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魔女のお宅のハロウィン

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第5章 恋人たちのハッピーハロウィン

騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、
吸血鬼の少女 アイシャ(きゅうけつきのしょうじょ・あいしゃ)と一緒に、子どもになる薬を飲んで、
メイド服姿で、お菓子をもらいに行く。

「ふふ、アイシャちゃん、メイド服っていつもどおりだね」
「詩穂もそうじゃないですか。
でも、白虎の耳と、尻尾、かわいいです」
「ありがとう、アイシャちゃん。
アイシャちゃんも八重歯がゴシックな吸血鬼らしくてかわいいよ」
「これも、もともとですよ」

超感覚で耳と尻尾をはやした詩穂と、ゴシック吸血鬼メイドのアイシャは、
手をつないで、笑いながら走っていく。

一方、
酒杜 陽一(さかもり・よういち)高根沢 理子(たかねざわ・りこ)も、
子どもの姿になり、魔女の仮装をしていた。
陽一は理子の影武者としてそっくりの姿なので、
まるで、双子の小さな魔女のようであった。

「よういちくーん」
「だめだよ、りこちゃんってよんで、りこちゃん」
「えー、なんだか、まぎらわしいね」

あはは、と笑いあい、2人の魔女は走って行った。

魔女の仮装をした辻永 理知(つじなが・りち)と、
狼男の仮装の辻永 翔(つじなが・しょう)は、
詩穂とアイシャ、そして、陽一と理子に、お菓子をねだられる。

「とりっくおあとりーと!
お菓子をくれないと、いたずらしちゃうよ!」
「魔女のおねえさん、狼男のおにいさん。
お菓子をくださいな」

「あたしたちにもおかしちょうだい!
そうしないと、2人がかりでいたずらするよ!」
「よういちく……じゃない、りこちゃんの発想はすごいんだから!
あたしたちをてきに回すととってもこわいわよ?」

「ふふ、みんな、かわいいね。
じゃあ、順番にお菓子をあげようね」

理知は、小さな子どもたちの頭をなでなでしながら、
順番にお菓子を渡していく。

「ありがとう、魔女のおねえさん!」
「ありがとうございます!」

「わーい、おかしいっぱい!
どうもありがとう!」
「よかったね、りこちゃん!」

子どもたちは、歓声を上げて走っていく。

「ねえねえ、今のもしかして……」
「ああ、詩穂さん、アイシャさんと、理子さんだったような……。
でも、理子さん2人いたから……ああ、そうだよな」
翔は、影武者の陽一のことに思い当たる。

「子ども化する薬、ほんとにあるんだね!
ねえねえ、私たちも飲んでみようよ」
「え? おい、理知。また無茶を……」
「いいから早く早く!」

理知は、テーブルの上の薬を飲んでしまう。

みるみるうちに、背が小さくなって、
理知は子どもの姿になった。

「しかたないな」
くすっと笑って、翔は、理知の頭を撫でる。

「わー。ふしぎー!
ねえ、翔くんも早く飲んで!」
「ああ、わかった」
うなずき、すぐに、翔も子どもになる。

「なんだか身体が軽くなったみたい!
早くお菓子をもらいに行こう!」
「ああ、そうだな」

理知と翔は手を取り合って、
大人のいるほうに走って行った。



「ねえねえ、アイシャちゃん、おかしいっぱいもらえたね!」
「ええ、詩穂のおかげです。
どうもありがとう」
「せっかくだから、交換会をしようか?」
「そうですね!
理子さんたちも誘いましょうか」
「うん、そうしよう!」

詩穂とアイシャは、戦利品を前ににこにこしている、
陽一と理子のもとにやってきた。
「お菓子を交換しよう!」
「いいよ、あたしたちも、いっぱいおかしもらったんだ!」
詩穂の提案に、理子になりきった陽一が言う。
「ふふ、どっちが理子さんかわからないですね」
「そうかな? あたしはわかるけど?」
「あたしもわかるー!」
アイシャの言葉に、理子と陽一が言う。

「って、2人はお互いのことわかって当然だって。
じゃあ、お菓子、広げて!」
詩穂がツッコミを入れつつ、てきぱきとお菓子を仕分けしていく。
「小さくなっても詩穂はメイドさんらしいですね」
「アイシャちゃんこそ」
詩穂とアイシャは笑みを交わす。

こうして、一同は、各々、好きなお菓子を交換して、
楽しく食べるのであった。