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帰神祭へ行こう

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帰神祭へ行こう

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■エピローグ


 深夜に近づき、人のまばらになった砂浜で、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)たちによる一斉清掃が始まった。
 祭りが始まる前に見た、あの美しい白浜と同じ場所とはとても思えないほど無残に踏み荒らされた白浜には、いたる所にゴミが散乱している。ジュースのこぼれたあとは、上から砂をかけて埋めるしかないが、それ以外の物は、全て拾う意気込みだった。
「ルカちゃんや、ほどほどにの。もう夜中じゃから」
「あらっ。ルカたちなら大丈夫です! 慣れてますから! シラギさんこそお疲れでしょう。早めにお休みになってください」
「いやいや。ワシの管理の浜辺じゃのに、おまえさんらだけ働かしてワシが何もせんわけにはいかんよ」
 そう言って、スキを引いて砂に埋まったゴミを取ろうとする。
「かわりましょう」
 メシエがすばやくスキを取ろうとしたが、かわすシラギの方が早かった。
「もう1本、あそこにあるからの。それで手伝っておくれ」
「分かりました」

「ねぇ! エースはどこ行ったの? 全然姿が見えないけど」
 パンパンのゴミ袋で山となった一角で、ルカルカが腰に手をあてる。
「コンテストの優勝者たちや巫女さんたちを慰労すると言って、花束持って出かけたきりだな」
 同じくゴミ拾いをしていたダリルが答える。
「エオリアも?」
「あいつはクッキーを配るんだと言っていた。ほら、ルカの手製巾着に入れていたやつだ」
「んもぉ。これを道の向こうのゴミ捨て場まで運んでほしいのに」
「それなら俺のオルガにさせよう」
 こっちへ来いと合図を送る。アリス少女姿のダリル特製ゴーレムが来て、ダリルの命令通りにゴミ袋を数個、ひょいと抱え上げると坂をのぼって行った。あの調子なら、3往復もすれば済むだろう。
「助かるわ。
 にしてもエースったら。きっと鼻の下伸ばして巫女さんとキャッキャウフフしてるんでしょ! あとで見てなさい」
 ぷんぷん肩をいからせて、ルカルカは再びゴミ拾いに戻っていった。

 メシエとシラギがスキで砂浜を掘り、埋もれていたゴミを掻き出すと、それをルカルカとダリルが拾って行く。
 それらがひと通り済んだころ、エースとエオリアが戻ってきた。
「おそーい!」
「ごめんごめん。思っていたより全然数が多くてさ。こっちはもう済んだ?」
「あまーい。舞台の撤収作業をちゃんと残しておいてあげましたからねっ」
 と、コンテストと神楽で使用した舞台を指す。
「海の方はさすがに夜は危険だから、明日の朝からの作業ね。どうせ今日は泊まりだし」
「分かった」
 エースもあらためて神社へ出向いて分かったのだが、この村は本当に老人ばかりの村だった。帰郷していた若者たちもほとんどが今夜あるいは明日の朝一番の乗合馬車で戻って行くという。
 祭りの疲れもあるだろうに、ご老体にこんな作業はさせられない。
 舞台の方に向かいかけたところであることを思い出し、足を止めた。
「ああ、そうだ。崖の向こうで打ち上げパーティーやってる人たちがいたから、一応声がけしといたよ。ゴミはちゃんと責任持って持ち帰ってくれるって」
「助かったわ」
「じゃあ俺、あっちに行くから」
 ルカルカと分かれて舞台に近づく。エースの耳に、ダリルにちょっかいを出すエオリアの声が聞こえてきた。
「にしても、漁師の夫婦役は意外と候補者が少なかったですよね。あれならきっとダリルさん、通りますよ。来年は夫婦役に立候補してみてはどうですか? エレーナさん、来年には戻ってこられるのでしょう? お2人でしたらなかむつまじく、すてきな夫婦役を演じられると思いますよ。
 なんでしたらいっそ本当のふう――ムゴッ」
「おまえはもう口閉じてろ」
 最後に何を言おうとしたか、察しをつけたエースがすかさず後ろから口を覆う。
「悪いな、ダリル。うちの者が迷惑かけて」
 じーっと見つめるだけのダリルに、あせりながら言う。
「問題ない」
「すまない。ちゃんと言いきかせとくから」
「――ぷはっ。何するんですかエースっ」
「いいからおまえはこっち来い。俺と一緒に舞台の撤去だ」
「え〜〜。僕はみんなの姿をデジカメ撮影している方がいいんですが」
「いいから! おまえはこれからずっと俺の監視下! 特にダリルの周囲2メートルは立入禁止!」
 ずるずるエオリアを引っ張っていくエースの姿を見送って、ダリルは清掃に戻ろうとする。しかし流した視線の先に、じっと立ったまま動かないシラギの姿を見て、そちらへ近づいた。
「どうかしましたか?」
「ん? ――いや、なんでもないよ。おまえさんらには本当にお世話になったね。これで明日のワシらの仕事もぐっと楽になる。ありがとう」
「海上の舞台の解体でしたら、明日の朝われわれが帰る前にしておきます」
「ほう、そこまでしてくださるんか。そりゃ本当にありがたいのう」
 目を細め、顔をしわくちゃにして心からうれしそうに笑う。
「シラギさん、ここの祭りは本当にすばらしいものでした。来年も、来させてもらってもよいでしょうか」
「祭りがすばらしいものになったのは、おまえさんたちみんなが来てくれたおかげじゃ。小さな村の祭りが、若いおまえさんらのおかげで息を吹き返した。本当にありがとうよ。来年は、迎神祭にも来ておくれ」
「夏にもまた、海水浴に来させていただきますよ」
 スキに両腕を預けて、メシエが言う。
「今度は日焼け対策を万全にして、スイカ割りへの参戦を誓おう! ああ、愛しの夏の太陽、しばしのお別れだよ…」
「今だって太陽は出てないわよ、メシエ。それは明日の朝言ったらどう?」
 すかさずルカルカがツッコミを入れる。
 どっと起きた爆笑は潮風に乗って、岩崖の向こうのセシルたちの元まで届いた。


