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八森博士とダンゴムシの見た夢

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八森博士とダンゴムシの見た夢

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7.さよなら、ダンゴムシ

 ヒラニプラに到着した八森博士は、異様な光景に遭遇した。
 戦場跡と見られるところに人々が集まっている。その中心にいるのはケーニッヒだった。
「お、博士もどうだ?」
 と、何かの乗った皿を手に八森博士へ歩み寄って来る。
「……えっと、これは?」
 何か嫌な予感がしながら尋ねると、ケーニッヒは元気よく答えた。
「ダンゴムシ料理ですよ。これがなかなか美味くって」
 目の前が真っ白になった。確かに退治してくれとはいったが、食べていいとは一言も言っていない。
「ぃ、いや……遠慮するよ……」
 頭痛を覚えながら、他へ視線を移す八森博士。
 すると、マーゼンが何かを運び出しているのを見つけた。大きな丸い物体――卵だ。
「き、君っ! それは……っ」
 足を止めたマーゼンが八森博士へ言う。
「ようやく場所が確保できたので、運び出しているところです」
「いや、そうじゃなくて」
 マーゼンは八森博士の様子に気づく。
「ああ、ダンゴムシの卵ですね」
「ぶ、無事だったのかい?」
「ええ、孵化するかは分かりませんが」
 退治してくれとはいったが……卵まで取っていいとは言っていない。
「か、返して、くれないかな?」
 マーゼンが首を傾げる。何故だと問う前にゴットリープが卵を取り上げた。
「ですよね! 素人の私たちに育てられるはずありませんし」
 と、八森博士へ手渡す。
「あ、ありがとう」
 マーゼンは不満そうな目をしていたが、やがてそれもそうだと納得する。

 ヴァイシャリーを去ろうとしていた武尊は、真菜華とばったり出会った。
「あ、さっきの!」
 と、真菜華へ指を差される武尊。
「な、何だよ?」
「ダンゴムシちゃん、どこ行ったの?」
 そう尋ねた真菜華の目は、泣き腫らした後のように赤くなっていた。
「……故郷に、帰った」
 武尊は目を逸らしてそう返す。
「故郷ってどこよ?」
「知らねぇよ! 自分で探せ」
 と、小型飛空艇へ乗り込む。
「……あんた、名前は?」
「国頭武尊だ」
「あたしは春夏秋冬真菜華。ダンゴムシちゃんの仇、いつか取ってやるんだからっ!」
 そう言い残し、去っていく真菜華。
 武尊はそんな彼女のことを気にしながらも、空へと走り始めた。