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オークスバレーの戦い

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オークスバレーの戦い

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第2章 本陣では

2‐01 垂の旅立ち

 時は少し、遡り。
 騎狼部隊として西の砦へ向かっていくイレブンらを見送り、教導団員のメイド、朝霧 垂(あさぎり・しづり)は戦の指揮を執る騎鈴 セイカ(きりん・‐)に話しかける。
「あら、朝霧さん」
「ああ。また一緒に戦うことになったな、教官」会釈をする、朝霧。
「とは言え、今回は戦闘に参加しても足手まといになりそうだからな、周囲の調査として"外れの村"に行ってこようと思う。住人と接触できていないのも気になるしな」
「そう、気を付けて……。今、ちょうどそこに斥候さんがいらっしゃるけど」
「はっ。き、騎鈴さま……もし何でしたら、わたしが朝霧さんと一緒に出かけましょうか。可憐な乙女ひとりをゆかせるのは、」
「ああ、それなら、心配には及ばんぞ。こいつが、役に立ってくれると思うから。な、ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)
「はーい。だいじょうぶ、垂のことなら僕にまかせてっ!」
「あ、はは……そうか、そうですよね! がっくり。朝霧さん。どうか気を付けてください。あの村、確かにひとの気配はしたのです。ですがこう何か異様な……ひとのような、ひとでないような、」
「……そのへんは先に言ってくれるとよかったかもな」
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。……少し、推敲不足だったでしょうか」
「ともかく、対策は練ってある。ライゼの、光条鞭もあることだし」
「鞭。ハア、ハア……」
 朝霧は、またいつのように朝霧の周りではしゃぎ回るライゼを連れて、歩き出した。
「あぁ、そうだ……教官。今回の作戦が無事終わったら、また一緒に酒を飲まないか? 今度は温泉に浸かりながら、な?」



2‐02 新入生を紹介します

「さあ、今日は皆(もう半分以上行っちゃったけど……)に、私達、教導団への新入生を紹介するわ。彼、彼女らは特別入学(社会人入学?)したもので、貴方達のような若さ溢れるパワーではないけれど、別種のパワーを秘めたひと達です」
「ガハハハ!! 元気かガキども!!」
 ――カイル・ウォーデン(かいる・うぉーでん)。二メートル二〇を越す巨体だ。顔や手足にある幾つもの傷跡が、戦地を転々としてきた彼の傭兵生活を物語る。「教導団(ここ)へは働き口を求めてやってきたってわけだ。俺様は歩兵科に配属され戦うことになるぞ。ガハハハ、ガキども(隊長もだぜ!)、よろしくな!」
 彼は仲間に手を挙げて挨拶し、剣の鞘でボン!と騎鈴のおしりを打った。騎凛の肩がすこしワナワナとふるえたかに見えたが、
「……。……ええ、こちらの方は」
「湯煙騎凛隊長のセイカノートを俺様のクルトガで穴埋めしちゃうぜ! と言って血煙騎凛隊長に反撃されても萌えー!!」(全部採用させて頂きました(騎鈴))
 ――マリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)。カイルに負けない体つきに、弁髪、ダリ髭、リリシイ顎鬚、威圧的な容貌から付いたあだ名は"ブラッディ・マリー"。女性だ。
 騎鈴はナギナタを振り上
「教導団憲兵科ゴッド姐ちゃん(身長的な意味で)マリー・ランカスターであります(ちなみに三菱クルトガはいつも芯がとがっているシャープペンシルのことであります。)」マリーは急に真面目になって、「えー。敵の立場で考えるとこの河の前で守らないのが理解できないでーあります。対岸でこれみよがしに陣地構築までしているというのは誘い受けで、こちらが渡河作戦にはりついてるところを側背から打撃力の高い少数部隊で殴りつけられたりしないか心配です。なので、偵察結果から一番伏兵が潜んでいる可能性の高い&廃墟≒鏖殺教団な丘陵を調査です。オークを操る謎儀式とかしてないすかね」
 マリーの相棒、カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)が騎鈴を挟んで向かい側に顔を出した。
「いやいやマリちゃん、誘い受けなのはオークじゃなくて騎凛隊長のほうだよ。本陣を薄くしてまた襲われて血煙奮戦騎凛ちゃん危機一髪とワールドワイドの大きなお友達の劣情を煽っているんだよ。本校の爆裂ボイン梅琳少尉は見た目からしてエロ認定だけど、大人の女はエロスの仕込みが高度でいけないよ。ここは騎凛ちゃんが血煙属性の変態エロスさんじゃなくて健全な湯煙属性だというのを証明して、今後のマーケティングに寄与する必要があるよ」《全採用させて頂きました※筆者註》
 騎鈴はナギナタを落とした。騎鈴は反撃する力をうしなった。
「というわけで、わい等は、丘陵へ向かうであります及びそこで敵をボッコボコにしたら騎鈴ちゃんのためにも温泉へ足を伸ばすでーアリマス!!」
 マリーとカナリーはそう言うと、凄まじい勢いで丘陵を駆け上がって行った。「ハアアア!!」
「ガハハハ! やるじゃねえか!!」



2‐03 きぐるみ戦争?

