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伝説の焼きそばパンをゲットせよ!

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伝説の焼きそばパンをゲットせよ!
伝説の焼きそばパンをゲットせよ! 伝説の焼きそばパンをゲットせよ!

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第三章 5分前の混乱

 空京の片隅。まさに知る人ぞ知る場所に駄菓子屋があった。
「こんにちはー」
 風紀委員のクロス・クロノス(くろす・くろのす)神野 永太(じんの・えいた)火村 加夜(ひむら・かや)マクスウェル・ウォーバーグ(まくすうぇる・うぉーばーぐ)が駄菓子屋を訪れる。既に2人の少女が腰掛けていた。
「ほら、この人達だよ」
 駄菓子屋の主、村木婆ちゃんが4人を指差した。
「どうやら杞憂だったようですね」
「あはは、そうだねぇ」
 腰掛けていた2人は、顔を見合わせて笑った。そんな様子を見ても、気を抜かない神野永太が問いかける。
「君達は?どうしてここにいるの?」
 黄色い髪の少女は、礼儀正しくお辞儀する。その隣の少女は、幾分のんびりと頭を下げた。
「天御柱学院の葉月 可憐(はづき・かれん)と申します。こちらはパートナーのアリス・テスタイン(ありす・てすたいん)です」
「お手伝いしてくれるそうだよ。わざわざ早くから来て待ってくれてたんだ」
 村木婆ちゃんの口ぞえで、風紀委員の4人は状況を理解した。
「伝説の焼きそばパンのお知らせを拝見しました。ここから運ぶ途中でヒャッハーする輩が出ないとも限らないので、私達でお手伝いできるのではないかと思いまして。でもそのくらいのこと、山葉さんなら考えていて当たり前ですよね」
「ありがとう。ガード役は多ければ多いほど心強いわ。一緒に行ってもらえるかしら」
 火村加夜の言葉に、可憐とアリスは嬉しそうにうなずいた。
「じゃあ、これをよろしくね」
 村木婆ちゃんが紙袋を5つ持ってくる。ソースの香ばしい匂いが皆の鼻をくすぐった。
 風紀委員の4人が1つずつ。可憐とアリスが2人で1つを持った。そして火村 加夜(ひむら・かや)は、スキル歴戦の立ち回りを、マクスウェル・ウォーバーグ(まくすうぇる・うぉーばーぐ)は、スキル殺気看破で、万一の襲撃者に備える。
 蒼空学園までの途中、何ヶ所かで怪しげな影を見かけることがあったものの、そのいずれもが6人のガードを見ると早々に姿を消した。


 蒼空学園では、朝から浮ついた空気が学園全体を包んでいた。もちろん原因は伝説の焼きそばパンである。
 用も無いのに購買部を除く生徒がいるかと思えば、運ばれてくるであろう校門を眺める者も後を絶たない。前者は焼きそばパンの影も形も無いのを確認して、後者は風紀委員の腕章をつけた生徒が見回っているのを見て、それぞれの教室に戻っていく。興奮が徐々に高まった午前中の最後の授業の4時間目、購買部の周囲に動きがあった。

 喫茶エニグマと書かれた移動販売車が、購買部からやや離れたところに止まると、椿 椎名(つばき・しいな)が車から降りた。同乗してきた不破 勇人(ふわ・ゆうと)と協力して、テーブルやイスを並べていく。
 椿 椎名(つばき・しいな)のパートナーであるソーマ・クォックス(そーま・くぉっくす)ナギ・ラザフォード(なぎ・らざふぉーど)は、テーブルクロスやランチョンマット、ナプキンなどを用意する。やがて車の周囲に、オープンテラスができ上がった。
「よっしゃ、次は売りもんやな」
 椿 椎名(つばき・しいな)不破 勇人(ふわ・ゆうと)は、それぞれ焼きそばパンを作り始める。そんな2人を横目に、ソーマ・クォックス(そーま・くぉっくす)ナギ・ラザフォード(なぎ・らざふぉーど)は、飲み物の準備をする。
「ナギちゃん、今日はコーヒー、どうしよう」
 フワフワの尻尾を揺らしながらソーマが聞くと、赤いエプロンを整えながらナギが、今日の客入りを考える。
「そうですね……、オーナーや不破さんの焼きそばパンを買っていただいた方には、エニグマコーヒーをサービスしますから。全員がコーヒーを飲むとは限りませんが、いつもより多く用意しておきましょう」
 車の中では、椿 椎名(つばき・しいな)不破 勇人(ふわ・ゆうと)が、炎と格闘していた。
 椎名はコッペパンを横に半分にし、熱々のフライパンで焦げ目をつける。そこにソース濃い目で野菜小さめ、刻んだ紅ショウガを混ぜた焼きそばを挟む。
「よし、焼きそばバーガーできあがり!」
 椎名が最初の1つを皿に乗せると、勇人もほぼ同時に皿を出した。
「こっちは韓国風焼きそばパンや!」
 互いに相手のを食べる。
「まぁまぁやな。もっとも韓国風焼きそばパンには敵わんやろ」
「悪くはない。ただ焼きそばバーガーの方が美味いよ」
 どちらも瞬く間に食べ終えたところを見ると、負けず劣らず美味しかったはずだが、互いに本心は見せない。それどころか2人の目が鋭く光る。
「じゃあ、勝負するか?」
「ええやろ、どっちがはように50個売り切るかや!」
 再び炎との格闘が始まった。

 放送室では、放送部員が特別放送の準備に追われていた。
「テス、テス、聞こえますか?」
 放送部員が呼びかける。
「はーい、聞こえまーす!」
 羽瀬川 まゆり(はせがわ・まゆり)は、カメラに向かって手を振った。放送室のモニターに、ウィンクしたまゆりの姿が映し出される。
「こっちもOKだよ!」
 鈴虫 翔子(すずむし・しょうこ)もカメラを前にOKサインを作る。もう1つのモニターに、翔子の笑顔が映った。
 昨日、山葉校長の許可を得た2人は、放送部員を交えた打ち合わせを行った。主にまゆりが購買部前の中継を担当し、翔子が校内を動きながら生徒を追っかける。その後、ダイジェストや名場面集を編集して、ネット上にアップすることも決まった。
「ボクがやるからには、ガンガン行くからね!」
「私だって、お昼休みの教室に熱い戦いをお届けするわよ!」
 即席コンビながら、既に息のあった2人。昼のチャイムが鳴るのを待つばかりだった。