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灰色天蓋

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灰色天蓋

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プロローグ


 着実に赤いマーカーの範囲と密度の広がっていくモニターを眺めながら、金 鋭峰(じん・るいふぉん)は眉を潜めた。
「状況はどうか」
「フライシェイドは現在も増加中。少なくともシャンバラ中の個体が集結しつつあるようです」
 後ろで控えた部下も、硬い声で答える。
「ただ、地上まで到達している個体はまだ僅かです」
 幸いにも、フライシェイドは高速飛行できるモンスターではないため、高高度からの降下には時間がかかっているらしい。
 おかげで、この突然の危機的状況下で、救援要請を送るだけの時間があったのだ。
 だが。
「それも時間の問題だな」
 数は少ない内は良い。
 一匹一匹は大したことの無いモンスターなので、契約者数人でも事足りる。
 だが、空を灰色に染めるほどのモンスターの群れは、遠からず全てが地上に降下を終えるだろう。そうなれば、小さな観光地一つ、簡単に壊滅してしまう。
 更にタイミングの悪いことに、本来なら出撃するはずはずだった近隣の部隊は、丁度別件で出払っている。他から駆けつけるのでは間に合わないのだ。
 悪い情報ばかりが重なる中「ですが」と部下が口を開いた。
「要請に応じて、契約者達も集まりつつありますし、ロイヤルガードの現地到着も確認されています」
 そして、現場に到着した契約者たちの名を上げる。
 この大量のモンスターに対して、決して多いとは言いがたいが、契約者は一人一人の戦力が大きい。
 続いて各方面への援護要請の状況についても報告を続けたが、こちらは本格的な降下までには間に合わないだろう。
「焦れるな」
 とにかく時間もなく、原因も分からない。現状を打開する手立ては、今の所現地へと向かった、彼ら契約者たちの存在しかないのだ。
「後は、現場を信じるしかありません」
 部下の言葉に、金は複雑な顔で「そうだな」と短く返した。