「ふっ。(がさつでいけないな、教導団員の生徒らは。)」
 そこへ文字通り、ふっと現れた、すらりとした長身の蒼学ソルジャー。
「騎鈴……この戦闘が終わった後にでも、どっか暇を作って二人でいかないか」
 久多 隆光(くた・たかみつ)だ。
 団員らがきっと睨んだ。軍服兵士達のなかにあって、蒼学生の言動はどうしても目立つ。
「あ、いや、冗談だがな。ふっ。それより、俺も丘陵を調査しようと思うんだが、兵士を数名……」
「え、ええ、そ、そうですね。どっかですか、どっか……」
 騎鈴は少し、浮き足立っている。
「(真面目に調査しようと思ったんだが、もしかしてそっちの策を追求した方がいいのか……? 冗談だがな、ふっ)」女好きの久多に迷いが生じたとき、
「キリン教官! 実はボクも、本陣が心配で」
 と、進言に来たのは、今回の戦いから参加の教導団ソルジャー、黒乃 音子(くろの・ねこ)。「森のオーク連中の、本陣への挟撃あるいは散発的な波状攻撃を行わない保障がないと思うんです。つまり進言いたしたいのは、オーク連中への、威力偵察」
 空挺に所属し、偵察の能力にたけた黒乃らしい意見。
「教官。自分も、オーク残存勢力が気になります。本陣が後背よりの攻撃を受けるわけには参りませんので」
 彼女も、教導団ソルジャーの比島 真紀(ひしま・まき)
 比島は銃器の扱いに長じ、スナイパーとしての称号を持つ。
 二人とも、紛争地帯での実戦経験を持ち、入学後、本校での任務に携わっている。
「うーん。背後ですか……そう言われればそんな気がしないでもありませんね」
 えっ?! ガーーン。隊長っ どう見たって……背後あぶないですってよぅ……!!
「で、ではそれから、これによってですね、「教導団は周辺地域を守護できる存在です」をアピールできるかと思います。これからボク達教導団が治めていく地域。教導団のイメージアップにも是非」
 黒乃の説得は……
「うん。なるほどっ」
 効いた感じ♪
「ですので、一個分隊ほどの兵力があれば……」
 黒乃は、そう言って、辺りを見渡した。
 す……少ない! というか、実際のところこれで本陣を守りきれるのだろうか……(ブラッディ・マリーの言ったことは、もしかしあたっているのだろうか。……)
 言葉を失った黒乃に代わって、比島が続けた。
「それから気をつけたいのが、オークキングの存在であります。後背は、前回の作戦区域である森ですので、出現の可能性があると自分は思います。と言いますか、正直申し上げまして、この戦力でもし奇襲された場合に守りきれるのでしょうか……えっと、自分は不安であります」
「だいじょうぶですよ。実は、皆様もご存知、ヒラニプラ北方での戦いはここ南西部にも伝わり、私達のもとへも同盟を申し出る部族があり、今回彼らを兵力として呼んであります。もうすぐ、着く頃」
 全くあまりにもタイミングよく、ガチャガチャと、オモチャの鼓笛隊ならぬ歩兵隊のような何とも頼りない一隊が、森をぬって現れた。
「ミャオル族……?」砂漠でにゃんこを助けたこともある比島が言う。
「違うニャ! いっしょにするなニャ!! オリ達は、山岳で自治を保ってきたにゃんこだゾ! 砂漠のにゃんこと一緒にするなニャ!!」
 彼は、ミャオリ族と名乗った。ミャオル族と外面は変わらない、人間の子どもほどの大きさの、ゆる族だが、中には小さなおっさんが入っている、と言い伝えられてきた部族だ。
「そういうわけですので、黒乃さん、比島さんには、このミャオレ族を一個小隊として率いて、警戒にあたってもらいましょう。これならますますイメージアップにも」
「コルァ! ミャオリ族だゾ!! 間違うやつは容赦しないヨ!!?」
「……イメージアップにも」
「……まあ、一応一個小隊ではありますね」
「待たれい! 同じゆる族の端くれとして、このわし、黒羊のアンテロウムも黒乃殿、比島殿の小隊に加わろうぞ。どうじゃい頼もしかろう」
「(……う〜んどうだろう……)」





「ふっ。……ええっと、久多だ。それで騎鈴、俺もよければ兵を借りようと……思ったんだがやっぱり、やめ……」
 久多にも、ミャオレ族の兵数名が付けられた。(騎鈴からプレゼントされた。強制的に)
「コルァ! 久多か?? よろしくな!!」
「コルァ! だらしないやつには容赦しないヨ!??」
「……」
 そこへ更に、強力な助っ人が加わった。
 きぐるみ戦争と呼ばれる、ヒラニプラ北方の戦いに魔導擲弾兵中隊として参戦していた高月 芳樹(たかつき・よしき)だった。その活躍と、魔法使いとしての力を買われ、イルミンスール魔法学校から今回の戦に参戦することになった。
「ア。この人、ちゃんとしてそうニャ」
「目つきが優しいニャ」
「陰陽師の家系ニャ」
「なんだその違いは!!」
「久多、はやくいくニャ。ついてこいニャ」
「……」
「い、行きましょうか。久多さん。僕は魔法で加勢しますよ」
「私は盾となり、必要とあらば剣を振るいます」高月の横には、疾風のヴァルキリー、アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)も一緒だ。
「あ、ありがたい。後方からの射撃は、任せてくれ。(おっ。高月のヴァルキリー、なかなかの美少女じゃん?)」

