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【2021年】パラミタカレンダー

リアクション公開中!

【2021年】パラミタカレンダー
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リアクション



【12月】



 耳を澄ませばあちらこちらから聞こえる鈴の音、鈴の音、鈴の音。それが実際にどんな音色やリズムでも、頭の中で響くのは、たったひとつのリズム、ジングルベル。
 ──今日は12月24日、クリスマスイブ。
 イルミンスール広大な森の一角は、今日は朝から騒がしい。
 鈴の音、鐘の音、お喋りに笑い声。
 金銀赤青、きらきらお星様にお月様、可愛いリボン。ジンジャーマンの飾りがクッキーに紛れて、間違って食べようとしてひと騒動。雪の結晶のこっちは、本当にアイシングされたクッキーで、今度はペットが食べてしまってまた大騒ぎ。
 静かになるどころか、お昼が過ぎて夕方になっても、一層賑やかになる一方。
「ずいぶん進みましたねぇ」
 夕方になる頃には、上空から見た木々はすっかり飾りつけられて、立派なクリスマスツリーになっている。“空飛ぶ魔法↑↑”で舞い上がった神代 明日香(かみしろ・あすか)は、一通り眺めを確認すると、高度を下げた。
 森の中に立つ、木製の小屋のテラスまで高度を下げて、再び飾り付けを開始する。
(これだけ綺麗なんですからぁ、きっとエリザベートちゃんも喜んでくれますよねぇ。プレゼント交換してぇ、私のプレゼントを開けたエリザベートちゃんがぁ、すっごく可愛い笑顔で「ありがとうですぅ」って言ってくれてぇ……)
 妄想に思わず笑みがこぼれる明日香だったが、
「あのー、もういいと思いますよ」
「え?」
 声にふと手元を見れば、目の前の枝はところ狭しと飾られたオーナメントで垂れ下がり……、今にも重みでぽきりと折れてしまいそうになっていた。明日香は慌ててオーナメントを握って紐を解きつつ、
「あわわ、いつの間にっ……は、は、……くちゅんっ」
 くしゃみをひとつ。
「マフラーしてくれば良かったかなぁ」
 ひとりごちる明日香に地上から、先ほどの声の主──コートにマフラー、手袋で身を包んだ神崎 輝(かんざき・ひかる)が冗談めかして綿の雪を差し出した。
「代わりにこちらはどうですか? 暖かいですよ」
「私もツリーになっちゃいましょうかぁ」
 明日香は受け取った綿を枝の間にかける。
 輝もまた、腕にかけた、電飾やオーナメントがたっぷり入った籠から、色とりどりのグラスボール、雪の結晶、天使などなどを取り出して、枝にくくりつけていった。
 ひとつの枝にフェルトのトナカイをぶら下げ、次の枝に向かおうとして、
「一人じゃさみしいよね」
 振り返って、赤鼻のトナカイの傍にサンタをつけた。
 はるばる蒼空学園から一人で来た輝が、こうやってみんなと飾り付けをできているんだから、トナカイもひとりぼっちじゃ可哀想だ。
「ただでさえ寒いしね」
 言ってみて寒さに気がつけば、空からちらちらと、雪が降り初めていたのだった。
 
