」
「うん、全部ください!」
 ミミが壮太と一緒に買いに来ると、エイボンがオーダーを取って涼介に伝えに行った。クレアは料理が届くまでに部活の宣伝をしようと、壮太とミミにちらしを渡した。ちらしには「オムレツから本格的なフルコースまで。ここで学べばあなたもシェフに」と書かれている。
「えっと、よかったらぜひクラブにも遊びに来てください!」
 クレアは笑顔で元気よく接客していた。彼女は涼介が、本来もっと凝った料理を作れることも知っている。しかし、場所に合わせた料理をふるまうのも料理人の腕の見せ所だと考えているのも分かっていた。
「あ! エイボンちゃん、お水私が持っていくね!」
 だったら自分はその料理をおいしく食べてもらえるように、お客さんが楽しくいられるお店を作ろう。クレアは少し内気な妹分と一緒に明るくお店を盛り上げていた。

「うぅむ、随分、自分の道場とは雰囲気が違うであります!」
 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)は自身の通っている名も無き道場と他の部活がどう違うのかを見学に来たのだが……いろいろ見ているうちに楽しくなってしまい、お腹がすいたのでご飯を食べに来た。コーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)ソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)もにぎやかな雰囲気を楽しんでいる。
「あら? お料理クラブ、ですか?」
 喫茶店でアルバイトをしているコーディリアは料理の文字が気になったらしい。ちょうどお腹も減っていることだし、3人はここで昼食をとることにした。
「いらっしゃいませ、3名様ですね!」
 だいぶ大きな声が出るようになったエイボンが席に案内すると、クレアが部活のチラシを配った。剛太郎はお好み焼きを3人前頼むと、配られたチラシをじっくりと眺める。
「女の子も可愛いし、こういう部活も素敵であります! 料理上手な女性というのも……憧れであります」
「美少女戦士部もいいものですわよ?」
 その言葉を聞いて料理が得意なコーディリアは嬉しくなったが、料理が苦手なソフィアは武術のほうに関心があった。しかし、涼介の作ったできたての料理が届くと3人とも無言でもぐもぐと食べている。とても美味しかったようで、店を出るときはこの店の料理の味を褒めるのに忙しかった。


 閃崎 静麻(せんざき・しずま)は軽食の屋台を出店していた。食べ歩きできる物、たこ焼き・ホットドッグ・フライドポテトなどや、ソフトドリンクを販売していた。軽食といっても屋台の前には簡単な飲食スペースも設置されており、次の特設スペースの出し物が百合園女学院推理研究会の演劇とありなかなか繁盛してる。レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)は接客担当でてきぱきと働いているが、どうも支給された服に不満があるようだ。
「………接客ですが、何故にメイド服なんですか! しかもスカートの丈が短いじゃないですか!!」
「本職じゃないけど逆にそっちの方が今回の場向きかもしれないしな」
「ううっ、これじゃセクハラ目当てのお客さんが来てしまいます」
 皆さんもそう思うでしょう!? そういう期待を込めて他のパートナーたちに同意を求めたものの、ミニ着物の服部 保長(はっとり・やすなが)と豊かな胸元を強調したメイド服の神曲 プルガトーリオ(しんきょく・ぷるがとーりお)は男性客を誘惑しつつ楽しそうに働いている。
「丈が短い着物じゃが、これはこれで男の目を引き付けそうでござるな……とと、今日は女性らしい喋り方で失礼しましょう。うふふ」
「セクハラ? どーんと着なさいどーんと。むしろこっちから誘ってあげようかしら?」
 ノリノリの2人に呆れながらも、自分は礼儀正しく対応させていただこうと思っていた……が、次の客である剛太郎が遠くに見えた時にレイナは固まってしまった。なぜなら、彼は自分が所属する名も無き道場の同胞であるからだ。
「こ、こんな恰好で出ることはできません……リオさん、そっちよろしくお願いします」
「純情な子だったら反応が見ものよね〜、了解♪」
「丁度良い機会ですから、忍に於ける色香の術の練習でもさせていただきましょう」
「おーい、やりすぎるなよー」
 店主の適当な注意を聞くと、2人は剛太郎をテーブルへ案内した。勿論彼にも2人の女性のパートナーがいるのだが、色っぽい格好の女性にくらくらしているようだ。
「なな……なんというか、目のやり場に困る店であります!」
 そういう反応が面白いのかプルガートーリオは暑いと言って胸元をパタパタとさせてみたり、保長も必要以上に顔を近づけてみたりとサービス精神旺盛な店だった。コーディリアは少々ご不満なご様子だが、ソフィアはそんな様子を見て割と楽しんでいるようだ。
「まったく、皆さんの遊びが過ぎます! 静麻さん、たこ焼き2つにポテト1つ!」
 レイナは演劇鑑賞用のおやつを買いに来た樹、コタロー、ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)に冷めないうちにお召し上がりください、と丁寧に接客していた。前日にきっちり仕込みをしておいたので、団体さんも大歓迎。特設スペースイベント目当ての客が押し寄せてきても、準備万端であった。


