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リアクション
第一章:イーグリット×アサルト+キラーラビット
背中のリュックサックにはニンジン型クラッカー。ウサミミヘアバンドのちょっぴりぽっちゃりした女性が天御柱学院校舎内を歩いている。
どうも人探しをしているようだ。
――彼女はどうも人間離れしている。なんだかメカっぽい。機晶姫にもメカニカルな外見をもつ者がいるが、それとも違った感じがする。
出会う学生に彼女はこう訊ねている。
「”イーグリット”という名前の青年を探しているのですが。髪型はショート。髪と瞳は黒色。肌は黄色人種系。
身長は165cmをちょっと越えるかくらいで……ビームサーベルを持っているのですけれど」
訊ねられた学生達はウサミミをつけた彼女に面食らっているが、その質問内容にも面食らっていた。
わからないと学生が答えると、きちんとした2足歩行をしてはいるが、人間離れした速さで次の学生の元に移動している。
ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は、そんな彼女に同様の質問を受けた。
「イコン達が実体化して学校内を歩き回っているって寿子さんからメールをもらってあたしも探しているんだけど
……あなたのお名前を聞いてもよろしいかしら?」
「今回の作品では”百合原うさぎ”と呼んでください。正式名称は『農場兎ストマックアサルト』。LG001-VB『キラーラビット』です」
「……やっぱりそうよね。そうとしか思えなかったわ!」
『農場兎ストマックアサルト』はネージュ・フロゥの契約者がメインパイロットなのだ。
「次世代型イコンを見るのが目的で天御柱に来たんだけど……まさかあなたが具現化していたなんて」
「はい☆武装らしい武装がほとんどない彼女なら事態の解決に理想的な協力をいただけるかと思いまして、
まことに勝手ながら描かせていただきました☆」
魔法少女ポラリスの姿になっている遠藤寿子がネージュに説明する。
「――ニンジン型クラッカー、こう見えて結構威力があったりするのよ? これは描かない方がよかったんじゃ……」
「擬人化イコンは! その装備も含めて擬人化しないとイコンになりませんから〜♪」
魔法少女ポラリスの姿の寿子は手に持つ杖をくるくると回しながら答える。
「……寿子さん、自分ワールドにはいってるわね。じゃあ、”うさぎさん”。いっしょに”イーグリット”を探しましょう」
「よろしくお願いしましたのです〜。私は次の作業に行ってきます☆」
寿子はその場から立ち去って行った。
「寿子さん、徹夜で魔法少女の力を出したままで原稿描き上げたって聞いたけれど……睡眠不足ナチュラルハイかしら。気になるのは……」
”百合原うさぎ”の設定である。具現化したイコンは寿子の描いたストーリーや設定を「性格」として持っているようなのだ。
「うさぎさん、あなたは”イーグリット”のことをどう思っているの?」
――恋愛対象だったりなんてしたら余計にややこしくなるわよ?
「私は彼をずっと弟のように可愛がってきました。”コームラントさん”は”イーグリット”のベストパートナーだと思うのです。
今回は綺麗な”ブルースロートさん”に心惹かれたり、”アサルト”の積極的な愛情表現に揺れたりしていますが……
”イーグリット”の一番の理解者はやはり”コームラントさん”だと思うのです。」
――『ずっと』弟のように『可愛がってきた』設定なのね。そういわれてみればお姉ちゃんキャラだよね、キラーラビット。
「あたしもそう思うよ! ”イーグリット”くんは”コームラント”くんの元に――原稿に戻るべきだよね!」
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【キャラクターDATA:百合原うさぎ】
イコン名:キラーラビット(LG001-VB)
機体名:農場兎ストマックアサルト
自称名:「百合原うさぎ」。
ちょっぴりぽっちゃり気味のお姉ちゃん。世話好きで気さくな性格。
ひとたび怒ると頭のウサミミヘアバンドやニンジン型クラッカーなどを武器にその体格を活かして突っこんできます☆
今回は弟のように可愛がっているイーグリッドに、何とかコームラントとよりを戻してもらいたいと思っています。
武装:ニンジンミサイル、スピア
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メカニカルな建物と内装の天御柱学院の校舎に溶け込むかのようにメカニカルな風貌の美少年がもの思いに耽っていた。
「今までは実感がなかった。だけど……今は」
手を見つめ、握る。そして手をひらく。その手を太陽にかざして言う。
「これが――3次元世界――なんだな」
「連絡を受けた時は耳を疑いましたが、まさか本当にこんなことが起きているとは……」
灯真 京介(とうま・きょうすけ)の右側に立つ灯真 楓(とうま・かえで)が言う。
京介の持つ白いプレートメイルがこう続ける。
「長年生きてきた私も……こんな事態に遭遇したのは初めてです」
「ここは校舎だからね。もし戦うことになれば、怪我人が出る可能性が高い。説得で解決できれば良いんだが……」
白いプレートメイル。魔鎧状態のリル・ファティス(りる・ふぁてぃす)が京介と楓に言う。
「持ってますね、ビームサーベル」
「そう。迂闊に刺激してあれを使われたら大変だ。あの武装、人間用の武装じゃないからね。イコン用だから……」
「確かに兄上の言う通り、この校舎内で戦うよりは説得した方が良いですね。
校舎内で戦闘になれば、怪我人が出る可能性が非常に高いですから」
「説得で事を収束させた方が良いと、私も思いますが……」
リル・ファティスが魔鎧状態を解き、人間の形態になって言った。
「応じてくれるでしょうか」
