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魔女のお宅のハロウィン

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第4章 アーデルハイトとハッピーハロウィン

「子どもたち、喜んでくれるといいですね」
ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は、
アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)とともに、
ハロウィンのお菓子の準備をしていた。

ザカコは、アーデルハイトによく似た魔女の仮装をしている。
大きな魔女の帽子に、マント姿であった。
さすがにマントの下は真似できないので普通の服だったが。

「うむ、そのリンゴのお菓子、うまそうじゃのう」
「味見しますか、アーデルさん」
「ああ、ありがとう」
ザカコがにっこり笑い、アーデルハイトにアップルパイを一切れ差し出す。
「おお、しっとりしてうまいな」
「よかったです。りんごのクッキーもありますよ」
お菓子をほおばるアーデルハイトに、ザカコは、笑顔を浮かべる。

(今年は、変な魔女の大釜もありませんし、
お酒の飲みすぎみたいなのにも注意して、
騒ぎが起きないようにしないといけませんね)

今のところ、平和だったが、
ザカコはアーデルハイトの行動や周囲に注意を払っていた。



アーデルハイトの部屋の前にて。

執事服に狼の被り物を身につけた沢渡 真言(さわたり・まこと)と、
小悪魔の衣装を着た三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)は、
いずれも5歳くらいの姿になっていた。

幼馴染の2人は、子どもの時に戻ったように、
ハロウィンを楽しんでいる。
「ここがアーデルハイトさまの部屋だね!」
真言の手を引っ張って歩いてきたのぞみが、
ドアを見上げて言った。
「どうやったらびっくりしてもらえるかなあ」
「あたしにまかせて! おもいっきりどーんってとびら開くの!」
首をかしげる真言に、のぞみが、胸を張って請け合った。
「いっせーのせ、で、どーんって開こう!」
「うん、わかった、のぞみちゃん!」
元気いっぱい言ったのぞみに、真言は屈託のない笑みを浮かべ、うなずく。

「いっせーのせ! どーんっ!」
「どーんっ! がおーっ!」

2人は、思いっきり、ドアを押して、
アーデルハイトの部屋を訪れる。

「ふふ、よく来たな。小悪魔と狼の執事か」
アーデルハイトが目を細める。

「うん、悪魔のご主人様と、執事なの!」
「本物の魔女さんだー!」
のぞみは、ご主人様と名乗っただけあって、鷹揚に言い、
真言は純真に、目をキラキラさせている。

「じゃあ、お菓子をあげましょうね」
「だめだよ、まず、『とりっく・おあ・とりーと』っていわないと!」
「ああ、そうでしたね」
のぞみにつっこまれ、ザカコはニコニコする。

「じゃあ、改めて、とりっくおあとりーと!」
「おかしくれなきゃいたずらするぞー! がおー!」

「ふふふ。わしも、本来なら、
かわいい子どもは鍋で煮込んでしまうのじゃが……。
なぜか、今日は力がでないようじゃ。
おまえらにいたずらされてはかなわん。
さあ、お菓子をあげよう」

「やったー! 大成功!」
「わーい!」

のぞみと真言は、ハイタッチして喜ぶ。

「アーデルさん、ノリノリですね」
「私は本物の魔女じゃからのう」
ザカコに、アーデルハイトがウインクする。

アップルパイやりんごのクッキーを出してくる、
ザカコとアーデルハイトにのぞみは言う。
「ねえ、せっかくだから、おやつはみんなで食べようよ!
みんなで一緒に食べたほうが、おいしいし、楽しいよ!」
「ああ、そうじゃな」
「じゃあ、紅茶を入れましょうか」
アーデルハイトとザカコはうなずく。

「私もいっしょにお茶準備するー!」
真言が、食器を運んでザカコを手伝い、執事らしさの片鱗を見せる。

こうして、一行は、ほのぼのとおやつを食べるのだった。