 ――こうして、黒乃、比島、彼女らのパートナー、それに騎鈴のパートナー、アンテロウムは後背の森へ、久多、高月、彼のパートナーアメリアは丘陵へと、それぞれミャオレ族の小隊を率いて(率いられて?)、任務に発ったのだった。



2‐04 そして本陣には……

 八名が残った。
「本陣には、志願もあり、ユウ、グレン、それに小次郎さん達に残ってもらいます。それから、傭兵のカイル」
「ガハハハ!!」
「備えあれば憂いなし。と言っても、……残ったのは我らを含め八名、八名ですか」
 戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)は強調した。ともあれ、前回は、ばったり出会った木刀剣士の橘と森を駆け回ったが、今回はパートナーの守護天使、リース・バーロット(りーす・ばーろっと)と、本陣で備えじっくり構える姿勢。
「皆様に、天の月のご加護がありますように」
 ユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)は、峡谷に消えていく仲間達の背中へ静かに呼びかけると、ゆっくり陣の中央へ戻ってきた。
「実は自分も、本陣への敵の強襲に備え、警戒すべきかと。……って、でも皆、行ってしまったわけですけど。
 天の月の加護、我々にも……というわけですね」
 教導団にあっても、旅の騎士の名残か、自由なベオウルフ隊の名残か、風に靡く彼の髪同様、軍服も白銀の鎧仕立て。それはとても彼に似合っている。
 ルミナ・ヴァルキリー(るみな・う゛ぁるきりー)も、地図を携え、そんな彼の傍らに。
 戦部は、更に強調した。
「では、我が策を述べさせて頂きますよ?
 ええまず。斥候が申しておりましたが、"丘陵の辺りで太鼓の音"、これは見逃せません。つまり、敵の本陣奇襲に備えて五十名程度(泣)の総予備を本陣に置くこと……まあこれにつきましては、もう皆行ってしまい、にゃんこまでをも全部黒乃&比島殿に連れさせてしまったので、仕方なしとしましょう」
「エ〜〜ン」
「……。
 ええ、次に。東側に防御陣地を構築する。これです。理由としましては、廃墟しかない丘陵で敵オークが跋扈している危険地域で太鼓を叩く住民など普通いないと思われ、そうなると敵が合図に使用したと考えられる公算が大きい。となると、」
「戦部さんには、軍師になって頂きましょう」
「……。
 えっ ほんとですか。
 ……ええ、太鼓の音の聞こえる範囲を考えますと、廃墟を隠れ蓑にしてオークが潜んでいる(もしくは残党を集めているのかもしれぬが……)可能性が高く、敵の目的としては砦攻防戦の最中に味方本陣を奇襲する事でこちらを混乱させ、敗走させる事にあると思われる!」
「力入ってますわね、戦部さん。うん」
「そ・こ・で、だ!
 陣地は薬研掘とその土を土嚢に詰めた胸壁からの構成とし、丘陵側の見通しが悪ければ草を刈る等して視界の確保をしておく。ブービートラップとか落とし穴等も設置できれば上出来だが、恐らくそんな材料も時間も人手もないので敵の攻撃を凌げる陣地構築を最優先とし、言い出しっぺとして率先して作業をする。
 あとは敵の攻撃があれば総予備の人達(ゴゴォォォ八名!!)と共に迎撃し、攻撃が無ければそれはそれでよかったということにする。(何か罰があるかもしれないが)」《アドリブ入れましたがほぼ全作戦採用させて頂きました》
「戦部さん。お疲れ様です。では、戦部・リースペアには早速、ブーピートラップにとりかかって頂きましょう。
 では私は……アンテロウムはいなくなりましたし、今日はカイルとパートナー同士となりましょうか。カイルはセイバーだから、じゃあ私が今日は剣の花嫁です」
「ガハハハ!!」
「さてもう一組は、」
 グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)はすでに、双眼鏡を持って、周囲を警戒にあたっている。
「今のとこ、周辺に敵影なし……できればこのまま、何もなければよいが……
 ソニア、そっちの様子はどうだ?」
 同じく、グレンとともに本陣に残ったソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)
「周辺に敵の姿ありません。
 前線の方達は大丈夫でしょうか……? 少し、心配です」
 前線に送り込まれた部隊は、そろそろ渡河地点に辿り着く頃だ。
「(あ、あの、グレン……私が泳げないから、ということは内緒ですよっ……?)」

「微笑ましいですが、これで本陣は絶対万全ですね」