「寿子さんやアゾートさんの見解だと『戦闘が主なストーリーじゃないから、
恋愛が主な作品のキャラクターだから純粋な武力行使の可能性は低い』そうだよ
……しかし、こうもメールに書いてあったんだよね『イーグリットは今回、とてもナイーブ』なんだそうだ……」
「純粋な武力行使?」
楓が京介の顔を怪訝そうに見つめる。
「……それは考えないでおこうよ」
リルが二人に言う。
「それでも、やらないよりはやるほうが良いですよね」
「何を?!」
京介と楓が叫ぶ。
「説得ですけれど……何か問題が?」
「いや、ないない、問題ない! ないよ! さぁ、”イーグリットくん”に声を掛けようか」
京介はそう言い放つとイーグリットに歩み寄った。
「”イーグリットくん”だよね?」
「そうだけど……」
美しい髪がそよ風になびき、黒目がちの目はうるんで光沢を放っていた。
――絵に描いたような美少年ってこういうやつなのか。って、事実、『絵』なんだけど、”こいつ”は。
「ちょっと話ししても、いいかな」
「原稿から出てきた俺を探しに来たんだね」
「原稿に戻る……気はないかな?」
「今は……それよりも」
「”ブルースロートさん”のことですか?」
リルが”イーグリット”に目線を合わせるように座って話しかける。
「……」
「イーグリットさん。心にコームラントさんとブルースロートさんを思い浮かべてください。
そして、どちらが自分にとって大切な存在なのか……よく考えて、はっきりと選択した方が良いです。間でふらふらするのが一番いけませんよ」
伏し目がちになったイーグリットにリルは吸い込まれそうになっていた。
――イーグリット、あなた……案外、睫毛が長いですね。男のくせに。
「貴方にはコームラントという恋人がいるよね。コームラントか、ブルースロートか、はっきりした方が良いと思うよ。それが貴方のためでもある」
――京介様。あなた、なんだかいつもより頼もしく感じます……
「恋人がいるなら、他の相手に目移りするのは不誠実だと思います。本当に好きなのは誰なのかを、はっきりと示した方が良いです」
――楓。あなたにも企業のロゴがコスチュームにデザインされていたりしませんか?
「詩穂もそう思うな」
”イーグリット”の隣に座ったのは騎沙良 詩穂(きさら・しほ)だ。
「他の相手に目移りしちゃだめだよ、”イーグリットくん”」
「……」
「”イーグリットくん”の一途な気持ちに答えてくれたのが”コームラント”なんだよね? ”イーグリットくん”の一途なところ、好きだったなぁ」
”イーグリット”が顔を伏せる。”イーグリット”の後ろに立つ京介は彼の白いうなじを見た。
――おいおい、『美少年すぎて他のイコン、男女問わずに狙われてる設定』って言っても、こんなとこにまで色気があるなんてのは反則だよ……
――っと、えーっと……美少年設定の”イーグリット”でこうだから、『傾国の美女設定』の”ブルースロート”!
――”ブルースロート”になら興味ある。うん!
「詩穂にも一途に想い続けている人がいます、詩穂の最愛の人アイシャちゃんです。
シャンバラ宮殿の祈りの間に入ってから一年近くなりますが、それでも詩穂は信じて待っている。正直とても寂しいよ。
でも目先のことに惑わされると、きっと先の未来になって後悔すると思うから。だから再会したときに共に笑って泣きあいたいの……。」
”イーグリット”がはっと顔を詩穂に向ける。両頬は紅潮し、瞳の潤みは増していた。
――美、美形だわ……アイシャちゃんのことを想うと泣きそうになるけど、こんな顔で泣かれそうになったら、こっちも涙が出ちゃいそうじゃない!
「でも、俺は……俺は”ブルースロート先輩”を護らないといけないんだ」
「それは”アサルト”からってことかな?」
桐生 理知(きりゅう・りち)が”イーグリット”に話しかけた。隣には理知の友達、遠藤寿子が魔法少女ポラリス姿で立っている。
「寿子ちゃんの作品できみたちのことは知ってるよ。でも、質問していいかな? 一番理解してくれて、一番傍に居たい人は誰?」
「……」
「私も憧れる事はあるし、ドキドキすることもあるよ。でも恋人以上の人は絶対いないんだから!!」
「でも、今は。今は”アサルト”から”ブルースロート先輩”を護らないといけないんだ」
「イーグリット、二股とか良くないよ!」
「”ブルースロート先輩”を護りたい。俺が原稿から出てきた意味はそこにあると思う」
「イーグリット!!」
「今までは実感がなかった。だけどそれも終わりだ」
「イーグリットーーー!!!」
”イーグリット”は直上に浮遊し、方向を90°転回し飛び去って行った。
「……イーグリット。なんだか、なんだかこの気持ちって」
理知は少し泣きそうになっていた。
「”イーグリットくん”のモデルは辻永 翔(つじなが・しょう)さんです☆」
「え?」
寿子の発言で流れ出そうになっていた理知の涙が涙腺内で蒸発した。
「天御柱のイーグリット乗りといえば辻永翔さんじゃないですか〜」
「じゃあさ、じゃあ、他のイコンにも人間のモデルがいるの?」
「だいたいは設定しています☆」
「”コームラント”は?」
「山葉 聡(やまは・さとし)さんに決まってるじゃないですか〜」
「ちょっと待って、ちょっと待って! まさか二人が恋仲にあるってわけじゃ」
「そんなわけあるわけないです! もし事実、それがあってもそれはそれで……うふふふふ。
カップリングは友人、先輩後輩、上司部下、教師生徒。さまざまな人間関係を『愛に昇華』したものなのです!」
「山葉聡さんと辻永翔さん……そうだったの、あれ」
「『腐変換』ですべてを見ればもうそこは。ふふふふふ」
「腐女子。本物の腐女子ってこうなのね」
「おいでませ、この”ふつくしい世界”へ!」
「――徹夜明けの『腐女子』ハイテンション……恐るべし」
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