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第八章 いつまでも一緒に
 かさかさ。
 現れたのは、ずいぶん小さいミツバチだ。
 小さいとはいっても3メートルほどあるのだが、次郎さんと比べるとかなり小さい。一目で、ミツバチの子供だと分かる。雌のようだ。
 子供ミツバチは、次郎さんのなきがらに寄り添っている。
「まさか……次郎さんの子供なのか?」
 子供ミツバチは、動かない次郎さんの側を離れようとしない。
「たぶん次郎さん……この子を守った」
 子供ミツバチに近付いてそう言ったのは漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)
「本で読んだ……ミツバチの子、生きられるのは一匹だけ」
 ミツバチの女王は、次の女王候補の卵を複数産むが、新女王になれるのは一番早くに誕生した一匹だけ。早くに生まれた子供バチは、残りの卵を殺してしまうのだ。
 この子供ミツバチは、新女王とほぼ同時に生まれた。殺されそうになった時、母親である次郎さんがそっと逃がしたのである。掟であるとはいえ、一匹くらい女王になれなかった子を救ってやりたかったのだろうか。
 子供ミツバチは、まだ次郎さんの側を離れようとしない。掟に反して生き残ったこの子は、母親の愛情を感じてしまったため「甘え」の気持ちを持ってしまったのかもしれない。
 月夜は、そんな子供ミツバチをそっとなでて、言った。
「このコ……三郎さん」
 それを聞いたパラ実生たちが、涙をぬぐって立ち上がった。
「三郎さんか……それもいいな」
「次郎さんが守った三郎さんを、今度は俺たちが守ろうじゃねえか!」
 パラ実生たちに、笑顔が戻ってきた。
 ぶううううん。
 見上げると、そこには数匹のミツバチが飛んでいる。次郎さんの巣別れに同行してきた働き蜂たちだ。
 三郎さんは、名残惜しそうに次郎さんの側を離れると、働き蜂たちの方に飛んでいった。働き蜂たちは、ぶんぶんとダンスを踊っている。三郎さんを、新女王として認めたのだ。
「一緒に帰ろう、三郎さん!」
 声をかけると三郎さんは、ぶぅんと羽を元気にならして答えた。



終章 新女王と新名物
「世話かけたな」
 パラ実生たちは、新女王の三郎さんを連れて、帰って行った。
 イルミンスールの森は、大きなカブトムシやクワガタが集まる森になった。
 スズメバチたちは、複数あるうちのひとつとはいえ、一撃で巣を崩壊させられたことに恐れを感じ、イルミンスールに近付くことはなくなった。しばらくは安全だろう。
 次郎さんは、イルミンスールの森に手厚く埋葬された。奇跡のミツバチは、森のやわらかい光に包まれて、安らかに眠っている。

「そろそろ……帰っていいかなぁ?」
 感動的な結末で誰もがすっかり忘れていたが、世界樹を傷つけようとして捕らわれた優梨子は、まだ閉じこめられたままだった。
 夏休みが終わるまでには、誰かが気がつくとよいのだが。

「赤コーナー! チームローズのオオカブトムシ、ラッキー君!」
 ムシバトルは社会現象といえるほどの人気になり、森は違った意味で観光名所となっていた。
「ムシバトル、やばい! ほんっとに楽しいよなー」
「だったらさぁ、夏祭りで特別なムシバトルやらね?」
「お、それいいね! 夏祭りも楽しそうじゃん」
 こんな話が、どこからか聞こえてくる。
 思いつきで始まったムシバトルは、まだまだイルミンスールの夏を盛り上げてくれそうである。

「うふふふ……いいカンジですわぁ」
 エリザベートが箒に乗って、上空からムシバトルを見物している。
「ヒドイめにもあいましたけど、結果は狙い通りになってますわぁ」
 お酒の匂いを思い出すと、なんだか頭が痛くなる。エリザベートはこめかみをぐりぐりとマッサージした。
「これで、イルミンスールの世界樹は……」
 わああぁぁぁ!
 最後にエリザベートがつぶやいた言葉は、ムシバトルの歓声にかき消された。

担当マスターより

▼担当マスター

岩崎紘子

▼マスターコメント

 はじめましてー。岩崎紘子と申します。今回は一緒に遊んで下さって、ありがとうございました!
 次郎さんの正体につきましては、皆様いろいろ想像してくださったみたいで、岩崎もアクションを読むのがとても楽しかったです。
 次郎さんは悲しい結末を迎えてしまいましたが、どうかこれから三郎さんのことも愛してあげてくださいね。きっとどこかでまた三郎さんに会えるはずです。
 エリザベートちゃんの行動にも何かがありそうですが……いずれ分かるときが来ますよ♪
 楽しいアクションをご提供くださった方に、ささやかですが称号をいくつか贈らせていただきます。特に、ムシバトルを開催してくださった方はホントにお見事でした! ムシバトルは夏祭りでも開催されるみたいですよ。
 では、今回はこのへんで。また一緒に遊んで下さいね!