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海上大決戦!

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海上大決戦!

リアクション

 【シーゴースト】のメンバーである高月 芳樹(たかつき・よしき)アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)菅野 葉月(すがの・はづき)ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)比島 真紀(ひしま・まき)サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)エリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)メリエル・ウェインレイド(めりえる・うぇいんれいど)クローディア・アンダーソン(くろーでぃあ・あんだーそん)アロンソ・キハーナ(あろんそ・きはーな)戸隠 梓(とがくし・あずさ)キリエ・フェンリス(きりえ・ふぇんりす)、そして水神 樹(みなかみ・いつき)からなる【セイレーン】の作戦に合わせる形で行動を開始する手はずだ。羽瀬川 セト(はせがわ・せと)エレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)も【セイレーン】に同行する。
 樹が味方にディフェンスシフトをかけ、【セイレーン】とセトたちが行動を開始する。まずは梓が大砲への攻撃を試みる。梓はキリエの箒の後ろに乗っており、操縦はキリエに任せている。急降下しながら梓の雷術で大砲を狙う作戦だ。
「キリエくん、よろしくね」
「外すなよ、梓! いっくぜぇえええ!!」
二人が急降下を始める。だが、それに気がつく者があった。
「円〜きたわよぉ〜」
 桐生 円(きりゅう・まどか)のパートナー、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)だ。円たちも武尊と同様にして海賊の仲間になっていた。
「さすがです、マスター。ミネルバ、機関銃を」
 円はもう一人のパートナーミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)から機関銃を受け取ると、梓たちにシャープシューターで狙いを定め、
「そう簡単にはいかないものだよ」
 引き金を引いた。
「危ない!」
 その声に、梓とキリエがはっとする。次の瞬間、二人の横に突如氷の壁が現れ、弾丸をはじいた。睡蓮が咄嗟に氷術で二人を救ったのだ。
 しかし、まだ危機は去っていない。一連の出来事に気を取られていた梓たちが視線を元に戻すと、海面が目の前に迫っていた。
「くそっ! 上がれぇええええ!!」
 キリエは必死で箒を上昇させる。梓のかかとが水面に触れた。二人は間一髪のところで体勢を持ち直す。
「ありがとうございます、水無月ちゃん」
 睡蓮と九頭切丸の近くまで上昇してきた梓が、礼を言う。
「いえ、間に合ってよかったです」
「どうやら、海賊以外にも俺たちの邪魔をしたいやつがいるようだな」
「そのようですね。他の方々のためにも、まずはその敵をなんとかしなければ。九頭切丸、援護よろしくね」
 睡蓮の指示に、九頭切丸は無言で頷く。
「ちぇ、防がれちゃった」
「頑張ってぇ。オリヴィアも弓で狙うから、競争しましょぉ〜」
 つまらなそうな顔をする円に、オリヴィアは実に楽しそうに言う。
「いいですね、マスター。負けませんよ。あ、そうだミネルバ、キミは飛び道具をもってないし、好きにしてていいよ」
「わーい、あそんでくるー」
 円に言われると、ミネルバはふらりとどこかへ行ってしまった。
「ではお先にいきますよ、マスター」
 円が再び機関銃を構える。
「くる!」
 キリエはそれを見て攻撃を回避した。
「私だって、やられてばかりではありませんよ。来よ、雷帝!」
 梓が雷術で反撃する。だが、円もこれを簡単にかわした。
「そんな体勢からじゃ当たらないよ」
「オリヴィアもやるぅ」
 今度は円の射撃に加えて、オリヴィアも矢を放つ。
 キリエはなんとか弓を避けたが、弾丸までは対処しきれない。そこは再び睡蓮が氷術の壁でカバーした。
 しばらくこの流れが続いたが、梓の魔力が尽きてくる。
「水無月ちゃん! お願いします!」
「はい!」
 睡蓮が梓にSPリチャージを使おうとする。
「させないわよぉ」
 すると、オリヴィアが睡蓮に向かって矢を放った。
 これは九頭切丸が身を挺して防ぐ。
「ありがとう、九頭切丸」
 さらに、スキルをできるだけ使わないでおいた九頭切丸は、睡蓮にSPリチャージを行う。
 数では睡蓮たちが勝っているものの、梓とキリエは二人乗りだし、九頭切丸はその体躯から素早いとは言えない。壁になってくれる九頭切丸にヒールを、攻撃役の梓にSPリチャージを睡蓮がかけてなんとか凌いでいるが、状況はいいとは言えなかった。
 そこに鳥羽 寛太(とば・かんた)が援護に駆けつける。
「大丈夫ですか、お手伝いします。ほら、真由美たちも……」
 寛太はパートナーの伊万里 真由美(いまり・まゆみ)カーラ・シルバ(かーら・しるば)の方を見たが、真由美は冷たく言い放つ。
「いやよ、めんどくさい。他人を助けてる暇があったら、私たちを守りなさい」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
「あ、そ。じゃあ勝手にすれば。ばいばい」
「ちょ、ちょっと!」
