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リアクション
9・楽しいお座敷芸体験
修学旅行に行く数日前、ラズィーヤが百合園女学院では「一日舞妓体験」の応募用紙を見ていた。
「やっぱりお座敷芸が多いのですね。15名、なんて素敵な数、あと一人足せば半分で割れますわ、8名ずつの対抗戦にしましょう」
というわけで、お座敷芸体験を選んだ生徒たちは、8名ずつに組み分けされて、先生の待つ場所に向かうこととなった。
2人づつ人力車に乗り込む。
グループ「白奴」は、
岩河 麻紀(いわかわ・まき)
アディアノ・セレマ(あでぃあの・せれま)
高潮 津波(たかしお・つなみ)
ナトレア・アトレア(なとれあ・あとれあ)
清良川 エリス(きよらかわ・えりす)
ティア・イエーガー(てぃあ・いえーがー)
邪馬壹之 壹與比売(やまとの・ゐよひめ)
神倶鎚 エレン(かぐづち・えれん)
セレマは、人力車から見る京の景色にはしゃいでいる。
「ここが日本なんだ〜。麻紀のふるさとだね〜!」
「そうよ」
「麻紀の家とかいってみたいな〜」
「…いつか、機会があったらね」
麻紀の顔は沈んでいる。日本には嫌な思い出があるのだ。
「お座敷芸って、どんなことするんだろう、とっても楽しみだな〜」
セレマは楽しそうだ。
ナトレアはずっと考え込んでいる。
「ナトレア、どうしました?」
津波の問いに答えて、
「お座敷芸って何をするのでしょう、私を触ったりするのでしょうか」
ポッと赤くなる津波。
「そんなことない・・と思います。だって、芸ですよ」
グループ「百合奴」は、
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)
和泉 真奈(いずみ・まな)
ジュリエット・デスリンク(じゅりえっと・ですりんく)
ジュスティーヌ・デスリンク(じゅすてぃーぬ・ですりんく)
アンドレ・マッセナ(あんどれ・まっせな)
ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)
ヴェロニカ・ヴィリオーネ(べろにか・びりおーね)
人力車の中で、ジュリエットはとても楽しそうだ。
「共に学ぶ友にも恵まれましたわ、さて何が起るか、楽しみですわ」
それから数時間後、練習が終わりお座敷に出ることとなった。
「お座敷芸」お披露目会
広いお座敷の床の間を背にして、蒼空学園の制服姿の一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)と宮本 紫織(みやもと・しおり)、長船 長光(おさふね・ながみつ)が座っている。
永夷 零(ながい・ぜろ)、ルナ・テュリン(るな・てゅりん)、真里谷 円紫郎(まりや・えんしろう)の三人は、このときのためにそれぞれが着物を着てきていた。
機晶姫のルナの着物姿は、愛らしい。
倉田 由香(くらた・ゆか)は制服姿だが、舞妓姿に憧れてやってきた。
7名が並んで座っている。
燕や零たちからみて、右の襖がスーと開く。
八名の「白奴」グループが、三つ指をついて待機している。
「よく来たっ!ご苦労!」
英霊の円紫郎が舞妓たちに声をかける。
よく考えれば、彼は、江戸時代の剣客なのだ。舞妓遊びなど手馴れたものなのかもしれない。
次に左側の側の襖が開く。
8名の「百合奴」グループが、三つ指をついて待機している。
「よう来たなぁ!」
燕から声が掛かる。
実家が、神社で京言葉を使う燕にとって、舞妓遊びは身近なものだ。芸にも詳しい。
事前に打ち合わせしていたのか、まずはススっと岩河 麻紀が前にでる。
黒い初音の紋付の着物を舞妓風にアレンジしてきている。舞妓の鬘をかぶり、朱色のだらりの帯にお揃いの花簪をつけている。
パートナーのアディアノ・セレマも同じ着物を着ているが、麻紀の装いが艶っぽいのに反して、アディアノはまだ半玉のような初々しさが残っている。
左側からはミルディア・ディスティンが前に出る。
