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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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「くそ! このバカ力め!」
 季保は体勢を立て直すがそこにすかさず、みたび、刀真が飛び込んでくる。
「覚悟しろ!」
 次の瞬間、刀真の放つソニックブレードが季保の顔面へ振り下ろされた。
「ぐあっ!!」
「季保姐さん!」
 リリーと紀が、季保のピンチを察知し叫んだ。
 それでも季保は、デゼルを蹴り飛ばし、刀真のソニックブレードを間一髪のところでかわした。しかし、ソニックブレードの威力は凄まじく、季保の左顔面に大きな傷を与えてしまう。
「う、うう…」
 季保は左目を手で覆ったが、どくどくと赤い血がその指の隙間から流れ落ちていく。
 だが、さすがは『女王』と呼ばれた女。季保は怯むことなく、デゼルと刀真に太刀を構えなおす。
「…よくも、私の自慢の顔に傷をつけてくれたわね…あんたたち、ただじゃおかないよ…」
 むしろ「窮鼠猫を噛む」そのことわざにあるように、季保は迫力を増し、鬼気迫るオーラすら放っている。
「姐さん!」
 そこにリリーと紀が駆けつけてくる。二人は季保のピンチに最後の力を振り絞り、ガートルードたちの攻撃から逃げてきたのだ。
 そのまま、紀が最後の爆弾をデゼルたちに投げつけると、リリーが最後の力を振り絞り、壊れ、使えなくなったはずの拳を地面にたたきつける。
「くらえ! 地震攻撃!」
「下がれ! みんな!」
 デゼルは一瞬の判断で投げつけられた爆弾から刀真やルケト、ルーを抱きかかえ、前のめりにより遠くの地面へと体を投げ出す。
 紀の爆弾はリリーの地震攻撃によって威力を増幅され、その場一体を巻き込んで凄まじい爆音を上げ、爆風によって巻き起こされた砂嵐のため、視界が真っ白になり、何も見えない状態になってしまう。
 その隙を縫って、紀とリリーが顔面を押さえてぼろぼろになった状態の季保を両脇から抱え上げ、遁走しはじめる。
「姐さん! ここは退却です! 私たちもこれ以上はもちません!」
「くそう、ここで逃げてたまるか…!」
 なおも戦おうとする季保を、リリーが抑える。
「あかんて、姐さん! これ以上は無理や! 退却や!」
 紀もリリーもまだ薬の影響が残っており、リリーに至っては全身がもう、使い物にならない状態だった。
「今しか逃げるチャンスはあらへんねん! それにあの執念深いシャンバラ教導団の奴らに見つかったりしたら、ワシら、絶対に逃げられへんで!!」
 その言葉にがっくりと季保は肩を落とす。それでも紀とリリーは必死になって森の中へと逃げ込んでいった。
「今回のところは、私の負けだ…だが次は憶えていろよ…この顔の傷の仇、必ず取ってやる…!」
 息も絶え絶えに季保は怨嗟の念を吐くと、そのまま森の奥へと姿を消した。

 その後、シャンバラ教導団による『鬼太刀会』の掃討のため、森への一斉捜索をローラー作戦として行ったが、『鬼太刀会』の行方はようとして知れなかった。

第5章

 教導団の面々は、蒼空学園の会議室の一室を借りて、今後の対策会議を開いていた。
「確かに今回の作戦で『鬼太刀会』の目論見を潰すことはできました。ですが、シャンバラ教導団として、蒼空学園のあのデコッパチ校長に借りを作ったのは、痛恨の極みですぅ」
 伽羅が口を開くと、マーゼンがそれに続いた。
「『鬼太刀会』も取り逃がしてしまったからの…あの体ではそう、遠くはいけないと思っていたのですがな。ただ、次は絶対にありえんですぞ…『鬼太刀会』どもめ!」
「『鬼太刀会』に攫われていた情報提供者は無事、確保いたしましたがの。彼からも事情を聴取し、セキュリティ強化策を我輩から提出させていただきますがの」
 青 野武の言葉を受け、葉は宣言した。
「セキュリティのアップデート、および対鏖殺寺院への警戒強化。情報提供者との連絡ツールの改善。やらねばならないことをリストアップしよう。今回、君たちの働きは私の予想を遙かに超えていた。私が思っていた以上に、君たちは優秀なようだ。感謝している。是非、その力、教導団への忠誠心をフルに使って欲しい。そして、今回の件は私の脇の甘さにも原因があった。君たちに謝罪する。そして、二度とこのような事態は引き起こさない。そのためにも、『鬼太刀会』の捜査は続行する!」
葉の言葉に、教導団の面々は決意も新たに引き締まった。


☆  ☆  ☆


 ジュリエットと魅世瑠は環菜校長につきまとっていた。
「オデコ…いいえ、環菜校長〜私たちも鏖殺寺院の撃退に一役かったのですから、なにがしかの報酬はいただけないでしょうか…世の中はギブ・アンド・テイク、それで成り立っております。わたくしたちも蒼空学園のためにわざわざ、この細い腕をつかって、お役に立ったのですから」
「戦った者は報酬を貰う、これは昔から決められていたことですじゃん。当然、環菜校長がそうやってご無事でいられるのもあたしたちのおかげじゃん? そうそう、あたしなんて、この格好だろ? 葉っぱがちくちくあたってお肌があれちゃって…それでも蒼空学園の皆様のために頑張ったんだから、ねえ?それなりのモノをいただかないと〜」
「本当だ!魅世瑠の体、こっちもあっちも傷だらけ!」
 フローレンスがわざと大声で驚いたふりをする。
「ああ、なんて狡猾で卑しいのでしょう!! ジュリエット様に魅世瑠様、フローレンス様まで…ああ、それにアンドレ様までも…」
 ジュスティーヌ・デスリンクは、四人の振る舞いを遠くから見ているしかできなかった。
「はいはい、その程度の傷なら保健室に行って、可愛い保健委員に手当てしてもらいなさい。正規の報酬は払った上で、治療費は学園持ちなのだから文句はないでしょ」
 環菜はため息をついて、四人を校長室から追い出してしまった。