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【チュートリアル】モンスターに襲われている村を救え! 前編・1

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【チュートリアル】モンスターに襲われている村を救え! 前編・1

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第四章

 家々の合間に出来た路地裏。
「……と」
 ユルク・ベルンシュタイン(ゆるく・べるんしゅたいん)は、共に行動していた村人たちへ軽く目配せをしてから、自身も壁に背を付け、暗がりに息を潜めた。
 乱暴な足音を鳴らして数十匹のゴブリンやホブゴブリン、オークたちが存外近いところを通って行く。
 モンスターたちの生臭い体臭すら届く距離だった。
 傍らの子供が悲鳴を上げそうになったのに気づいて、その唇に、立てた人差し指を置いてやる。
 やがて、モンスターたちの気配がわずかに遠くなり、ユルクは薄く息をついた。
 村人たちがめいめい極限の緊張から放たれたのを一瞥してから、ユルクは「さて」と零した。
「マルティナの話では、私たちはこの先の通りを突っ切るしかないわけだが……」
 相手の情報系統を撹乱するために何か出来ることは無いかも考えたが、上手い方法は見当たらなかった。
 代わりに、仲間からの情報を元に、比較的モンスターたちの目を掻い潜れるだろう逃走経路を選んでいるのだが……それでも、幾つかの危険な橋を渡らなければならないことには違い無かった。
「ねぇ……モンスターに見つかっちゃったら……」
 村人たちの不安を代表するように、少年が泣きそうな声を漏らす。
 と、その少年の頭を撫でる大きな手。
 手の主――文挟 栞(ふばさみ・しおり)が落ち着いた様子で笑みを浮かべ。
「心配しなくても大丈夫だよ。僕たちが付いてる。仲間も戦ってくれているしね」
 彼の声と様子は二十歳そこそことは思えないほど、何かしら安心感があった。
 村人たちの不安がやや解れたのを感じながら、ユルクは彼の言葉に続けた。
「あなた方は私たちが、この身に変えても護る。安心してくれ」
 言って、ユルクは通りの様子を伺ってから、村人たちに合図を送り、彼らと共に村の外を目指した。

 モンスターたちに見つからないように村の中を進む途中。
「先ほどは助かった」
 とユルクがこっそりと言ってきたので、栞は「ん?」と訊き返した。
「彼らの不安を和らげてくれた」
「ああ、そのこと」
 合点がいって、栞は柔らかく微笑んだ。
 手を引いていた子供が転びそうになったのを、軽く腕を取ってフォローしてやってから、
「こう見えて人生経験長いから。パラミタに来たのは最近だけど」
「以前は何を?」
「日本で、調理師を」
「調理師?」
「そう、それでパラミタへ旅行に来た時――」
 と言いかけたところだった。
 脇に伸びた路地の向こうに、身体の大きなオークが姿を表したのは。
 それは相手にとっても突然の事だったらしい。
 慌てて武器を構えようとしたオークを、栞が適者生存の威気で怯ませ、ユルクが碧血のカーマインで“牽制”する。
 その間に――
「走って!」
 栞は少年を抱え上げ、村人たちと共に駆けた。
 自分もユルクも、村人たちを守りながらモンスターを倒す余裕など無いと自覚していた。
 ユルクの撃ち鳴らす銃声を背に、路地の間を駆け抜けていく。
 ユルクはモンスターを足止めしながら、村人たちの後へと続いているようだった。
 やがて、路地の向こうに通りが見える。
 危険なのは分かっていた、が他に選択肢は無かった。
 おそらく、通りには、今、多くのモンスターたちが居る。
「頼むよ――なんとか手筈通りに」
 栞は抱えた少年や村人に不安を与えぬように笑顔のまま、独り祈るように呟いた。
 通りに響く、バイクの排気音。