 
 乗合馬車の最終便で帰宅した生徒の1人、影野 陽太(かげの・ようた)は、深夜を回ってもパソコンに向かうのをやめなかった。
 手を休めることなく、何時間も打ち込み続ける。
 早朝の神社の様子、輝く白浜に始まり、屋台の準備から舞台の設置。そしてコンテストの様子や、輝いていた参加者1人ひとりの表情まで。
 祭りに参加した生徒全員の生き生きとした姿を撮影したビデオを編集、静止画をアルバムソフトに入れ、コメントを手書き風に入れたり、解説が必要だと思われた箇所にはリンクを貼って、カーソルを乗せれば別窓が開くように設定した。
 サーバーにパス付きのファイルとしてアップし、学園の掲示板にパスと祭りのアルバムであることを書き込んでおく。それでも外部への流出は防げないだろうが、撮影のときはきちんと趣旨説明をして、画像の確認と掲載の許可を得ているので、プライバシー的な問題はないだろう。
 そしてそれとは別に、シラギからのメッセージや学園生からのメッセージ、自分で入れた解説等を加えて編集加工した、ただ1人に対しての大勢の思いが込められた、究極の帰神祭動画集をDVDに焼く。
「環菜。多分あなたは、この祭りには参加できないことを、心のどこかで感じ取っていたんですよね…。だから…。
 必ず戻ってきてください。そしてみんなと一緒にこれを見て、笑い合いましょう。環菜…」
 陽太はぎゅっとDVDを抱きしめた。

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、またははじめまして、寺岡です。
 前回あんなことを書きながら、またしても破ってしまいました。申し訳ありません。
 今回、ちょっと精神的につらいことが起きまして、1週間ほど何も手につかない状態になっていました。
 そして、そのせいだとは思いたくないですが、またも1ページ消去してしまっていて…。納品まで気づかずにいました。
 バックアップで半分よみがえりましたが……結局第7章の半分ぐらいを書き直しています。……シクシク。
 まだちょっと引きずっていますが、もう少しで復活できると思います。

 今回、展開上コンテストの司会役が必要でしたが、司会アクションがなかったため(募集してなかったのであたりまえですが)、2回分前倒しでリーレンが再登場することとなりました。はい、正気だとああいう、とても面倒な子です(笑)多分、憑かれていたときの方が数倍まともだったのではないかと思われ…。

 そしてわたしの予想のはるか斜め上をいくアクションもいただきました。まさかこうくるとは。ビックリです。おかげで話とキャラに深みが出たのではないかと思い、感謝感謝です。
 皆さんのアクションを見ると、サプライズというか、こういう驚きがいつもあって、そういう点がすごく楽しいなぁと思います。 

 あ、そうだ。
 要のカンロアメ事件。あのアクション結果は、実際わたしが体験したことが元になっています。
 カンロアメのわたがしは凶器ですよ〜〜わたし、思い切りかじりついて口の中数箇所切っちゃいましたから。それ以来、機械封印して作っていないんですが、ほかのアメだと普通なんでしょうかね? 怖くて作れないのでいまだに謎です。
 と、ここまで書いて気がつきました。「わたがし」「わたあめ」両方のアクションをいただきました。関西と関東で呼び方が違っているんですね。ただ、シラギさんは関西の方という設定のため「わたがし」で統一させていただきました。ご了承ください。


 さてさて。
 ここまでご読了いただきまして、ありがとうございました。
 次回はバトルシナリオですが、そちらでもお会いできたらとてもうれしいです。
 もちろん、まだ一度もお会いできていない方ともお会いできたらいいなぁ、と思います。

 それでは。また。


※10月11日 呼称の間違い、誤字等微修正させていただきました。