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リアクション
孤児院にはカリン・シェフィールド(かりん・しぇふぃーるど)がやってきていた。牛やら狼やら大量に引き連れてさながらサーカスのようだ。
森にいる子どもたちを見つけると、大声で叫ぶ。
「いいところで会ったじゃん、今からそっち行くよぉ」
カリンも孤児院周りにいる辺にいる動物の行動や習性を子どもたちに教えようと思っていた。子どもたちが自活するためには狩りの能力は必須だからだ。
垂が今かけたばかりの罠をカリンに示す。
「ただ、この罠で捕らえるのは兎かネズミか。でかいのは無理だ」
垂の言葉にカリンが頷く。
「でかいのは私が捕まえるからいいよ、ビーストマスターが獣を捕まえるのはどうかと思うけどね、これもキミたちのためじゃね」
カリンが引き連れてきた大型の動物が珍しいのか、子どもたちは遠巻きに動物を見ている。
「狼には触ったら駄目だよ、わかるよね」
カリンが子どもたちにウインクする。
「代わりに白と黒の・・・そう、よく触れるじゃん、そいつはプレゼントだよ。キミたちで飼うんだよ」
カリンと垂が先に歩き、後ろに動物と、少し離れて恐る恐る付いてくる子どもたち、そして後方を守るように是空が歩いている。
「牛をつなぐ牛舎が必要だよ、誰か作れるかな?」
「今、目の前にいる」
垂が見やる方法には、亞狗理がいる。
「いい牛じゃのう」
亞狗理は状況を理解したらしく、柵を作るべく木材の選定に入っている。
「エサやりは朝と夕方の2回だよ。当番を決めてみんなで交代にやる。エサを忘れるとどうなるかわかる?」
「死んじゃう」
気の弱いチエが答える。
カリンは体を低くして目線とチエにあわせると、頭をなぜた。
「死なないように育てるんだよ」
頷くチエ。
「まずは、エサやりだよ。出来るようになったら、次のことを覚えようじゃん」
亞狗理が牛の引き綱を引っ張る。
「動物はここに置いておくね」
カリンと亞狗理は、動物をつれて少し奥まった場所へと移動する。
どんな牛舎にするか、相談があるらしい。
孤児院に戻ってきた子供たちを出迎えたのは、ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)だ。
「うっしゃ!ガキども!!おっさんとサッカーしようぜ!」
サッカーボールを足元で転がしている。
孤児院から菊が顔を出した。
「いいよ、昼飯は作ってやる。それまで遊んできな」
「やったー!」
子供たちから今日何度目かの歓声が上がる。
「よーし、全員付いて来い!」
原っぱに向かうラルクにみな付いてゆくが、一人だけ子供が残っている。
小柄な少女、ルイだ。
「あたし・・・できないっ・・・」
下を向いたまま黙ってしまうルイ。
レッテが割ってはいる。
「ルイは足に怪我してる、なかなか治んないんだ。だから、走るのが遅いんだよ」
「怪我か・・・」
身をかがめてルイの足をじっと見るラルク。足には火傷のあとがある。
「大丈夫だ、直るぞ」
ラルクの言葉に、ルイの顔が輝く。
「いいかぁ、足が遅ーのは怪我のせいじゃねえ、筋肉がないからだ。おっさんとサッカーすればすぐに早く走れるようになっぞ〜!行くぞ!」
ルイの足元にサッカーボール蹴るラルク。
「ルールは…まぁ、いっか!細かいことは気にすんな!好きなところに蹴ればいいぞ!」
子供たちは、ラルクが蹴るボールを取り合う遊びを始めた。
さすがにラルクは本気でボールを蹴っていない。
「おっしゃ!じゃあ、行くぜ!」
力を加減しながら子供と遊んでいる。
ラルクが子供たちとボールを追いかける様子を手伝いにきた九条 風天(くじょう・ふうてん)とパートナーの宮本 武蔵(みやもと・むさし)、坂崎 今宵(さかざき・こよい)が見ている。
「おーい、一緒にやらねーか」
ラルクが風天たちに声をかける。
「武蔵、どうですか」
風天が体を動かしたくてうずうずしている武蔵に声をかけた。
「そうか、では行ってくるかな」
子供たちに駆け寄る武蔵。
「まぁ、楽しく行きましょうや大将!」
ラルクの肩をポンと叩く。
いつのまにか子供たちはラルクチームと武蔵チームに分かれてサッカーに興じている。
子供相手では穏やかで力加減をしている大人たちだが、いざ二人でボールの取り合いになるとオトナゲなくなってしまう。
「大将、負けませんよ」
「そりゃーこっちのセリフだぁ」
ボールを蹴りながら、全速力で駆け抜けるラルクと武蔵。こうなると子供たちの手には負えない。
「・・・おいおい、ここでそんなムキになるんじゃねぇ…わかったな?」
「大将こそ、子供たちが怯えておる」
お互い口調は柔らかいが眼光鋭く一歩もひかない構えだ。
ボールが岩に当たり、レッテの元まで転がってきた。
レッテがボールをハルに蹴る。
「おっさん、見てな。俺のほうがうまいぞ」
レッテとハルがおっさん二人を真似てボールを蹴っている。
「ほんとだ、巧いな」
「すぐに会得する、さすが子供だ」
全力を出し尽くして、その場にしゃがみこむラルクと武蔵。
「お昼が出来たそうですよ」
先に孤児院を見に行った風天が戻ってきて、みなに声をかける。
「メシだぁ!」
ボールを投げ出し、走り出す子供たち。
後には力尽きたおっさん二人が残されている。
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