「皆さん、お疲れ様。温かい紅茶を入れてきたから休憩にでもしませんか」
 二人が飾り付けに勤しんでいると、紅茶が乗ったトレイを手に、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)が顔を出した。
「今年もイルミンスールは、ホワイトクリスマスになりそうですね」
 空に目を配りながらティーカップを配っていると、彼の背後からも声がした。
「こんばんはぁ。ちょっと早いですけどぉ、来ちゃいましたぁ」
「確かに真夜中には早いですね」
「ふふふ、たまにはこんな服も良いですよね?」
 赤に白のもこもこ縁取りの帽子と上着、お揃いのスカート。可愛らしいサンタの少女が、胸に大きなリボンをかけたプレゼントを抱えている。
 百合園女学院のメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)だ。これから始まるクリスマスパーティの参加者だった。
「今日はお招きいただいてありがとうございますぅ」
「寒い中ありがとうございます。宜しければどうぞ」
「嬉しいですぅ」
 涼介が差し出す湯気の立つティーカップをメイベルは受け取り、口をつけた。この季節特有のクリスマスティーの、オレンジピールとスパイスの香りが鼻先をくすぐる。
 皆、紅茶で暖まりながら話がはずむ。今日のパーティのこと、プレゼント交換のこと、ケーキに秘密の演出に、この一年あったことに……、
「今日はきっと沢山の方がいらっしゃるんですよねぇ」
 あれから顔を見ていない友人にも会えるんでしょうか、とメイベルが思いを馳せていると、
「メリークリスマス!」
 ──空から声した。
 見上げた彼らの目に映ったのは、一人のサンタ。
「まさか本当のサンタさんでしょうかぁ」
 小型飛空艇に乗ったサンタは、ゆっくりと地上に滑り降りる。
 メイベルは期待に満ちたまなざしを向けているが、いくらサンタが近代化しても、飛空艇に運送会社のマークを付けたサンタはいないだろう。
「残念だけどサンタじゃない、ただのバイトさ。けど、本当のサンタにも負けないプレゼントを持ってきたよ」
 サンタが雪を払い落とすべく帽子を脱ぐと、その下から如月 正悟(きさらぎ・しょうご)の顔が現れた。
 彼は帽子を被り直し、鞄から分厚い手紙の束を取り出した。
「はい、手紙。じゃ、届けたからな」
「せっかく来てくれたんだ、紅茶でも一杯飲んでかないか?」
「悪いな、まだまだプレゼントを待ってるお客さんがいるんだ。遠距離恋愛の恋人たちに、パパサンタを待つ子供に、な」
 正吾は地上に着いたばかりだというのに、すぐさまひらりと飛空挺にまたがると、そのまま空へ舞い、西の空へと消えてしまった。
「じゃあな、パーティ楽しんでくれよ」
 残された生徒たちが手紙の束を解いてみれば、それは色鮮やかなカードたち。
 空京から、ヒラニプラから、タシガンから、地球から。
 家族の、親友の、恋人の、知り合いの、かつて事件でかかわった人たちの。
 沢山の、そしてひとつの祝福の言葉。

Merry Christmas!


担当マスターより

▼担当マスター

有沢楓花

▼マスターコメント

 ※初めにお知らせです。
 疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思いますが、本来リアクション上部に表示されるのイラストにはカレンダーが入るのですが、こちらのリアクション上では、「カレンダーの入っていないもの」を載せてあります。カレンダーの入ったバージョンは、近日中に別途公開いたします。

 こんにちは、有沢です。大変お待たせいたしましたが、イラストシナリオ公開です。
 シナリオへのご参加ありがとうございました。
 そして今回、「蒼空のフロンティア」二度目のイラストシナリオ、そしてカレンダーということで色々と実験的試みや決まりごとが多い中、皆さん書式に則ったアクションをかけていただきまして、ありがとうございました。
 残念ながら月のご希望などに添えなかった方もいらっしゃいました。その場合、その旨とアクション判定の理由を個別コメントでお知らせしています。
 
 全体的には、全年齢版とちょっぴり大人向け? 版を同時発表した方がよかったかな、というアクションを沢山いただきまして、普段百合園担当ですが普段よりも高い百合率に驚いています(余談ですが全年齢向けなので注釈しておきますと、妊婦さんの温泉入浴及び妊婦さんの胸を揉む行為は母子に様々なリスクが考えられるため、リアクションによって推奨するものではありません)。
 逆に普段と違うテイスト、大荒野のお月見も楽しく書かせていただきました。
 また森水マスターには、地祇関連でご相談した思いつきを、十倍以上膨らませるアイデアをいただきまして、大変ありがとうございました。私の首だけ地祇案が、可愛らしい地祇だんごになったのは森水マスターのおかげです。
 また、今回普段あまり書く機会のない他校の方も書かせていただくことができまして、嬉しかったです。

 そして参加者の皆様には、今回のリアクションと同時発表となりますキャラクタークエスト「思い出カレンダー(2021年版)」内でも手に入る「パラミタカレンダー2021」をお配りしています。
 こちらのキャラクエには、今回のシナリオ参加者の方で「キャラクエに登場したい人を募集します2!」に書き込んでいただいた方の中から、春夏秋冬お一人ずつ計四人、ボイス付きでご登場いただきました。リアクションで起こった出来事の前後の様子が描かれています。

 最後になりましたが、素敵なイラストを描いてくださったイラストレーターの皆様、大変ありがとうございました。
 あのキャラクターがあんなことに〜と、私自身も待つのも出来上がったのを見るのも、どちらも大変楽しませていただきました。

 それでは宜しければ、また次回でお会いいたしましょう。