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第14章 戦闘兵科「訓練:人質救出」



「どんどん行きましょう。
 プログラムNO.13、『戦闘兵科』のPVです」

 画面には3Dモデルが映し出された。
 ワイヤーフレームで描かれた3階建て建物がゆっくりと回る。内部、2Fの一画に光点。画面隅には「目的:人質救出/無力化目標:誘拐凶悪犯」と表示がされた。
 3Dモデルの屋上と、地上1Fより矢印が伸び、光点に向かう。突入路を現しているのだ。
 画面切り替わる。画面隅に「協力:蒼空歌劇団俳優会」の文字。暗視モードの緑がかった画像で、3Dモデルで示されていた建物の実映像が映る。
 画面が二つに分割され、片方には屋上、片方は地上の建物裏口前が映った。屋上にはレイヴ・リンクス(れいう゛・りんくす)、地上にはサンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)とがつく。
 両方の箇所で、同時に行動が始まる。屋上では取り出したロープを手早く鉄柵に結びつけ、ロープを伝ってラベリングを開始、3Fの窓を破って建物内部に突入。地上では裏口のドアをプラスチック爆薬で破壊、ついていた二人の兵士がそこから突入。
 両チーム、物凄いスピードで2Fまで移動。目標のいる部屋のドアまで到達すると、持っていたライフルのストックでドアを破る。内部からの銃撃。サンドラがタワーシールドを立てて壁を作り、ヴィゼントがその後ろからライフルを構える。機関銃を両手で持った凶悪犯人ソルファイン・アンフィニス(そるふぁいん・あんふぃにす)の胴体に瞬時に狙いをつけ、数発発射。
 ソルファイン倒れると、レイヴが駆け出す。倒れているサンドラの胴体に、至近距離から手元のライフルで数発打ち込み無力化。そして、後ろ手に縛られていたリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の束縛を解放し、無線機のマイクに向かって、
「目標無力化。要救助者保護」
と簡潔に言った。
 画面静止した。レイヴのナレーション「もしもの時の確かな力」。
 画面に文字が入る。「戦闘兵科  >検索」


「人質救出のオペレーション、流れるような動きでしたね」
 差し出されたマイクに、レイヴは答えて曰く、
「協力してくださった蒼空歌劇団俳優会の方がとってもスジが良くて、教え甲斐がありました。教えている僕の方が見習いたい、と思うくらいで」
「最後の凶悪犯人へのダメ押しというのは、あれは『トドメを刺した』という事なんでしょうか?」
「? あぁ、そういう言い方もありますね、僕達は『無力化』と言っていますけど」
「無力化ですか」
「はい。最優先するのは人質の生命、次に重要なのは自分を含めた味方の生命。あの状況を自分に仮定したとき、敵の安全を斟酌できるほどの余裕は僕にはありませんでした。
 犯人役の人には一応防具をつけていてもらいましたけど、やっぱり痛かったと思います。ソルファインさん、今日来ていたらホントすみませんでした」

 観客席の片隅で、ソルファインはひっそりと答えた。
「いや、仕事ですから」
 隣に座っていたヴィゼントは感じ入ったように息を吐いた。
「骨がありやすねぇ。見直しましたぜ旦那」

「では、レイヴさん。PVをご覧になった皆さんに、一言お願いいたします」
「当たり前の事ですけれど、普段から積み重ねる訓練こそが、実戦時の成果に繋がります。訓練の時は実戦の気持ちで、実戦の時は訓練の気持ちで。教導団で自分を鍛えたい方は、ぜひ、僕たち『戦闘兵科』までいらして下さい。
 どんな時でも、あなたを必ず生きて帰します」


 観客席のレン・オズワルド(れん・おずわるど)の肩が叩かれた。
 振り向くと、気の弱そうな女の子が途方に暮れたような顔つきで立っていた。胸には「映画研究会」のバッジをつけている。
「すみません、冒険屋ギルドのレン・オズワルドさんですか?」
「そうだけど? 何か用かい?」
「ちょっと来ていただけますか?」