「うのぉ〜…… 服は重いし、しんどいよ〜」
ミルディアは赤い髪を綺麗に結い上げ、白地に可愛いらしい柄が入った着物姿だが、頭が重いのか、よろよろと動いている。
パートナーの和泉 真奈は、乳白色の髪に合わせた淡い色彩の着物を見事に着こなしている。
「少しはおしとやかに・・・」
真奈がミルディアをたしなめる。
それぞれ、向かい合って座る二人。
突然、本物の芸妓さんが2名、三味線を手に入ってくる。三味線が始まる。
二人の間に襖がおかれ、歌が始まる。
先ほど練習した芸だ。
「まわって、ころんで・・・・とらとーらとーらとら とらとーらとーらとら、」
歌詞にあわせて回って転ぶ、麻紀とアディアノ。
麻紀「ガぉー」と虎の真似、
アディアノが杖を突くおばあさんのまねで現われる。
これはじゃんけんと同じように、三つの形で勝ち負けを決めるゲーム。他に槍があり、虎はおばあさんに勝ち、おばあさんは槍に勝ち、槍は虎に勝つというお約束がある。
麻紀の勝ちだ。二人、挨拶する。
次は、ミルディアたちの番だ。何事もそつなくこなす真奈は、裾裁きも見事に槍をつく真似をし、虎になったミルディアに勝った。
四人はお辞儀をした後、それぞれが観客の生徒たちの横に着く。
「うーん、もっと盛り上がるはずなんだけど」
倉田 由香は参加したそうだ。
ミルディアが呟く。
「ちゃんとやらないと、怖いんだよ」
次に、高潮 津波が前に出る。
髪型はやっこに結っていて、秋の花桔梗のかんざしを挿している。着物は青い裾柄で藤が描かれていて、唇は津波の希望で下唇に紅を入れている。
本物の舞妓といっても差し支えのない見事な出来。所作も堂に入っている。
一緒に来た、ナトレア・アトレアは、髪は割れしのぶに結い、着物はピンクの八重桜の総柄を選んだ。
対するロザリィヌ・フォン・メルローゼは、普段着ているドレスと同じ赤色の着物だ。しかもこだわりの紙製。髪型も、自慢の縦ロールのまま、ロールに巻きつけるようにかんざしを挿している。
一緒にいるのは、ヴェロニカ・ヴィリオーネだ。
褐色の肌に、銀色の瞳と髪を持つヴェロニカは、銀糸を織り込んだ真っ赤な着物に、黒い西陣織のだらりの帯を締めている。
4人の対戦は、おどり。
三味線のお姐さんが唄いだす。
「猫ぢや猫ぢやとおしやますが、猫が、猫が下駄はいて、 絞りゆかたで來るものか、オツチヨコチヨイノチヨイ」
これは、浮気オトコのみっともなさを面白おかしく比喩したおどりで二人の掛け合いが笑いを誘うはずなのだが、なぜか、4人ともしごく真面目に踊っている。
踊り終わると、挨拶をして観客の側につく4人。
「津波、どうしたんだよ。いつもの感じがないぞ」
永夷 零は隣に座った津波に話しかける。
「すぐ分かります」
次に出てきたのは、清良川エリスだ。京都育ちのエリスも舞妓になるのは初めてだ。だだその所作には落ち着きがある。ティア・イエーガーと邪馬壹之壹與比売も一緒に出てきた。
エリスは、着付けのときに発揮した地元パワーが弱まっている。とても。
対するは、ジュリエット・デスリンクとジュスティーヌ・デスリンク、アンドレ・マッセナだ。着付けで散々迷っただけあって、華やかで美しい装いをしている。
三味線のお姐さんが唄いだす。
「金比羅ふねふね、追手に帆かけて、しゅらしゅしゅしゅ・・・」
三人同士ということもあって、エリスとジュリエットが対峙した。他もティアとジュスティーヌ、壹與比売とアンドレが対戦する。
調子に合わせて二人は交互に着物の上に手を出す。
二人の間には匂い袋がおいてある。
片方が、適当なタイミングでその袋をとる。取られた相手は手をグーの形にする。
それだけの単純なゲームだ。唄の調子がだんだん早くなる。
「間違えました」
誰かがそう告げてゲームが終わった。
「不思議どすなぁ。おもろいゲームやのに、だれも笑わんと」
燕が不思議そうに戻ってきたエリスに尋ねる。
「なにやらあったんどすか」
「すぐわかります」
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