 女の子が大好きなの女の子のための部活、サフィズムの楽園では新入生を募集していた。彼女たちのブースはピンク色のシーツを敷き、可愛いぬいぐるみが置かれた女の子らしい空間になっている。
「サフィズムの楽園は女の子同士でおしゃべりしたり、買い物に行ったり、甘いもの食べたり、女の子の楽しみを追求する部活です〜」
「女の子同士で楽しいことしましょう!」
 どりーむ・ほしの(どりーむ・ほしの)と、パートナーのふぇいと・たかまち(ふぇいと・たかまち)はニコニコとかわいらしい笑顔で勧誘をしていた。姫野 香苗(ひめの・かなえ)もかわいらしい女の子を見ると、積極的に声をかけている。おや? あの娘も、いいな。そう思うと香苗はメイド服を着た神代 明日香(かみしろ・あすか)に近付いて行った。
「こんにちは♪ 女の子の部活、に興味ない?」
「ほえ?」
 香苗が目配せをするとどりーむもニヤリと笑って左右を固め、明日香が逃げられないようにさりげなーく捕まえてしまった。
「わあ、あなた、腰細いわね。うらやましいわ」
 どりーむは、つつつ……。と指で明日香の腰のラインをなぞっている。明日香は突然のことに何が何やらといった感じで、当惑気味に体をよじらせている。
「あの……えっと……」
「もうっ、あんまりくっついちゃだめっ」
 必要以上にくっつくのに焼きもちを焼いたふぇいとが、どりーむの袖をくいくいとひいて離そうとしている。そんなふぇいとを見ると、明日香は「あっ!」という顔をした。
「あの、もしかして魔法少女協会の方ですか?」
「え?」
「私、魔法少女に憧れているんですぅ」
 明日香はててて、とふぇいとに近付くとニコニコと握手を求めている。ちゃーんす! とどりーむと香苗は視線を合わせて意見をシンクロさせた。
「香苗、いいお店知ってるから皆で行こう行こう♪」
「賛成〜♪」
 そうして4人の女の子は、まだ名前の付いていない紅茶のお店でお茶をすることにした。


 スポーツ少女・ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)とパートナーの和泉 真奈(いずみ・まな)は紅茶と軽食の店を出していた。ここでは飲み物は紅茶、緑茶、ハーブティ。料理はドーナツや菓子パン、クラッカーサンドなど女の子らしく可愛い料理が中心だった。今回の飲食出店では唯一の女主人である。
「店がひらけるなら、いかなきゃ嘘でしょ!」
「仕方ないですね、私も手伝います」
 スイーツ作りを中心とした料理に熱を入れているミルディアは、紅茶店を開くべく張り切っていたのだが……なぜか店に名前はない。パンフレットにも紅茶・軽食の店という説明と、簡単なイラストが描かれているだけだった。真奈は料理が苦手なので給仕と会計を担当しており、香苗たちが来店するとその一行が座った席に水を運んできた。
「あら? ここってお店の名前、募集中?」
 どりーむが不思議そうに言うと、店の奥からミルディアが顔を出した。
「作るには作るけど、どれも決め手に欠けてね。まだ決めて無いんよ」
 ミルディアはただ美味しいものを食べて、幸せになって貰えれば満足だった。
「お菓子好きだったら、サフィズムの楽園もいいですよ〜」
 さっそく勧誘にきたどりーむの前に、真奈がさっと割り込んできた。接客用の笑顔を浮かべているが、手にはホーリーメイスを握りしめている。
「試食の負担が減るなら嬉しいですが……ただ、このお店で問題を起こすような不届き者がいるのでしたら、容赦はしませんわよ?」
「近々本店も作るんで、そんときにはヨロシク〜♪」
 おやおや、また団体のお客さんが来たようだ。ミルディンは奥に引っ込み、真奈は遥たち4人をテーブル席に案内した。


 遥は特設ステージの演出に協力した後は治安維持に尽力していた。だが、パラミタ猟友会 蒼空学園支部として新人スカウトにも興味があるようだ。
「活きのいい新人はいませんかねぇ……」
 この団体で求めている人材は少々変わっており、

・どんなゲテモノ食材でも『食べられるモノ』に仕立て上げられるスキルを持っている
・未知の食材に屈しない強靭な胃袋を持っている

 この2点が優遇される公益団体だそうだ。が、本来は野生生物の保護や有害生物の駆除により狩猟の適正化を図るのが目的である。ベアトリクス・シュヴァルツバルト(べあとりくす・しゅう゛ぁるつばると)は頼んだ紅茶に口をつけると、ほう、とため息をつく。
「遥と殿で手一杯だというのに……」
 英霊伊達 藤次郎正宗(だて・とうじろうまさむね)と、三毛猫の獣人である屋代 かげゆ(やしろ・かげゆ)に一日目を配るのは大変だったらしい。
「にゃ〜……あれもこれも美味しそうだぜ!」
 かげゆはミルディアのメニューを片っ端から真奈に注文している。藤次郎正宗も異国の菓子が珍しいとみえて、うまいうまいと食べまくっていた。
「そうだ、この料理番を勧誘すればいい! 給仕、今すぐ料理番を呼んで来い!!」
 藤次郎正宗の意見に賛同したかげゆも、裏に向かって突進していった。
「女性を勧誘するにはもう少し準備が必要なのだよ」
 ベアトリクスは2人の襟首をつかむと大人しくさせた。遥はその様子を見ながらも、確かに料理ができる人が来るのはいいかもしれない。と思っているようだった。