 寛太の伸ばした右手もむなしく、真由美は箒の後ろにカーラを乗せて、海賊船の方へと行ってしまう。円とオリヴィアも睡蓮たちを相手にするのが精一杯で、真由美たちにまでは手が回らなかった。
「はは、お恥ずかしいところを見せてしまいましたね」
 寛太は頭をかきながら、睡蓮たちに禁猟区のスキルを使用する。
「そんな、助太刀ありがとうございます。でも、ご自分にはスキルを使わないのですか?」
「少しでも多く、他の方のお役に立ちたいので」
「でも、それでは……」
「……」
 睡蓮が何かを言おうとしたとき、九頭切丸がよろめく。睡蓮たちが話している間も、一人で盾になり、攻撃を受け続けていたのだ。
「九頭切丸! ごめんなさい」
「ゆっくりはしていられませんね。僕たちも早く戦闘に加わりましょう」
 寛太はそう言って睡蓮のもとから飛び去る。彼はわざと目立つように空中を飛び回った。
「なんだ、あいつ? まるで自分が狙われることを望んでるみたいだ。危なっかしいな。あいつだけ危険な目に遭わせるわけにはいかねえ。梓、俺たちも行くぞ!」
「はい、私頑張ります!」
 キリエの言葉に、梓も気合いを入れ直した。
 必死で戦っている寛太を尻目に、真由美とカーラは海賊船の船首に下り立った。
「なあに? この辺の海賊はみんなもうやられちゃってるじゃない。つまらないの」
 真由美が言う。
「試運転、試運転」
 カーラはそこらじゅうを動き回る。
「先にいきましょ」
 真由美が一歩踏み出そうとしたときだった。
「ああ! 踏まないでください! もうしませんってば!」
 少し先でロープで縛られて床に転がっていた海賊がいきなり叫ぶ。英希とジゼルに散々おしおきをされた海賊だ。
 真由美はびっくりして海賊の方を見たが、彼を踏んでいる者などいない。真由美は海賊の頭がおかしいのかと思いつつも、念のため禁猟区を発動する。すると反応があった。
(光学迷彩!?)
 ちょうどそこに、旋回していた寛太が頭上を通りかかる。
「寛太、あそこ! あの海賊の上に火術!」
「え?」
「いいから早く!」
「わ、分かったよ」
 寛太は訳が分からないまま、言われたとおりに火術を撃つ。すると、何もない空間に炎が燃え上がった。
「あぢ、あぢぢぢぢ!」
 その正体は武尊のパートナーである猫井 又吉(ねこい・またきち)。光学迷彩を使うために被っていた布に火がついたのだ。海賊の仲間である彼は乗船してくる相手を待ち構えていたのだが、濡れた床に足を滑らせて、さきほどの海賊を踏んでしまった。
 パニックに陥った又吉は、火を振り払おうとして銃をぶっ放してしまう。その弾が円とオリヴィアの近くの床に穴を開け、二人は思わず又吉の方に気を取られた。
「燃える、燃えるー!」
 又吉は布を振り払ったが、既に服に引火している。彼は大声を上げながら船上を走り回る。
 それを見たカーラは、又吉へと近づいていく。真由美に禁猟区をかけてもらったカーラは、炎をものともせずに船縁まで又吉を連れて行くと、
「熱いならこうしてあげます」
 又吉を思いっきり海へと突き落とした。
「ふーっ、冷てえ。助かったぜ。……てっ俺泳げねーんだよ! おい、無視すんな! コノヤロー、七代祟ってやるー!」
「イイコトしました」
 カーラは、又吉の罵声を気にもせず戻ってくる。
 あまりのことに一部始終を見守っていた円とオリヴィアが我に返る。気がつくと、睡蓮たちが目の前にいた。
「九頭切丸!」
 睡蓮のかけ声で九頭切丸がずいと前に出る。円たちは慌てて攻撃したが、九頭切丸の装甲の前に弾丸も矢もはじかれてしまう。九頭切丸が手を振り回すと、近くにある大砲が粉々になった。
「大人しく捕まってください。そうすれば、これ以上あなたたちに危害は加えません」
 睡蓮が円たちに向かって言う。しかし、追い詰められても二人は焦る様子を見せない。
「うーん、これはポカをしてしまいましたねぇ、マスター」
「そうねぇ。残念だけど潮時かしら」
「今回は引き分けということで」
「勝負は次回に持ち越しねぇ」
「では、ボクたちはここで失礼します」
 円が睡蓮たちにひらひらと手を振る。
「何言ってるんですか、逃がしませんよ! 九頭切丸――」
 睡蓮が指示を出すより早く、円が小型の爆弾を床に投げつける。怯んだ一同が平静を取り戻した頃には、円とオリヴィアは上空にいた。
「あ、ミネルバのことを忘れていました」
「あのコのことだから、勝手に戻ってくるわよぉ」
「それもそうですね」
 二人は空の彼方へと飛び去っていく。
「結局逃がしちゃいましたね」
 二人の後ろ姿を見送って、睡蓮が言った。
「そうですねぇ。でも、生徒たちを傷つけたりはしたくありませんから、これでよかったかもしれません。ほら、私一応保険医ですし。あの人たちも反省……はしてなさそうでしたね」
 梓は苦笑いをする。
「……」
 労をねぎらってか、九頭切丸が睡蓮の肩に手を置く。
「九頭切丸……」
 見ると、九頭切丸の体は傷だらけだった。いくら丈夫とはいえ、あれだけの攻撃を受けたのである。
「ありがとう。ごめんね……」
 睡蓮が九頭切丸の胸に顔を埋める。
「あらあら、大変。すぐにお手当しないと。ああ、でも機晶姫のお手当ってどうすればいいのかしら」
 あたふたする梓を、キリエは後ろから微笑んでそっと見ていた。
「真由美、よく気がついたね。ボクが無事だったのも真由美のおかげだよ。ありがとう」
 寛太が真由美に声をかける。
「――あ、もしかして最初から敵が隠れてるのを分かってて、わざと先に船に向かったとか?」
「そんなわけないでしょ。たまたまよ、たまたま。別に、あんたのために敵を見つけたわけじゃないわ」
「これが、一昔前地球で流行ったという『ツンデレ』ですか?」
 カーラが言う。
「だから違うってば!」