『2軒先の路地から栞たちが出てくるから、モンスターを引き付けられるだけ引き付けろ!』
「ありがたい役回りだ」
 桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は、わざと排気音を激しく鳴らしながら、バイクで通りを駆けていた。
 頭の中に届いているのは精神感応によるエヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)の声。
 エヴァは通りに沿って並ぶ民家の屋根の上から指示を届けてくれていた。
『自分は美味しい特攻で、あたしに裏方させてんだかんな! しっかりやれよ!』
『分かってるさ。エヴァっち――援護、頼む』
 モンスターたちは一斉に自分へと武器を向けていた。
 ホブゴブリンの中にはアサルトカービンを持った者もおり、それなりに訓練されているらしい銃撃が、バイクの動きを追いながら虚空を貫いて己へと迫る。
 グンッとハンドルを切りながら身体を横に投げ、栞はドリフトの要領で思いっきりバイクを寝かせながら銃撃を避けた。
 モンスターへと距離を詰め、地面を蹴って車体を起こすのに合わせて、灼骨のカーマインの銃撃を叩きこんでいく。
 自身の死角から煉を狙ったモンスターに対しては、エヴァがサイコキネシスで操った鉢植えが飛んでいたらしい。
 バキャンッ、という派手な音を視界外に聞きながら、煉はモンスターたちの方へと挑発的な視線を向けた。
「これだけ雁首揃えてるってのに、まさか俺一人倒せないなんてことは無いよな?」
 言葉が通じた者も居たらしく、怒り、興奮した様子でモンスター達が煉へと襲い掛かってくる。
 煉はすぐに車体の先を巡らせ、モンスターたちを背にして、通りの建物へ沿うようにバイクを走らせた。
 民家の前を通り抜ける際にエヴァを後部席へと拾い上げ、モンスター達がしっかりとこちらの後を追っているのを確認する。
「任務クリア、かな?」
「ま、上々だろ」
 エヴァがニィッと笑う。
 モンスターたちの後方では、村人たちを引き連れた栞たちが路地から駆け出て、こっそりと別の路地へと潜り込んでいくのが見えた。
 ここまで来れたなら、後は村の外まで安全な経路が続いているはずだった。

 しかし――――


■□■

 恭介とパーシバルの視線の先には、鏖殺寺院の者と思われる黒騎士たちが居た。
 数は3人と少ない。
 それなりの実力者であることは、身のこなしから察しが付いた。
 彼らは、村の端の地面から顔を出す、曰くありげな巨石に機晶爆弾を仕掛けているようだった。
「連中、何をしているんだ……?」
「石を破壊しようとしてる」
 パーシバルの言葉に、恭介は、くったりとした視線を送った。
 そいつは分ってる、と目で言う。
 パーシバルは、そんな事など気付かなかったかのように黒騎士たちを見やったまま言葉を続けた。
「あの巨石の下に何かがあるのか、何かの封印なのか、そのどちらかだと思うけど何故今になってそれに手を出してきたのかな」
「何かしらのキッカケで石の中にお宝が眠ってるのが分かった、ってのは駄目か?」
「わざわざモンスターをけしかけた意味が無いじゃない。イコンまで使ってるし……これは、俺たちが誘われた形になるのかな?」
「誘われた?」
「別の言い方をするなら『生贄』だか『実験対象』だか、とにかく必要だったんだろうね、俺たちみたいな手頃な力を持った連中が」
「……あの石を破壊する事で何かしらが“出現する”と考えるのが、妥当ってことか」
 恭介は携帯を取り出し、マルティナへ連絡を取った。
 戦闘中だったらしく、彼女の声の向こうでは銃撃音や金属のぶつかり合う音が響いていた。
 事情を説明する。
「――ああ、そうだ。俺たち自身が生贄か、何かしらのテストケースに使われる可能性が高い。だから、早く村人を連れて撤退を……」
『恭介さんたちはどうするつもりですか?』
「俺たちは――」
 と、恭介はパーシバルが両手を挙げているのに気づき、
「俺たちは、“生贄”か“捕虜”だ。まあ、上手くやってみる」
 そう携帯の向こうのマルティナに告げ、大人しく両手を挙げた。
 背中には、ホブゴブリンが構えた銃口が押し当てられていた。
 そうして、二人は鏖殺寺院に捕らえられたのだった。


