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花粉注意報

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花粉注意報

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黄色く染まった森の中――

 何本ものパラミタ杉が立ち並び、黄色い花粉を放っていた。
 その花粉の黄色い流れに逆らうように、別の黄色い生物……蜜蜂が飛んでいた。
「みんな、こっちだって」
 蜜蜂たちに先導されながら、森の中を詩穂が進んでいく。
 その身体を覆うのはごく僅かな布地のみ……花粉が舞い散る森の中を身軽に進むその姿は、まるで森妖精のようだった。

 進むにつれ、次第に周囲の黄色さが増していく……足元に積もった花粉も量が多い、確実に近づいている。
 そして、独特の花をつけた木々が一向の目の前に現れた……パラミタ杉の群生地だ。

「こいつがパラミタ杉の花か……」
 パラミタ杉を見上げながら、ラルクは流れる汗をぬぐう。
 既に感染しているラルクだったが、これ以上花粉を吸収するとどんな影響があるかわからない。
「さっさと採取しないとな……うおっ!」
 足を滑らせ転倒するラルク。
 足元はくるぶしの高さまで降り積もった花粉と落ち葉でかなり不安定なのだ。
「大丈夫か、捕ま……うわっ!」
 倒れたラルクに手を差し伸べる洋介も足を滑らせてしまう。
「いてて……あー、服の中に花粉が……へっくし!」
 転んだ拍子に服の中まで花粉が入ってしまっていた……
 くしゃみをする洋介……急がないと症状が進行してしまうだろう。
「くそ……えらいベトつきやがる」
 花粉はラルクのふんどしの中にも入ってしまったようだ。
 ふんどしの中でベタベタする花粉……なかなか気持ち悪い。
「さっさと終わらせて風呂に入りたいぜ……」
 緩んだふんどしを締め直し、採取作業を開始する。

「くちゅん、くちゅん、はっっく、ふぅ」
 イナはくしゃみをしながら花粉を掘り起こすと、その下で生き残っている草を採取していく。
 薬の材料になるのかもしれない。

 木の周囲で作業する一行をよそに、ジガンはパラミタ杉をよじ登っていた。
 滑り落ちないように花粉のベタベタをふき取り、器用に登っていく……
「へへっ……こいつは大漁だ」
 パラミタ杉の花は缶コーヒー程の大きさで、枝葉の先に密集するように咲いていた。
「このまま花ごといただいていくぜ」
 次々と花をもぎ取り、持ってきた袋に詰めていく……

「はっくしょん! ……みんな、そろそろ撤収しないか?」
 そんなジガンを見上げながら、洋介が提案する。
 もう充分な量を採取出来ただろう……長居は危険だ。
「くちゅん……そうね、早く帰って薬を作ってあげないと……私、来た道覚えてます」
「よし、ずらかるぞ」
 今度はイナを先頭にして、来た道を引き返す一行だったが……
「やっと帰ってきたわ……みんな、もう少しの辛抱です」
「よし、調合開始だ……と言いたい所だが……すまん、先にふんどしを代えてくる」
 花粉まみれのふんどしがよほど不快なのだろう、真っ先に着替えに走るラルクを苦笑しながら見送る一行……その人数が少ない。
「あれ? ジガンさんはどちらに?」
「あ……そう言えば、騎沙良もいないな……」
 ……途中まで一緒だったのは間違いないのだが……いつの間に……どこかではぐれたのだろうか……
 二人を探しに引き返すべきかと洋介が考えた、その時……

「待ちかねたぞ、はよう特効薬を作るのじゃ!」
 ……洋介の姿を見つけた咲耶姫が駆け寄ってくる。
 はよう、はようと急かしながら洋介の手を引く咲耶姫……彼女なりに心配していたのだろう、なかなか手を離してくれない。
「わかったからっ! ……もう少しだけ、待っててくれないか?」
「むぅ……」
 どこか不満げに手を離す咲耶姫に急いで完成させると約束し、洋介は調合を開始した。


 その頃、森では……

「蜂さんたち、ありがとう、ちゃんとご褒美をあげないとね……」
 ご褒美を待っているのだろうか……蜜蜂たちが詩穂の周りを旋回していた。
「やっぱり、あま〜いのがほしいよね……」
 そう言って彼女が取り出したのは蜂蜜だった。
 容器の蓋を空けると、それを傾けて手のひらに注ぐ。
 ……とろり、と流れ落ちる蜂蜜をうっとりした目で見つめる詩穂。
「さぁ、どうぞ召し上がれ」
 そう言って彼女は手に取った蜂蜜を自らの……下着姿の身体に塗りたくった。