天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

快晴開催! ヴァジュアラ湾の感謝祭!!

リアクション公開中!

快晴開催! ヴァジュアラ湾の感謝祭!!

リアクション

 湾の中央部には、たくさんの屋台が出ており、出店している魚人たちの掛け声が飛び交っていた。
 人混みの中、雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)とパートナーのジョージ・ダークペイン(じょーじ・だーくぺいん)は再開を果たしていた。
「おぉ、ジョージ、「魚撃ゲーム」は、どうだった」
「あぁ…… 成功したが…… 失敗した」
「ん? どういう事だ?」
「二撃で三つの的に当てる必要がある、だから我輩は一つの火術を途中で分裂させる事にした。分裂させれば、一撃で二つ以上の的を狙う事も可能だと考えたのだ」
「そんなバカな」
「むっ、出来たのだ、しかし、精度が悪く当たらなかった、だから失敗だと言ったのだ」
「本当に分裂できたのか〜 怪しいもんだぜ」
「何を言う! ならば、そこで証明してやろう」
 ジョージが指差したのは、射的の屋台であった。ジョージは荒く歩みながらに悪食丸に投げた。
「君こそ、「島の主は我であるゲーム」は成功したのか?」
「…… いや、負けた」
「負けた? 称号も無しという訳か」
「ルールで、斬撃がつかえなかったんだ! 斬撃さえ使えれば……」
「負け犬の何とやらか」
「何だと!」
 二人は屋台の前に並び立った。
「見せてみな、その分裂って奴を」
「言われなくても」
 並ぶ玩具を睨みながら、ジョージは火術を手の平に出し留めた。それを見た屋台主の魚人が慌ててジョージを取り押さえた。
「なにやってんだ、アンタ」
「邪魔をしないでくれ、これから証明するのだ」
「そうだ、ジョージが嘘つきだって証明になるんだ」
「だから出来ると言っているだろう」
「何を訳の分からねぇ事を、とにかく止めろってんだ」
 屋台の前での押し問答。人混みの中でも目立っていたが、それでも少し場所が変われば、これらのやりとりも気付かない程に活気と人で溢れているのだった。
 イルミンスール魔法学校の姫神 司(ひめがみ・つかさ)は、ふと立ち止まり、一点をじっと見つめていた。
「司? どうかしましたか?」
「ふむ、グレッグ、ここで待っておれ」
 司はパートナーのグレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)の手を軽く握ってから人混みの中へと姿を消した。
 司の姿を限りに追いながら、グレッグはゆっくりと辺りにも目を向けた。串焼きの店があるが、ワームの文字が小さく見えた。先日のシーワームを串焼きにでもしているのだろうか、思い浮かべてグレッグは口を歪めた。他にはヤキソバや飲み物を販売している定番屋台も出ているようだった。
 それにしても、人が多い。祭りの告知は各学校にもされていたようであるが、女王器の一件を知らない生徒の多くも参加しているのだろう。当事者であるグレッグが見たなら、事件中の湾の様子とのギャップに驚かされているのだった。平和と笑顔あふれる会場が幸せで一杯に見えていた。
「グレッグ、待たせたな」
「司、一体どこに行っていたのです?」
「これじゃ」
 そう言って手渡されたのはソフトクリームであった。
「そなたの為に買ってきたのだ、食べると良いぞ」
「ありがとうございます。でも買いに行くのなら私も一緒に」
「? メイドとは、こうするもの、ではないのか?」
 塩バニラのソフトクリームを舐める司を見て、グレッグは笑ってしまった。
 司は最近、メイドを始めていた。自分に仕えてくれる必要は無いとも思ってしまうのだが、司は真面目故に、メイドの真意を理解するのに時間がかかりそうだな、とも思ってしまった。それが思わずの笑いとなってしまったわけであるが。
「どうしたのだ?」
「いぃえ、何でもありません」
「みなさ〜ん」
 空飛ぶ箒に乗りまして、会場に現れるなり大声を上げたのはイルミンスール魔法学校のナナ・ノルデン(なな・のるでん)であった。
「みなさ〜ん、水中洞窟内の修復作業、および「ハーモニーホール」の建設が完了しましたので、皆さん、「ハーモニーホール」にお集まり下さ〜い」


 完成した「ハーモニーホール」は湾内南側に設置された「別体共鳴歌唱法の体験会」のステージよりも大きく、50メートル近くあるようであった。
 会場は立食パーティーが出来るようにイスとテーブルが用意されていて、飲み物や屋台の食べ物が並べられていた。会場内は多くの生徒と人魚、魚人たちで賑わっていた。
広大な舞台の左隅には蒼空学園のウィザード、赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)が人魚と共に準備をしていた。「別体共鳴歌唱法の体験会」の順番待ちをしていた時にホールへの移動が決まった為に霜月たちの番が、完成したステージ上でのファーストパフォーマンスとなってしまったのだ。
 舞台上の右隅には、霜月のパートナーで機晶姫のアイリス・零式(あいりす・ぜろしき)が魚人と共にスタンバイをしていた。
 アイリスは人魚の歌に興味があった。だから霜月に参加させれば人魚とペアを組むわけだから、じっくりと聴ける。そう思ったのに。
 霜月と人魚が並び立つ。
 人魚の歌を聴くのが楽しみで楽しみで仕方がなかった。何としてでも正面から聴いてみたかった、それなのに、それだけだったのに。
 佇む人魚の背後から、霜月が、そっと人魚の肩に寄り抱いた瞬間……。
「おっと、それは……、穏やかではありませんね」
 霜月の視界の端に捉えたアイリスの顔が、今にも泣きそうなものに変わる様を見てとれた。そんなアイリスにも魚人が抱きしめるを始めていたのだが。
 舞台の中央には泉 椿(いずみ・つばき)、その後ろにはチャランゴという弦楽器を持った五条 武(ごじょう・たける)が構えていた。エスニックなワンピースドレスに身を包んだ椿がマイクの前に立つと、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)の曲紹介が始まった。