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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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■蟹料理の鉄人たち
 ――誰かが、言った。うっそうとした深い森の奥に、温泉を護る巨大な蟹が棲んでいると。
 そして記憶が確かならば、その巨大蟹はとても美味であることを。
 さぁ、名乗りを上げた猛者どもよ。その腕を存分に振るい、最高の料理を作り上げるのだ!

 ……と、ナレーションが流れてきそうな雰囲気の調理場では、調理器具の設置作業が進んでいた。
 樹月 刀真(きづき・とうま)は周辺の石を集めては積み上げ、かまどを作っていく。数台ほど作り上げると、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が『火術』を使って火をおこしていった。ちょうどそこへ、戦闘班が食材となった温泉蟹を次々運び入れていく。
「温泉蟹もきたことだし、早速料理を始めましょう!」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)の掛け声とともに、料理班が慌しく動き始めた。祥子は蟹鍋を作るようで、温泉蟹の大きな甲羅を刀真と月夜を含んだ三人で持つと、それをひっくり返して鍋代わりにする。甲羅の中身(蟹味噌。衝撃を受けたのか、なんか少しグチャグチャ)は別の皿に取り分けておく。
 具は蟹の風味を損なわぬよう、鶏肉と野菜たっぷりの鍋にする予定のようだ。祥子がその準備をしていると、刀真と月夜はいい連携で焼き蟹用の蟹の身を切り分けて受け渡しをしているのを見かける。
(うんうん、あっちは平和そうね〜)
 先ほど、ケイとメニエスの様子もちらりと確認(奥へ運ばれるところ)したが、実に平和そうだ、とアバウトに頷いていたりする。
「あ、そうだ。このキノコも入れちゃいますか」
 そう言って祥子が取り出したもの。それはハート型のピンク色をした、おおよそ食用とは思えないキノコ。名前を『どぎ☆マギノコ』と言い、祥子が探索中に拾ったものらしい。石突部分を切り取ると、そのままかに鍋へポチャンと投入した。
 並行してご飯も炊かれ始め、蟹鍋や焼き蟹の匂いが立ち込め始める。そんな中、奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)も温泉蟹の調理に取り掛かろうとしていた。
「温泉蟹――『温泉』の名が付いているには何か意味がありそうね。調理のしがいがあるというものよ」
 そう言いながら、手にした包丁を振るい蟹の身を蟹しゃぶ用に切り分けていく。その手つきは見事なもので、次々と蟹しゃぶ用蟹の身が完成していった。 その横では蟹以外の具材を切る祥子の姿が。そのまな板の上には――ウーマが横たわっていた。
「隠し味にちょうどいいかも。誰が用意してくれたのかしら?」
「……いやいやいや、それがしは天使でありシーフードではない。さも普通に用意されていた魚介類として扱わないでもらいたい!」
 ナチュラルに調理されそうになっていたがすぐに脱出し、ふわ〜っと温泉のほうへ飛んでいく。調理班のほぼ全員がその飛び去る姿をシーフードとして見ているような視線だったのだが、それに負けることはなかった。……頑張れ、ウーマ。
 一方、調理場の一角では『喫茶「麗茶亭」秘境温泉支店』と掲げられた看板のもとでレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)の二人は慌しく料理の準備をしていた。右鋏の身やだしを使い、蟹飯を作っている最中のようだ。ミスティのほうは白味噌・蟹のだし・昆布を使ったシンプルな味噌汁を調理中だったりするが。
 川の水の水質がいいおかげか、なかなかの味を作ることができた様子。納得いく味にレティシアは満足げに頷くと、綺麗な葉っぱで作った食器に蟹飯を盛る。
「あれ、ここにあった蟹の剥き身知りません?」
 ミスティがレティシアにそんなことを尋ねる。どうやら、具として使おうとしていた蟹の剥き身が無くなってしまったらしい。
 その剥き身の行方はというと、洋介と諷嘉の手元にあった。ちゃっかりと蟹の剥き身をいただいていたようだ。二人はとても嬉しそうである。

