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リアクション
【4】
「主催者さん、どこに居るのかな?」
高原 瀬蓮(たかはら・せれん)と手をつないで歩きながら、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は言った。二人の数歩後ろに居る伊達 黒実(だて・くろざね)も、「居らんねぇ」と呟く。
ダンスパーティが始まってから、三人は主催者と鏡の中の自分を見つけるべく捜し回っていた。
「鏡の中のボクはどんな子かなぁ? かっこいい男の子かも」
「そうだね、ヴァーナーは可愛いから、きっと鏡の中の人もかっこいい人だね」
「会うのが楽しみ! 会ったら抱きつくんだ〜♪」
「ええねぇ、見てるほうが幸せになりそうな和む光景やね」
「鏡の中の黒実お姉ちゃんと瀬蓮お姉ちゃんはどんな人だろうね」
「もう一人のわて? 女やろか、男やろか」
「どっちだろうね? でもどっちだったとしてもきっとカッコイイんじゃないかな。だって黒実お姉ちゃんがカッコイイもん」
「おおきに」
「瀬蓮お姉ちゃんは、相手が女の子だったらきっとすごい可愛くて、男の子だったらカッコイイんだろうなあ」
「どうだろうねぇ? 早く会ってみたいなぁ」
三人で話しながら捜し歩く。
そう時間をかけず、ヴァーナーの後ろから「見つけたー!」と声がして、その直後ヴァーナーの身体がよろめいた。違う。後ろから誰かが体当たりさながらに突っ込んで来て抱きついたのだ。
「あわぁ。きみがボク?」
ヴァーナーが尋ねる。相手の美少年は大きく頷いてヴァーナーを抱きしめた。
「そう! 捜したよー!」
「ボクも捜してたんだよ、会えたねー」
「ねー♪」
二人は嬉しそうに手を取り合って笑うと、再びぎゅぅっと抱きついて頬にキスをした。見ている側が恥ずかしくなりそうなラブラブ状態である。
見ている側――黒実がくすくすと笑う。
「ほらなぁ、和む光景やわ。ほんま可愛えねぇ」
「だね。見つかって良かった」
抱き合ってきゃぁきゃぁと笑い合う二人を見て、黒実と瀬蓮は呟いた。
「ヴァーナー、ダンスホールに戻ったら? 逢えたんだから、一緒に踊ったりお話したりしたほうがいいよ」
「え、でもボク、瀬蓮お姉ちゃんたちの相手も捜したいし、主催者さんにお礼もしたいし……」
「それは二人がもっといっぱいお話した後でいいわよ。時間はたくさんあるわけじゃないから、今しかできない時を楽しんで?」
そう瀬蓮に微笑まれると、ヴァーナーとしては何も言えなくなって。
「うん、わかった。ありがとう瀬蓮お姉ちゃん」
もう一人の自分と恋人繋ぎした手をぶんぶん振りながら、ヴァーナーはダンスホールに戻っていった。
「わてらも早う会いたいなぁ、もう一人の自分」
「そうね。どんな人なんだろうねー」
「想像するだけでも楽しいどすなぁ。相手の反応とか」
「反応?」
「ふふ」
「ええ!? 俺女の子ぉ!?」
「せやねん、こんな感じにベタな驚き方して……って、あら?」
声に笑って頷いてから、ふと気になって声の主を探す。と、声の主は黒実を指さして驚いていた。
「あんさん、もしかしてわて?」
「もしかしなくても。ていうか女だったのか、俺」
「どうやろねぇ? 女装かもしれへんよ?」
「女装ぉ!? なにそれなんで!?」
「ふふ、自分のことながらこの反応。可愛えなぁ」
「可愛いってお前。俺は男だぞ」
「わかってはるよ。あんさんは着物の似合うええ男やね。可愛えのは反応や」
もう一人の黒実は、そこまで言われて初めて、今自分がからかわれていることに気付き、「ったく」と少し笑った。
「瀬蓮殿。わての相手、見つかりましたわ」
「うん。よかったわ。ヴァーナーの言うとおり、カッコイイ相手ね」
「おおきに。瀬蓮殿は一人で行きはるの?」
「ええ、二人の邪魔をしたくないもの。ヴァーナーに言ったのと同じで、あなたたちも二人の時を楽しんでほしいな」
「そっか。おおきにな、瀬蓮殿。さてあんさんにはエスコートしてもらわな」
「俺はあんたといろいろ話がしたい」
「その前に一曲踊ろ。せっかくやもの」
二人がダンスホールに戻っていく中、瀬蓮は逆の方向へと歩を進めた。
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