 やがて。


 村の一端に大きな爆発音を鳴り響いた。
 巨石が瓦礫となって崩れ落ちた、その次の瞬間――大地より“黒い光”が噴出した。
 それは空へと貫く間欠泉のようだった。
 噴き上がった膨大な量の黒光は、村を覆い、その上空すらも飲み込んでいく。
 そこに居た全ての者を包み込んでいく。

■□■

 飛空艇内、イコン格納庫。

「ねえ、何があったの!?」
 はイコンのコックピットから飛び出し、整備用具を担いだいづるに問いかけた。
 いづるが片目を笑ませて、遥の頭をぽんっと叩く。
「まずはお疲れさん。まー、初の実戦にしては綺麗な状態で返ってきたんじゃないのかい? こりゃ」
 プラウドを見上げながら、いづるが緩い調子で言う。
 遥は、よいしょっと頭の上の手を退けてから。
「何があったのか聞かせて!
 村の辺りが黒い光に包まれて――それから、ボクらにはすぐに飛空艇への撤退命令があった。
 その後は? 村はどうなったの? そこに居た人たちは!?」
「村は……」
 いづるが頬を掻きながら遥の方を見下ろし、言った。
「分からない。それどころか……この船も黒い光に飲まれたまんまだ。身動きが取れないらしい」


■□■

「これは……」
 マルティナ・エイスハンマー(まるてぃな・えいすはんまー)は、周囲を見回し、喉を鳴らした。
「マルティナちゃん!」
 モンスターをあらかた倒したメルキアデス・ベルティ(めるきあです・べるてぃ)が駆け寄ってくる。
「これ、一体どういうことだ? 俺様たちは一体――」
 彼らは奇妙な暗闇の中に居た。
 見上げれば、空には闇が広がっており、そこに一切の光は無い。
 だというのに、視界は昼間のようにクリアだった。
 村々の建物も仲間たちの顔や地面に転がるモンスターたちの姿、色までもをハッキリと認識することが出来た。
「とりあえず、皆さんと合流することを優先しましょう。
 メルキアデスさんは怪我人のフォローを」
「オーケー! マルティナちゃんの頼みなら!!」
 カッと、やたら綺麗な敬礼を見せてから、メルキアデスが怪我人の方へ向かっていく。
 と――空を見上げていた流水が声を上げた。
「空が、割れていく……」
 彼女の言葉通り、暗がりでしか無かった空に一条の光の線が走り、ゆっくりと闇が晴れ始めていた。
「ふぅん?」
 流水の隣で空を見上げていたユーリが気楽な様子で額に手をかざしながら、闇の晴れた景色の向こうへ目を凝らし。
「あれは……山?」
「見覚えがあるな……ああ、そうか。あれはアトラス傷跡だ」
 瑪瑙が言う。
 そして、瑪瑙は続けた。
「つまり、“ここ”はシャンバラ大荒野だという事らしいな」


担当マスターより

▼担当マスター

蒼フロ運営チーム

▼マスターコメント

シナリオへのご参加ありがとうございました!
公開が遅れてしまい誠に申し訳ありません。

皆様が置かれた詳しい状況については、
後編のシナリオガイドにてお報せさせていただきます。

後編の発表は1月11日を予定しております。
こちら、後編も「無料で遊んでプレゼント!」で付与されるポイントで遊ぶことが出来ます!
プレゼント対象など詳しい条件はコチラをご覧ください!


また、次回、下記のお二人は鏖殺寺院に捕らえられた状態から開始となります。
詳しい開始状況については後編をお待ちください。

・長谷部 恭助(SFM0049293)
・パーシバル・カポネ(SFM0049466)


なお、今回、皆様の置かれた状況は、この前後編シナリオ内のみでの扱いとなります。
他のマスターシナリオへのご参加に、制限などは一切御座いませんのでご安心ください。