「うぅ〜……すーすーする」
 一足先に湯船から上がった沙織は、ルディアと一緒に配膳の準備を進めていた。しかし、その様子はどこかおかしい。
 ……というのも、制服の下に水着を着てきたまではよかったのだが着替え用の下着を忘れてしまったのだ。おかげで現在、制服の下は何もつけてないしはいていない。羞恥極まりないこの状況で、沙織の顔は赤くなっている。
(あれ、沙織さまなんだか顔が赤い……風邪でも引いちゃったのかな?)
 その様子を不思議に思ったルディアは沙織に近づき、背伸びしながらおでこへ手を当てて熱を測ろうとした。
「ひにゃあぁぁぁっ!?」
 突然の行動に沙織は驚き、その場で倒れて尻餅をついてしまった。そして――ルディアは見てしまった。
「きゃあぁっ!! ――うぅ、はじゅかしぃ……」
 すぐにスカートで見られた所を隠す沙織。その瞳は涙目になっており、顔は真っ赤になってしまっていた……。
 
 ――そうこうとしている内に、各料理人による様々な蟹料理が完成したようだ。

 蟹の風味を前面に出し、巨大蟹の甲羅を鍋代わりにした香り立つ逸品『蟹鍋』。
 食べやすい大きさに切り分け、『氷術』の氷水でしっかり洗い締め盛り付けた『蟹の刺身』。
 そのぷりぷり感は一線を画す極上の『焼き蟹』、『蟹しゃぶ』。
 上質な水で炊き上げ、ほぐれた蟹の身が重なる旨みをかもし出す『「麗茶亭」特製蟹飯』。そしてだしが効いてる『蟹のお味噌汁』。

 どの料理も、負けず劣らずの逸品物ばかりである。
「温泉蟹さんの命に感謝し、いただきますっ!」
 ルイの掛け声を合図に、戦闘や探索、温泉準備でお腹を空かせていた探検隊一行はすぐにそれらに飛びつく。量が量なのでバイキング形式で振舞われることとなり、調理場は大盛況になった。脱衣所を作り終えた詩穂や、料理班の手伝い全般をしていた歌菜、それにレティシアとミスティも給仕係としてさらに慌しくなっていく。
「ん〜、歌菜のスペシャル料理美味しい〜♪」
 余興ゲームで勝者になったルカルカはご褒美である『歌菜特製・温泉の湯を使った蟹和食御膳(蟹天ぷら、蟹湯引き、蟹しゅうまい、蟹饅頭)』を満足そうに食していた。絶品なのだろう、その顔はすっかり緩みきっている。
 エオリアの介抱のかいもあり無事湯当たりから復活したエースは、お酒と蟹の刺身で舌鼓を打っていた。
「あまり飲まないでくださいね、エース。……あ、この蟹のお刺身に殻がついてますね」
 そう言いながらエースのために蟹の殻を取るエオリア。その表情は幸せそうである。その一方で、羽純はダリルから蟹に関するうんちくを聞きながら、歌菜が振舞う蟹料理(こっちは普通の)を楽しんでいた。

 蟹鍋組のほうではとても楽しげな笑い声が響いていた。
「くぅ〜、やはり蟹鍋には酒が一番じゃのぅ♪ 次は温泉に浸かりながら酒を飲みたいわい♪」
 すっかり上機嫌で、お酒を飲みつつ蟹鍋を堪能中の桜華。その横ではルイも美味しそうに鍋をつついている。
 ある程度食べ終わると、鍋担当の祥子が先ほど炊き上がったご飯を入れ、蟹雑炊にしていく。それもまた絶品であり、レキもすっかり魅了されているようだ。……ちなみに、どぎ☆マギノコは形からしてあれだったためっかうまい具合に回避され鍋に残ったままだったりする。
 刀真と月夜も蟹料理を楽しんでいる。どうやら自分たち用に別に作っており、さらに蟹茶漬けを用意して一緒に食べていた。月夜が美味しそうに食べている様子を見て、刀真は安心したようにしている。
 この後、二人は温泉に入る相談をしたりしていた。月夜曰く、刀真は混浴に入りたそうな顔をしていたらしい……当の本人は否定していたが。

 と、盛り上がる食事会がまだまだ続く中、温泉のほうにも変化があったようで……?